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42.落ちた『勇者の可能性』、そして反転へ

 軍を突撃させろと発狂したように叫んでいるジャスティスの指示に、エドガー将軍は従うようだ。


 いくら勇者とは言え、あんな状態の者の指示に従うのは、ありえないと思うが、将軍には別の思惑があるのだろう。


 おそらくエドガー将軍は、俺が聖者の『称号』を持つ者かどうか、改めて見極めたいのだろう。

 全軍に突撃をさせるわけではなく、三十人ほどの兵士を突撃させた。

 様子見の突撃だ。


 俺としては、ある意味拍子抜けだが、将軍の作戦は当たりだ。


 様子見という判断が、無力化される兵士の数を少なくする。


 そして俺は、聖剣のもう一つの力を引き出してみせる——


 剣を振り上げ突撃してくる兵士の足元に向け、聖剣の剣先を向ける。


聖なる粘性泥(ホーリークレイパテ)


 ——ビチャ、ビチャ、ドドドドド


 向かってくる兵士たちの足元から、進行方向つまり俺に向かって、大量の泥のスペースができた。小さな田んぼみたいだ。


 当然兵士たちは、その泥に足を取られる……


 このクレイパテは、速乾性の泥で、二歩三歩と進むうちに足が動かなくなる。

 そして足を取られ前のめりに倒れ、そのまま固まる


 突撃してきた三十名ほどの兵士は、瞬く間に行動不能になった。


 もちろん人に対して初めて使ったが、これは中々いける。


 殺さずに、敵を無力化するには最適だ。


「また聖剣の機能を使った!?」


 エドガー将軍が、声を漏らす。


 そしてジャスティスは……何かぶつぶつ言った後に、獣のような叫び声をあげた!


 あいつ大丈夫か……?


 ジャスティスの後方で、遠巻きに様子を見ている勇者パーティーや二番手パーティーのメンバーたちも、ジャスティスのあまりの発狂ぶりに、完全に引いている。

 自分たちのリーダーが、あんな状態だったら……ゾッとするな。


 だが、それも悪いことばかりではない。


 ジャスティスが狂乱していて、将軍は俺が聖剣を使いこなすのを見て呆然としている。

 そして少ないとは言え、兵士たちが動いたことで全体に混乱と隙が生じた。


 このタイミングで、俺たちに合流する予定の二番手パーティーの魔法使いイリーナさんと、ヒーラーフランソワさんが森の茂みにこっそり移動し、潜んだ。


 うまく離脱してくれたようだ。


「聖剣の力をここまで引き出せた者など、過去に勇者と認定された者の中でも、多くないはずだ。これは、いったい……」


 将軍が、また独り言を言っている。

 さっきまでのやる気のない感じではない。

 真顔だ。


 俺とこれ以上戦うのは得策ではないと考え、退却してくれないかな。


 そのためには……ジャスティスをどうにかしないと。

 奴自身の心が折れて、自ら撤退する感じになるのが一番いい。


 悪いが、ジャスティスに対して、ダメ押しさせてもらう。


太陽光線(ソーラーレイ)!」


 ——シュッ


「わっ、ひ、ひぃぃぃぃぃっ」


 俺は、勇者ジャスティスに向けて指先からソーラーレイを発射した。


 前回は両肩を射抜いたが、今回は脅しでいいだろうと考え、肩をかすめるように狙った。

 だが、若干の調整ミスで、奴の頬をかすめてしまった。

 あくまでミスだ……。

 頬から煙が出て、焦げている。


 そしてジャスティスは驚いて、悲鳴をあげながら腰を抜かしてしまったのだ。


 尻餅をついて……無様な格好になっている。


 俺の指先から発射された光線に驚いていた将軍や周りの兵士たちだが、ジャスティスの無様な格好を見て、蔑むような視線を向けている。


 笑っている兵士もいる。


 いやぁ……勇者としては、面目丸潰れな感じになってしまった。

 まぁ奴の心を折って、敗走してもらう為にやったことだから、ある意味狙い通りではあるのだが。


 ジャスティスは、やっと我に返ったらしく、周りを見回している。

 そして自分に向けられる蔑むような視線に気づいたようだ。


 顔を伏せ、何やらぶつぶつ言っている。


 ここでまた激昂して周りに暴言を吐くのかと思ったが、うずくまるような状態で、ぶつぶつ言い続けている。


 逆にこの方が不気味だ。


 奴自身の雰囲気というか、周りの空気が、なんとなく暗く、どんよりしてきている。


 そんなジャスティスの所に、後方に控えていた勇者パーティーのメンバーが集まった。


 さすがに自分たちのリーダーの無様を、いつまでも放置できなかったのだろう。


 ただ兵士たち同様に、蔑む視線を向けている。

 集まったはいいが、誰一人奴を気遣う様子は無い。


 魔法使いのマルリッテ、ヒーラーのユーリシア、二番手パーティーにいたタンクとロングアタッカーの男は、早く立ち上がるように促しているだけのようだ。


 ん、……なんだ?

 ユーリシアは、満足そうに笑いながら頷いている。


 何か不気味な……悪い笑顔だ。

 ユーリシアがあんな顔をするなんて……。



 おお、今度はジャスティスが起き上がり、全身に力を込め絶叫した。


 またもや獣の雄叫びのような、わけのわからない、そしておぞましい叫び声だ。


 ……なんだ?

 奴の周りに黒い靄のようなものが、かかった気がする。一瞬だが。


 そして『大剣者』が指摘する……


「確認しました。ジャスティスのステータスに変化が発生しています。

 『称号』にある『勇者の可能性』が、『堕ちた勇者の可能性』に変わっています。

 更には、『反転による魔王の可能性』『反転魔王(闇落魔王)』という称号を獲得しています……」


 え!

 『堕ちた勇者の可能性』……?

 『反転による魔王の可能性』……?

 『反転魔王(闇落魔王)』……?




読んでいただき、誠にありがとうございます。


ブックマークしていただいた方、ありがとうございます。

評価していただいた方、ありがとうございます。


次話の投稿は、明日の予定です。


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この物語は、私の書いているもう一つの連載「異世界を魅了するファンタジスタ 〜『限界突破ステータス』『チートスキル』『大勢の生物(仲間)達』で無双ですが、のんびり生きたいと思います〜」と、同一世界線の違う時代の違う場所の物語です。

https://ncode.syosetu.com/n8768ff/


もしよろしければ、そちらも読んでみてください。

よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] タンクロウさんの感想同じです、17話の話しから更に気持ち悪いです。
[気になる点] 聖者が魔王を作るって無理があり過ぎ
[一言] 人間性が悪く魔王に堕ちる可能性がある人間に勇者の可能性なんて称号をつけるからこんなことに笑 こんな程度の低いシステムを創った神様?が悪いわ。
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