30.新たな仲間
魔物との乱戦から助けた後、第二位の勇者候補パーティーの魔法使いの子とヒーラーの子が、クラウディアさんと話をしている。
もともと仲が良かったようだ。
そして、そろそろ帰投中の軍に合流したほうがいいと促したクラウディアさんに、ヒーラーの子が本当にこの魔境で暮らすのかと改めて問い掛けてきた。
彼女は、何か言いたげな表情だ。
「ええ、そうよ。そうだ! 二人とも確か、近しい身内の人……家族と呼べる人は、いなかったわよね? ここで一緒に暮らさない? まぁもれなく、お尋ね者になっちゃうけど」
クラウディアさんが、少しおどけながら答えた。
「私たちがですか?」
「ここで?」
「そう。楽しいわよ」
「……それもいいかもしれませんね。実は、ちょっと思っちゃったんですよね。このままじゃ、いずれ勇者パーティーに召集されて、変な死に方をするのは目に見えてますし」
「確かに……。死にたくないし……クラウディアさんと共に、というかヤマトくんと共に、魔境に住むのもアリかも」
ヒーラーの子と魔法使いの子が、そんなことを言いながら俺を見た。
「えーっと、君たちとは、あまり話をしたことがないから、はっきり言って、人柄とかよくわからない。けど、クラウディアさんが、いい子たちだって言うから、俺は歓迎するよ」
俺は二人の視線に促されるまま……歓迎の意を示した。
「私もです! 前に、皆さんのパーティーのサポート部隊の人たちが、お二人のことを話していました。パーティーの中で、お二人だけはまともな人たちだって」
俺に続いて、ラッシュも歓迎みたいだ。
「ありがとうございます」
「じゃぁ、その方向で、本気で考えようかな」
「そうしちゃいなさいな。私たちは、ここに村を作り、最終的には国を作るの。ただいま絶賛村人募集中よ!」
クラウディアさんが、またおどけて楽しそうに言った。
「今なら先行者メリットで、もれなく、今後作る国の重要人物になれちゃいますよ!」
ラッシュも、クラウディアさんに追随した。
「この話には、乗るしかないわね!」
「そうしましょう!」
二人も、いいノリだ。
「こんなことなら、いろいろ荷物を持ってくればよかったわ」
「でもこの急展開は、予想できなかったし」
「待って、二人は一旦戻った方がいいわ。というか、あなたたちには、一旦戻ってもらいたいの。いろいろお願いしたいことがあるのよ」
移住を決意した二人に、クラウディアさんは、神妙な顔で言った。
「でも戻ったら、もう来れないですよ」
「仮に私たちが出奔したとしても、勝手に転移門は使えないから、馬車でここまで来なきゃいけなくなっちゃいます」
二人は困惑している。
「いいえ、そうはならないわ。あの勇者ジャスティスが、このまま引き下がるわけがない。必ず国王を説得して、次は大部隊で私たちを捕らえに来るわ」
「え、そんなこと……でも、ジャスティスなら確かに……」
「言われてみれば、あり得るかも」
二人も納得したようだ。
俺も密かにそう思っていた。
あいつが、簡単に引き下がるわけがない。
むしろ多くの兵士に醜態を見られたから、名誉を回復するために、また仕掛けてくるはずだ。
「だから、もう一度来るときに、あなたたちも選ばれるはず。
その時に、そのままこっちに残れるように、いろいろ準備して欲しいの。
今から書く手紙を、私の家の王都邸に持っていけば、魔法カバンを用意してくれるはず。
それから、リストを渡すから、必要な資材を揃えて持って来て。
主だった資材は、私の家の者が準備してくれるはずよ」
「わかりました。やってみます」
「もし予定通りの展開にならなかったときは?」
「大丈夫。その時のことも考えてある。手紙にしたためるけど、私の家で保護して、デワサザーン領まで送らせるわ。そこから、『北端魔境』まではそんなに遠くないから、何とか来れると思うわ」
「なるほど。デワサザーン領まで無事に行けるなら、何とかなりそうですね」
「さすがクラウディアさん、抜かりがない」
クラウディアさんは、何通か手紙を書いて、二人に託した。
「じゃぁお願いね。早く兵士たちを追いかけて」
「分りました」
「じゃぁまた」
二人は笑顔で走って行った。
あまり長くは話せなかったが、俺たちの仲間というか、村人が二人増えて嬉しい。
彼女たちに託した資材調達がうまくいけば、今後の生活の上でも大いに役立つだろう。
ぜひ頑張ってほしい。
「よかったわ、あの二人が仲間になってくれて。実は少し気になってたの」
クラウディアさん安堵の表情浮かべながら、話を始めた。
「私、スカウターとして有望と思える人をスカウトしてきたわけだけど……『勇者選抜レース』のあり方自体が、間違っていると思うの。
無理矢理パーティーに振り分けて、競わせる。
その中の最上位のパーティーを勇者パーティーとして認定するなんて、おかしいのよ。
そもそもパーティーの決め方も変だし。
私に言わせれば、基準や方針なんてなくて、デタラメよ」
今まで相当鬱憤が溜まっていたのか、クラウディアさんは矢継ぎ早にまくし立てている。
「じゃぁ、クラウディアさんは、どういうのがいいと思っていたんですか?」
ラッシュが、興味深そうに尋ねた。
俺も興味がある。
「私は……本当はパーティーの決め方から改善したほうがいいと思うけど、それは一旦置いておいたとして……三つの中から一つのパーティーを選抜するんじゃなくて、各パーティーから優秀な者を集めて、新たに一つのパーティーを作る、最強のパーティーを作るのがいいと思ってたのよ。もちろん、連携や相性の問題もあるかもしれないけど、それはまた新たなパーティーとして訓練すればいいと思うのよね」
「ああ、なるほど! それはいいかもしれませんね」
ラッシュが、ポンッと手を叩いた。
「クラウディアさんは、そんな提案をしなかったんですか?」
当然してるとは思ったが、一応確認した。
「もちろん何度もしたわ。でも聞く耳持たずね。“昔からこのやり方でやってた”の一点張りよ」
「やはりそうですか……」
「私の中では、ある程度最強パーティーの構想もあったんだけど、すべてのポジションが想定できてたわけじゃないから、提示できなくて諦めちゃったんだけどね……」
「クラウディアさんの考えた最強パーティーって、どんな人選ですか? もちろんヤマト先輩も入ってますよね?」
ラッシュが興味津々、前のめりだ。
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この物語は、私の書いているもう一つの連載「異世界を魅了するファンタジスタ 〜『限界突破ステータス』『チートスキル』『大勢の生物(仲間)達』で無双ですが、のんびり生きたいと思います〜」と、同一世界線の違う時代の違う場所の物語です。
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