49.ジャスティスの穴を埋めるジェイスーンと態度の変わったエドガー将軍
俺たちが、戦場となった草原の台地側の奥……俺が聖剣で戦闘用に出した土壁の奥で、『大剣者』と話をしている間に、王国軍は撤退の態勢を整えたようだ。
重傷者はもちろん軽傷者の治療も終え、今は死者の遺体を集めているところだ。
死者が出てしまったことは残念だが、突然悪魔が現れたあの状況では、どうすることもできなかった。
今の俺のレベル、能力で、死者を出したくないなどと思うのは、傲慢かもしれないが……目の前で人が死ぬというのは、辛いものだ。
覚悟して軍人をしているとは言え、この人たちにも家族がいるだろうし。
俺は、改めて力をつけなければと思った。
これから大事な家族を守っていくには、何よりも力が必要だ。
王国の兵士たちも、皆悲しい思いはあるだろうが、淡々と行動している。
これが終われば、撤退するだろう。
さすがにこの状態で、俺に戦いを挑むというか、捕まえようとはしてこないはずだ。
そう思っていたところに、二番手パーティーの勇者候補ジェイスーンが歩み寄って来た。
魔王の『称号』を得て、周りのパーティーメンバーたちや兵士を惨殺するという暴挙に出たジャスティスを、倒した男だ。
もっともユーリシアの話では、ジャスティスは死んでいないみたいだが。
「ヤマト、お前とはあまり話したことがないな。
知っての通り、ジャスティスは魔王になった。
そして俺が倒した。
これから俺が勇者の役目を引き継ぐことになるだろう。
……そこでだ、お前が持っている聖剣を、俺に渡して欲しいんだが、いいだろう?」
そんなことを言ってきた。
一見当然の要求にも思えるが、優秀な“土木作業員”である『聖剣 カントローム』を、俺が渡すわけないだろ!
そもそもこいつ……今までどこにいた?
王国軍が必死で悪魔と戦っている時、こいつの姿が見えなかったんだが。
まさか、隠れてやり過ごしていたなんてことは……あり得るな。
「ジェイスーン、都合のいいこと言ってもダメよ! この聖剣は、ヤマト君のものよ!」
「そうそう、ジェイスーンに使いこなすなんて、無理!」
同じ二番手パーティーだったヒーラーフランソワさんと、魔法使いイリーナさんが、俺を庇うように前に出て、元同僚のジェイスーンに物申した。
ジェイスーンに対して思うところがあるらしく、黙っていられなかったのだろう。
「なんだと! てか、お前ら、ヤマトに合流するのか? お尋ね者になる気か?」
「その通りよ。お尋ね者になるのよ!」
「そうそう、だからほっといて!」
「なに!?」
ジェイスーンが、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「ヤマト殿、礼を言いたい。貴殿のお陰で悪魔を倒すことができた。そして、瀕死だった多くの兵士が助かった。きっと何かやってくれたのだろう?」
そう口を挟んできたのは、エドガー将軍だった。
呼び捨てだったのに、突然“ヤマト殿”とか“貴殿”とか言っている。
急に態度が変わって少し気持ち悪いが、発言内容からして、素直に感謝してくれてのことだろう。
そしてジェイスーンを、完全に無視している。
ジェイスーンと俺たちの会話が存在しなかったかのように、話に入ってきたからな。
「何とか悪魔を倒せて良かったです。命を落とした方については、残念でした……」
俺がそう言うと……
「貴殿が中級悪魔を倒したこと、そして我々を助ける為に下級悪魔をも瞬時に倒したこと、俺の、私の方から国王陛下に伝える。
保証はできないが、貴殿にこれ以上手出しをしないように進言してみるつもりだ」
なんと、すっかり対応が変わってしまって、陛下に進言までしてくれるのか。
これは素直にありがたい。
「ありがとうございます。
私は、ここで静かにのんびり暮らしたいだけです。
その点を理解していただけると良いのですが。
それから私のことは、今まで通り、ヤマトと呼び捨てにしてください」
「ガッハッハ、急に態度が変わっては、やはり気持ち悪いか? 王都じゃ、“遠慮知らずの荒くれ者”なんて呼ばれ方をされているが、これでも一応、ちゃんと話をすることもできるのだ。本当は俺も、気軽にヤマトと呼びたいところだが、『聖者』の『称号』を持つ者に、そういうわけにもいかんだろ?」
将軍は、少しニヤけている。
もう一度、『聖者』の『称号』について確認したいようだ。
だが、ここはスルーだ。
「私のために進言していただけるのはありがたいですが、立場が悪くなるのではありませんか?」
「ガッハッハ、立場? そんなものを気にしてたら、“荒くれ者”などと呼ばれておらんわ。
それに、何よりも重要な事は、どうやら予言された魔王が誕生してしまったと言うことだ。
しかも国が勇者と認定した者が、変質してしまった。
更には、それを先導したのは、聖女とまで言われたユーリシアで、その正体は悪魔契約者だった。
これは、王国始まって以来の一大事だ。
魔王となったジャスティスが、ほんとに死んでくれていればいいが、そうでなければ脅威になる。
いずれにしろ、ユーリシアは悪魔と結託して王国に挑んでくるだろう。
どう考えても、そっちの対応が先だ。
この国が腐りきっていない限りは、ここには手出しをしないだろう。
まぁ保証はできんが。ガッハッハ」
何が楽しいのか、途中からエドガー将軍は、愉快そうに笑みを浮かべ、そして最後に大笑いをした。
俺もそんな時があるが、驚くようなことが起こると、変に笑えてしまったりする。
そんな感じもあるのだろうか?
「将軍、何を言っている? 今後のこと云々は、後で考えるにしても、あの聖剣は回収するべきではないのか?」
蚊帳の外だったジェイスーンが、気を取り直して、また口を挟んできた。
まだそんなことを言っている。
てか、もうキャラが、ジャスティスみたいになってきてるけど。
さすが補欠だ。
ある意味、ジャスティスの穴を埋めている。
まぁ笑えない冗談でしかないが。
迷惑以外の何ものでもない。
エドガー将軍は、聞く耳を持たない。
というか、完全にスルーだ。
どうもこの将軍は、自分が認めた者以外は、ぞんざいに扱うようだ。
「では、我々は、これで失礼する」
将軍はそう言いながら、無理矢理ジェイスーンの肩に腕を回し、半ば連行するようなかたちで、歩き出した。
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