39.王国軍到来
俺は、デワサザーン領についても少し尋ねた。
海に面していて、海産資源が豊富らしい。
そして、山の資源も豊富だし、農業が発達していて、人々は豊かに暮らしているとのことだ。
領都デワサザーンは海に面した都市で、豊かな街並みと、人々の活気で溢れた素晴らしい場所だと、ラッシュが感動していた。
クラウディアさんによれば、海があり、山があり、そして広大な農地もあるという最善の場所に領都があることから、豊かで税収も多いのだそうだ。
そんなこともあり、領政は安定し、うまくいっているとのことだ。
話を聞く限り、生活に必要となる物資のほとんどは、デワサザーン領で調達が可能みたいだ。
今回は、一方的にクラウディアさんが支援してもらったわけだが、できれば今後は取引をするかたちになればいいと思っている。
もっとも、俺は完全に『カントール王国』のお尋ね者だから、表立った取引はできないだろうけど。
デワサザーン伯爵家は、武勇の誉の高い家柄で、王都の貴族たちの間では、『北の荒鷲』と呼ばれているのだそうだ。
何百年か前に立てた功績によって、独自の騎士団を持つことを許されているらしい。
独自の騎士団を持つことを許された領主家は、三家しかいないそうだ。
騎士団というのは、衛兵や領軍とは別格の存在で、武勇を認められたエリートの集団なのだ。
騎士団を持っていること自体、強力な戦力を保持しているということになり、各領主は勝手に騎士団を創設する事は禁じられている。
国が認めた領主のみ持つことが許される特別な存在で、武勇の象徴なのである。
デワサザーン伯爵家では、その騎士団を何百年も維持してきたわけだ。
『荒鷲騎士団』という名前らしい。
ちなみに当然のことながら、王国軍の中にもエリート集団として騎士団が存在している。
王家を守る『近衛騎士団』、そして戦時には先頭に立って敵を倒す精鋭『王国聖騎士団』だ。
騎士団は、精鋭の集まりなので、最大規模の『王国聖騎士団』でも、三百人規模なのである。
ちなみに、デワサザーン領の『荒鷲騎士団』は、五十人から百人規模で、現在は約六十人で組織されているとのことだ。
精鋭主義を貫いているので、本当に実力のある者しか入団が認められないそうだ。
それから最後に報告があったのは、『勇者選抜レース』で第三位となった勇者候補パーティーの勇者候補ミーアさんについてだった。
デワサザーン領出身で、クラウディアさんの予想では故郷に戻ってくるだろうとの事だったが、まだ到着していなかったそうだ。
戻ってくれば、関所を通過するときに確認が取れるので、連絡をくれるように伯爵に頼んできたとのことだ。
ミーアさんは、デワサザーン領の沖合にある『トブシマー』という島の出身とのことだ。
『トブシマー』は、古の海洋民族の末裔が住む島と伝えられているのだそうだ。
古の海洋民族と言うのは、西にある大陸で栄えた古代魔法機械文明の末裔とも言われている存在である。
その古代魔法機械文明は、約二千七百年前に滅んだとされている。
その破滅をなんとか生き延び、大型船を建造し洋上で暮らしていたとされる古の海洋民族は、高度な魔法道具製造技術を有していたと言われている。
この国で有名な英雄譚の一つである『海賊女王と無敵艦隊』に出てくる無敵艦隊を海賊女王に授けたのも、古の海洋民族ではないかとされている。
詳しくは、わかっていないわけだが。
古の海洋民族の存在自体、不確定なことが多く、多くの研究者のロマンをかきたてる謎とされている。
古の海洋民族の話は、この国では比較的有名なので、俺はある程度の事は知っていたが、詳しくはクラウディアさんが教えてくれた。
◇
翌日、朝から、南側の森つまり『ショウナイの街』側が騒がしい。
『望遠』スキルを使って確認すると……またもや王国軍が来たようだ。
前回の中隊規模とは比べ物にならない大部隊だ。
そして先陣を切って進んでくるのは……見覚えがある。
彼は、王国軍第二大隊隊長のエドガー将軍である。
その後には、勇者ジャスティスたちがいる。
クラウディアさんが予想した通りに、大部隊で再度仕掛けてきた。
王国に三人しかいない将軍の一人が出張って来たということは、俺を捕らえることが最重要案件となったということだろう。
多分……千人規模の部隊だ。
俺を捕らえるために、千人規模?
まぁ魔物の領域だし、魔物対策という意味が大きいんだろうけど、少し呆れてしまう。
この規模なら、魔物が出てきても、倒しながら余裕で進んで来れるだろう。
このまま『魔境台地』の前に、到着しそうだ。
今回は、それでいい。
俺も、何も準備をしていなかったわけではない。
対峙する場所は用意した。
それは、『魔境台地』の手前の開けた場所だ。
『ショウナイの街』の北門を出て、この『魔境台地』を目指して森を北上すると、開けた草原のようになっている場所に出る。
その奥に、二十メートルくらいの断崖がそびえ立っていて、それが『魔境台地』なのである。
俺は、手前にある開けた草原を、戦闘陣地にすることにして、準備をしていたのだ。
森の中に潜伏されるよりは、開けた場所にいてくれる方が対処しやすいと考えたわけだ。
そして大部隊を予想していたので、この開けた草原地帯の周囲にある木も伐採し、よりスペースを広げていたのだ。
王国軍は、どんどん進軍してくる。
この部隊は、魔物との戦いを想定しているからだと思うが、騎馬がいない。
通常の大部隊なら、先頭には騎馬軍団がいるのだが、歩兵のみでの構成だ。
このような魔物の領域では、どこから魔物が来るかわからない。
騎馬の優位性を出せないから、組み込まなかったのだろう。
代わりに鋼鉄製の武装馬車が、四台装備されている。
戦車と呼ばれるものだ。
これは、王国の秘密兵器の一つと言ってもいいものだ。
こんなものまで投入してくるとは……。
屋根には、弩弓バリスタが装備されている。
大型の魔物に対しても有効な、攻撃力の高い武器だ。
もちろん、城攻めなどでも使える装備だ。
あれを『魔境台地』に向けて放たれると、台地内に届いてしまうが、その範囲にある人工物は道路だけなので特に問題はない。
戦車を牽引しているのは、黒い鋼鉄製のクマ型ゴーレムのようだ。
初めて見た。
王国軍にも、ゴーレムがあるとは知らなかった。
俺が手に入れたオートホースは、見た目が木馬なのに対し、このクマ型ゴーレムは、鋼鉄製なので強そうに見える。
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この物語は、私の書いているもう一つの連載「異世界を魅了するファンタジスタ 〜『限界突破ステータス』『チートスキル』『大勢の生物(仲間)達』で無双ですが、のんびり生きたいと思います〜」と、同一世界線の違う時代の違う場所の物語です。
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