48.『大剣者アーカイブ』と遊び心
「『大剣者』も知らないよね?」
死から蘇生する魔法がないか、念のため『大剣者』にも確認してみた。
「現在アクセスできる『大剣者アーカイブ』には、その情報は存在しません」
ん、『大剣者』の返答の意味が、いまいちよくわからない。
……『大剣者アーカイブ』?
「『大剣者アーカイブ』って何?」
「『大剣者アーカイブ』とは、私に備わっている記録の保管庫のようなものです。
新マスターと契約すると、以前のマスターの記録、それ以前の過去の記録、保管されている知識等へのアクセスに制限がかかります。
正確には制限と言うよりは、特別な条件を満たさない限り、アクセスできなくなると言ったほうがいいかもしれませんが」
おっと、そんな制限機能があるのか。
「それはどうして? 何かの安全装置のようなもの?」
「はい。安全装置ともいえます。
また、新たなマスターが試されているともいえます。
新マスターと契約を交わすと、そのマスター専用のアカウントが設定されます。
アカウントとは、利用資格・権限のようなものです。
そのアカウントから接続できる『大剣者アーカイブ』の内容は、初期には限定されているのです」
……アカウント?
わかったような、わからないような……。
「ただ、過去の記録や叡智にアクセスできない状況でも、『大剣者アーカイブ』を使用するメリットは、十分にあります。
マスターのアカウントで接続できる『大剣者アーカイブ』には、マスターの記録が保管されています。
もちろん私が確認した範囲だけですが。
それを、後から確認することができます。
鑑賞して娯楽として楽しむこともできます」
うーんと、どういうこと?
娯楽として楽しむ?
俺の記録が保管されていると言われても、いまいちぴんとこない。
そんな俺の思いを察してか……『大剣者』が、空中に画像を投影した。
以前都市計画を考えたときに、地図を出現させていたが、あの時と同じように、鞘の石の一つが光って、そこから宙に画像を映している。
ちなみに『大剣者』は、今は鞘に入ったまま宙に浮いている。
この人最近、かなり自由に動きまわるんだよね。
まぁそれはいいけど。
写し出された画像には、俺がいる。
というか、画像が動いている……?
「現在投影しているものは、マスターの過去の記録であり、静止画に対し動画と表現されるものです。映像と言ったりもします」
理解が追いつかない俺の内心を読んで、『大剣者』が解説してくれた。
すごいなこれ。
でも自分を見るのは、なんか恥ずかしい。
一緒に見ていたクラウディアさん達四人も、驚き、口をぽかんと開けている。
動画と言うのか、映像と言うのか、それが、いろいろ切り替わって、過去のクラウディアさんやラッシュたちをも写し出した。
自分たちが写し出されたのを見て、「きゃっ」と言う女の子らしい声を四人があげた。
今思い出したが……これってもしかして、映像の魔法道具?
何かの本で読んだことがあるが、脳内で見たことを、動く『精密画』のようなかたちで映し出す魔法道具が存在していたとの記録があったはずだ。
そんなものまで、『大剣者』に内蔵されているということか……。
こうやって過去にあったことを見ることができるのは、確かに楽しいかもしれない。
娯楽として楽しめると言うのも納得だ。
ただやはり、少し気恥ずかしいが。
戦闘の記録も確認できるわけだから、分析したり、対策を立てたりという使い方も可能だろう。
そんなことも『大剣者』に確認してみると、
「はい、その通りです。使い方次第です。難点は、私が情報収集したものだけしか記録できていないということです」
なるほど、生活の記録にしろ、戦闘の記録にしろ、その場に『大剣者』がいなければ、記録のしようがないわけだ。
「あの……『大剣者』、変なこと聞くけど、トイレとか、水浴びしてるときの記録なんかもあるわけ?」
ラッシュが頬を染めて、恐る恐る尋ねた。
クラウディアさん達も、ゴクリと唾を飲み込み返答待つ——
「私が同行していない場所の記録は、基本的にありません。
故に、トイレ情報はありません。水浴びについても同様です」
ラッシュたちがその返答を聞いて、安堵の表情を浮かべた。
「それから、少し気になったんだけど、今後何かの条件をクリアすれば、『大剣者アーカイブ』にある過去の記録とか、様々な知識にアクセスできる可能性もあるってこと?」
「そうです。ただその条件は、明示されていません。運まかせと言ってもいいと思います」
「そうか、残念だけどしょうがないな」
「ただ『大剣者アーカイブ』に関して、一つ特別な機能があります。
『アーカイブ・ランダムアクセス』という機能です。
これは、私を製造した者の設計思想に基づくものです」
「設計思想? それってどんな?」
「はい。それは、私という『神器級』階級アイテムを貫く、偉大な設計思想……“遊び心”です」
超魔法AIである『大剣者』が、まるで感情があるかのように、誇らしい雰囲気を出しつつ答えた。
“遊び心”って宣言されても、俺としては全く理解できないし、共感もできないけど……。
「どういうこと?」
「『アーカイブ・ランダムアクセス』の機能は、本来アクセスできない『大剣者アーカイブ』の記録や知識に、突然、ランダムに、アクセスできる事態が発生するというサプライズ機能なのです!
時に有効な情報を得たり、時に意味がない情報を得たり、楽しいこと請け合いです!
ちなみに、マスターと契約して日が浅いために、まだ『アーカイブ・ランダムアクセス』は発生していません」
うん、わけわからん!
だいたい、『大剣者』が少しおかしくなってるし。
今までは魔法AIらしく、抑揚の少ない話し方だったのだが、ちょっとキャラが変わってきている。
……まさかこれも、“遊び心”なのか?
ダメだ、混乱してきた。
意味不明な機能を、“遊び心”で片付けるのは、やめて欲しい!
そもそも何で御伽噺の世界にしかないような『神器級』階級のアイテムを貫く設計思想が、“遊び心”なのよ!
というか、『大剣者』を作った人って?
「『大剣者』を作った人って誰なの? 神様?」
「その情報については、現時点では制限がかかっている為、アクセスできません」
「『神器級』階級のアイテムだから、神様が作ったということにはならないの?」
「はい。『神器級』は、あくまで階級を表すものです。
人の作った物であっても、『神器級』階級になることはありえます。
逆に、神が作りし物でも、『下級』階級になることがあります。
ただこの場合、敢えてその階級にしているということになるでしょうが」
なるほど。
厳密な相関関係は無いわけか。
まぁいずれにしろ、『大剣者』を作った存在は、茶目っ気のある存在のようだ。
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この物語は、私の書いているもう一つの連載「異世界を魅了するファンタジスタ 〜『限界突破ステータス』『チートスキル』『大勢の生物(仲間)達』で無双ですが、のんびり生きたいと思います〜」と、同一世界線の違う時代の違う場所の物語です。
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