37.里帰りの報告
クラウディアさんがラッシュとともに里帰りしてから、二日後の夕方、二人が戻って来た。
もっとかかるかと思ったが、意外に早く戻って来てくれた。
この感じだと、向こうに滞在していたのは丸一日ぐらいじゃないだろうか。
勇者ジャスティスがやって来てから二日経つわけだが、こっちには今のところ新たな動きはない。
俺は、この二日間、この『魔境台地』全域の生態調査を行なっていた。
植生はかなり豊かで、食べられる野草を数多く見つけた。
甘いカブの野草も見つけた。
果樹もいろいろあり、これから実をつけるであろう種類の果樹がいくつもあった。
木苺が群生しているところが何カ所もあり、とても食べきれそうにない量が生っていた。
生態調査をしながら、出てくる魔物は全て倒した。
強い魔物はいなかった。
この台地にいる魔物は、粗方倒してしまったと思う。
数を倒したせいか、レベルが二つ上がって36になった。
前に『大剣者』が言っていた通り、イノシシ魔物、ウサギ魔物、ネズミ魔物、キツネ魔物が多く、大量に肉が確保できた状態だ。
それもこれも、『大剣者』が持つ亜空間収納のお陰だが。
『聖剣 カントローム』も使い込み、自分のイメージするサイズの土壁が出せるようになった。
強度を高めているので、石壁と言っていい頑丈さである。
この石壁を、『大剣者』で適度な厚さにスライスし、石畳として使ってみた。
都市計画に基づいて、メインとなる大通りを作ったのだ。
将来のことを考え、かなり広幅な道になっている。
馬車が六台以上すれ違えるほどの広幅である。
「すごい、道ができてる!」
「ほんと! これヤマト君がやったのよね?」
オートホースで着地するなり、ラッシュとクラウディアさんが驚きの声を上げた。
「二人とも、おかえり」
「先輩ただいまです。会いたかったです!」
「私もなんかこっちが気になっちゃって、早く帰って来ちゃった」
ラッシュとクラウディアさんはそう言いながら、俺に抱きついてきた。
天真爛漫な美少女と、知的な美女に抱きつかれて……悪い気はしないが、少し心臓に悪い。
ラッシュに至っては、俺の首に抱きついてきているし。
クラウディアさんも、腕に抱きついているとは言え、ふくよかな感触が伝わってくるし……。
二人とも、密着が激しいと思うんだけど。
そんなことを冗談交じりに言えればいいのだが……なかなか言えない。
なぜかしばらく抱きつかれて、いいようにぐりぐりされた。
落ち着いたところで、二人が旅立った後に聖剣を直せるか試しにダメージを引き受けたところ、うまくいって聖剣が使えるようになったことを説明した。
その聖剣の能力で、道路を作ったことも説明したのだ。
二人とも口をあんぐりとさせて驚いていた。
ポッキリ折れた聖剣が直っちゃったわけだから、そうなるのも無理はない。
しかもその聖剣の力を引き出して、土魔法使いみたいなことを、もっと言えば土魔法の使い手でもできないようなことを、やってしまったわけなのである。
それからこの二日間で、この『魔境台地』のほぼ全域の生態調査を行ったことも報告した。
魔物をほとんど倒してしまったと言ったら、なぜか二人とも少し残念そうな表情になっていた。
魔物を倒したいなら、この周りは全て魔物の領域だから、いくらでもいるんだけど。
そんな俺の報告が終わり、今度は二人から報告を受けた。
まず行きも帰りも、道中は問題なかったそうだ。
人に気づかれないように、高度を上げて飛行し、高速で飛ばしたらしく、行きはかなり辛かったようだが、帰りは慣れたと笑っていた。
デワサザーン領に無事に到着して、領主でクラウディアさんの父親のデワサザーン伯爵と再会できたとのことだ。
ラッシュの話では、クラウディアさんを心配していた伯爵は、涙を流して喜んだらしい。
娘を心配する親として当然だろう。
だがその当然の涙を流す伯爵は、きっと良い人なのだろう。
ラッシュによれば、クラウディアさんが現状と今後の方針を話したときには、再び泣いていたらしい。
貴族の令嬢であるクラウディアさんが自ら追放され、しかも国を捨て魔境で暮らすなんてことを聞いたら……普通の父親なら卒倒してしまうと思う。
よく倒れたり、激昂したりしなかったものだ。
クラウディアさん本人が言っていたが、貴族の令嬢にあるまじき行いは、今に始まったことではないので、お父さんも慣れているのだそうだ。
そうは言っても、伯爵は、ぽろぽろ涙を流しながら、クラウディアさんの話を聞いていたらしい。
これも、ラッシュが教えてくれた。
軍籍を持つ『勇者選定機構』で働くことは、確かに、貴族の令嬢にあるまじき行いだが、国を捨て魔境で暮らすというのは、そんな程度の話ではなく、次元の違う話だと思う。
慣れるとかいう話ではないと思うんだよね。
俺は密かに、伯爵に同情してしまった。
クラウディアさんには、お兄さん二人と妹さんがいて、父親の伯爵とともに最初は必死で考え直すように説得されたらしい。
そんな中、クラウディアさんの意見を尊重するように家族を説得してくれたのが、母親の伯爵婦人だったそうだ。
なかなかに豪胆なお母さんらしい。
お母さんの説得のおかげで、一応、了承されたみたいな感じになったようだ。
ふと疑問に思ったが、娘が国を出奔したら伯爵の立場として、まずいんじゃないだろうか?
そんなことをクラウディアさんに尋ねてみたが……心配ないとの事だった。
デワサザーン伯爵は、それなりに力のある貴族で、領主の中でも一目置かれる存在らしい。
それゆえに国としても下手な対応はしないだろうとのことだ。
それに、もとはと言えば、勇者ジャスティスが一方的に追放したのである。
国としては、上位貴族しかも領主の令嬢をろくな詮議もせずに追放したのだから、伯爵を咎めるどころか、十分な釈明が必要という状況とのことだ。
まぁ言われてみれば、そうかもしれない。
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この物語は、私の書いているもう一つの連載「異世界を魅了するファンタジスタ 〜『限界突破ステータス』『チートスキル』『大勢の生物(仲間)達』で無双ですが、のんびり生きたいと思います〜」と、同一世界線の違う時代の違う場所の物語です。
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