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50.廃棄物処理の依頼、承りました。そして再生へ

「北門までの帰りに、また魔物が現れるかもしれませんので、充分お気をつけて」


 俺は、帰還するエドガー将軍たちに、別れの言葉をかけた。


「ああ、わかっている。そうだ! 悪いが一つ頼まれてくれ」


 おっと、まだ何かあるのか。


「はい。なんでしょう?」


「実は、持ってきた国の特別武装とも言える戦車とクマ型ゴーレムのセットだが、すべて悪魔との戦いで破損してしまった。

 これは古い時代から伝わっている魔法道具でもあって、今の王国に、これほどの破損を直せる者はいないはずだ。

 そして、今の我々は、落命した兵士の遺体を運ぶので、精一杯だ。

 こんな大きなガラクタを持って帰る余裕は無い。

 悪いが、そちらで処分してもらえないか?」


 そう言うと、将軍は最後にイタズラな笑みを浮かべた。

 ちょっとしたキラースマイルだ。


 この人もしかして……?


 聖剣と同じように、俺なら直して使えると思っているのか?

 それを見越して、俺にくれるということなのか?

 ゴミを捨ててくれという言い方だが、暗に俺に譲ってくれるということなのか?


 おそらく、あのイタズラな笑みの意味はそれだろう。

 俺としては、ありがたい。

 ここは、お言葉に甘えよう。


「わかりました。これらの武装を捨てていかれると言う事ですね。私の方でいかように処分してもいいと?」


「ああ、すまないが頼みたい」


 これはラッキーだが、一応、念押ししておこう。


「これは古い時代から伝わる武装なんですよね? 国宝級といってもいいものではないでしょうか? 本当に放置していって、大丈夫なんですか?」


「ああ、今さっき言った通り、苦労して持って帰ったところで、使い物にならんさ。

 その程度に壊れていた事は、多くの兵士が証言するだろう。

 勇者候補のジェイスーン殿も、これを修理可能だったなどと嘘の報告はあげまい?」


 将軍はそう言うと、ジェイスーンに視線を向ける。


 というか、軽く威圧してると思うが。


 ジェイスーンは、またもや苦虫を噛み潰したような顔をしている。


 大丈夫なようだ。

 これによって、エドガー将軍の立場が悪くなる事はないだろう。


「わかりました。では引き受けましょう」


「ああ頼む。それじゃ、また会う……ことは貴殿にとっては、ないほうがいいな。ガッハッハ」


 将軍はまた豪快に笑うと、手を掲げ撤退の合図を送り、移動を始めた。


 それに伴って、動き出した兵士たちが、あちこちから俺に声をかけてくる。


「ありがとう」とか「感謝する」とか「助かった」とか、生き残れたことに感謝する声だ。


 遠くの方で、深々と頭を下げている兵士もいる。


 一人でも多くの命を救うことができて、本当によかった。

 改めてそう思った。


 そんな少し感動的な気持ちを味わってしまい、思わず『聴力強化』スキルを発動したら……


「エドガー将軍、やはり聖剣だけは——」


 ジェイスーンが、まだ聖剣を回収したいと将軍に詰め寄っている声まで拾ってしまった。


 あいつ、まだ言っているのか。


 せっかくの感動的な気分が台無しだ。


 今までは、二番手の補欠だったわけだが、ジャスティスがいなくなった以上、代わりに勇者と認定される可能性が高い。

 そんな思いがあるからだろう、聖剣に執着している。


 というか、程度問題なだけで、あいつ、ジャスティスと一緒のような気がする。


 こんなことを言ってはなんだが、ジャスティスがああなった以上、ジェイスーンだって、闇落ちし反転する可能性があると思う。


 そこのところを、王国中枢部が冷静に判断してくれることを祈るのみだ。


 もっとも、今の体制では全く期待できないが。


 そんなやるせない気持ちに蓋をして、しばしの間、帰還する王国軍を見送った。



 それから俺は、戦場に残っていた弩級バリスタ搭載の鋼鉄馬車いわゆる戦車と、それを牽引する鋼鉄のクマ型ゴーレム四セットを回収した。


 エドガー将軍が言っていた通り、全て破壊されていたが、粉々というわけではなく、技術者さえいれば修理できる程度の損傷に見えた。


 ただ、魔法道具を修理できる職人は貴重だし、古い時代の『階級』の高い魔法道具は、修理が難しいのは確かなようだ。

 将軍が言っていたことも、嘘では無いのだろう。


 まぁ専門家ではないと思うので、多分に見切り要素が入っているだろうが。


 この戦車と牽引するクマ型ゴーレムは、いわば『ゴーレム馬車』なわけで、俺の固有スキル『献身』を使って修復できれば、いろいろ役立ちそうだ。

 戦闘にも使えるだろうし、もちろん普通の馬車として使ってもいい。

 まぁ見た目はごついが、他に住民はいないし。


 というか、魔物の領域で暮らす者が使う馬車としては、むしろ適していると思える。

 普通の荷馬車とかだと、魔物と遭遇した時点で、破壊される可能性が高いわけだから。


 一旦、『大剣者』の『亜空間収納』に回収して、後でゆっくり修復しようかとも思ったのだが、ワクワクしてしまい、見れる情報だけでも確認することにした。


 『大剣者』のアナライズを使い確認すると……


 戦車は、『名称』が『黒魔鋼(くろまごう)の戦車 簡易量産型タイプ2』となっている。

 『階級』が『上級(ハイ)』だ。


 『名称』に焦点を当てて、詳細表示と念じると、少しだけ情報が表示される。

 どうも、特別な魔法的な武装は無いみたいだ。

 だが、魔力を流すと、重量が五分の一程度に軽くなるようだ。

 また馬車の中に人がいて、常時魔力を流した状態にすると、『黒魔鋼(くろまごう)』という材質が反応し、強度が増すと説明されている。


 特別な武装は無いとは言え、優れた機能だと思う。


 そして、なぜこんなにあっさり破壊されてたのだろう?


 相手が悪魔だったからなのか、それとも使いこなせていなかったのか?

 まぁ俺がそんなことを考えてもしょうがないのだが。


 それから『タイプ2』というのは、どうも人員輸送を優先した作りみたいだ。

 他のタイプにどういうものがあるかは、明示されていない。

 この『タイプ2』は、車内の空間が五倍に拡張されているらしい。


 ラッシュが背負っていたあの大型バッグ『空間拡張バッグ』と同じような空間拡張術式が搭載されているのだ。


 壊れているので中に入ることはできないが、外見から判断するに、五、六人から十人程度乗れると思う。

 仮に十人だとして、五倍なら五十人が乗れることになる。

 これは兵士の輸送にかなり役立つ。 


 おそらく騎馬並みのスピードが出るだろうから、五十人乗せて運べば、騎馬が五十騎あるのと同じことになる。

 かなり重要な兵器と言えると思うが、本当に捨てていってよかったんだろうか?


 まぁ修理できなければ、輸送も何もないから、いいんだろうけど。

 俺が心配してもしょうがない。

 ありがたく頂戴する。

 そして聖剣のように“返せ”と言ってきても、もう返さないのだ!


 屋根の部分についている弩級バリスタは、この戦車の正式な付属品のようだ。


 これも、かなり使える武器に見える。

 早く修復して使ってみたい。





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