25.見捨てられた衛兵隊
夕方になって、何とか丸太小屋が組み上がった。
本当は、木を十分に乾燥させてから組んだ方が良いのだが、まぁいいだろう。
中には一応床が組んであるが、それだけの簡単な作りだ。
クラウディアさんが持ってきてくれた野営用のテーブルと椅子を置く。
それだけで、家っぽい感じになった。
なんか楽しい。
もちろん大工が建てたしっかりとした家という感じではないが、この手作り感がいい。
これから整備していく楽しみがあるし。
丸太小屋と言いつつも、結構広く作ったから、後から整備して、部屋を四つぐらいは作れるだろう。
みんなで集まって食事をするスペースと、個室を三つ作れる感じだ。
俺の好きな風呂も作りたいところだが、今の時点では贅沢だ。
川での水浴びで充分だし。
あと女性二人のために、トイレも早急に必要だ。
トイレで使う便座さえ手に入れば、排出物を分解する薬草素材はあるから、すぐにでも作れるのだが。
便座を手に入れるのは、骨が折れそうだ。
『ショウナイの街』には、売っていない。
特殊なコーティングをした木材か、焼き物で作られているのが一般的だが、そんな職人は、あの街にはいないのだ。
別の街への密かな買い出し第一号の商品は、便座になるかもしれない。
しばらくこの丸太小屋でゆっくりしたところで、俺は『ショウナイの街』の様子を見に、出かけることにした。
昼に訪れる約束を反故にしたから、大騒ぎになった可能性があるが、もう日が落ちるので、落ち着いているのではないだろうか。
オートホースに乗って空を飛ぶ。
もう暗くなっているから、人気のなさそうなところに降り立てばいいだろう。
◇
街の様子は、酷いものだった。
いろんなものがなぎ倒され、荒れた状態だった。
どうも昼に俺が現れなかったせいで、衛兵が街中を強制捜索したらしい。
様々な場所に入って、引っ掻き回したようだ。
街の人たちに、迷惑をかけてしまったみたいだ。
申し訳ない気持ちで一杯だ。
街の人たちが噂しているのを聞いたのだが、明日の朝には俺を探しに『北端魔境』に衛兵隊が入るらしい。
俺たちが魔境に逃げ込んだという結論に至ったようだ。
魔境への捜索も想定の範囲内だが、衛兵隊の人たちのレベルでは、俺がいる『魔境台地』まで到達するのは、無理ではないだろうか。
いくら俺たちが倒して少なくなっているとは言え、ある程度の魔物が出るはずだ。
それを倒しながら、奥まで来るのはかなりしんどいはず。
下手したら死人が出る可能性もある。
まぁそうなったとしても、自業自得だと思うしかないが。
◇
翌朝、俺たちは、森の中に潜んで、衛兵隊の様子を確認している。
噂されていた通り、衛兵隊が重装備で森に入って来た。
俺たちが潜んでいるのは、北門から『魔境台地』に至る森の中間くらいの場所だ。
ここまでにも、それなりに魔物と戦ってきたらしく、鎧は汚れ、みんな疲弊している。
怪我は回復薬で治しているらしく、重傷者はいない感じだ。
おっと、ここにも魔物のお出ましだ。
衛兵たち、大丈夫かな?
まぁ出て来た魔物は、ウサギ魔物だからなんとかなるか。
いや数が多い……群れで来たようだ。
一斉に、ウサギ魔物が襲いかかる。
この衛兵たちのレベルは20くらいだから、ウサギ魔物に遅れをとる事はないだろう。
ウサギ魔物は、レベル15前後、高くてもレベル20だ。
改めて思うが、『大剣者』のアナライズ機能で、敵のレベルが確認できるというのは、非常にありがたい。
……俺の予想に反し……戦況が良くない。
全体としては、苦戦しているのだ。
何人かの腕の立つ衛兵は、ウサギ魔物をぶった斬っているが、スピードに乗って突進してくるウサギ魔物に対応できてない者が多い。
ウサギ魔物と言っても、通常のウサギの三倍くらいの大きさがあるから、その突進をまともに受ければ当たり負けしてしまう可能性が高い。
ん! どういうことだ?
後方にいた守護と取り巻きの幹部、衛兵隊長などが逃げ出した。
今戦ってる者たちを置き去りにするのか……?
なんて奴らだ……。
……しょうがない。
「みんな、助けようと思うんだけど?」
俺は、一緒に潜んでいたクラウディアさんとラッシュに意思確認する。
「ヤマトくんなら、そう言うと思ったわ。いいんじゃない」
「さすが先輩です! 意地悪な衛兵もいるかもしれないけど、そうじゃない人もいると思います。助けましょう!」
「よし、じゃぁみんなでウサギ魔物の殲滅だ!」
「了解」
「はい」
俺たちは森の茂みから飛び出し、衛兵隊の救援に入る。
ラッシュが走り込んで、二本の短剣を使ってウサギ魔物を斬りまくる。
俺もそれに続き、『大剣者』で両断する。
クラウディアさんもそのまま俺について来て、接近した状態で魔法銃を打ち込む。
本来なら銃使いは、ある程度離れたところから攻撃するものだ。
だが、乱戦状態となると、味方への誤射の危険があるので、攻撃に参加しにくくなる。
そこでクラウディアさんは、あえて接近して攻撃しているのだ。
接近すれば、誤射の可能性が低くなるのである。
ここ数日の魔物狩りで、乱戦での戦い方も身に付けたのだ。
二人とも、危なげない戦いぶりだ。
俺たちは、瞬く間にウサギ魔物を殲滅した。
「見つけたぞヤマト、てめえのせいで死にかけた!」
助けた衛兵の一人が、俺に向かって来た。
「殺す——ぶごぉ」
だが小隊長ぽっい衛兵が立ちふさがって、殴り倒した。
「馬鹿者め! ヤマト殿たちに助けられねば、俺たちはみんな死んでいたんだぞ!」
そして、怒鳴りつけた。
「しかし……」
「しかしも、カカシもあるか! 俺たちは、あの守護と隊長たちに見捨てられたんだ」
「それもこれも……ヤマトが逃げて、俺たちが魔境に入る羽目になったからじゃないですか!」
「だからと言って、お前は見捨てられて平気なのか!? ヤマト殿のことは、発端に過ぎない。そんなこともわからないのか?」
小隊長らしき男の言葉に、衛兵は、拳を握りながら俯いて、口を閉ざした。
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この物語は、私の書いているもう一つの連載「異世界を魅了するファンタジスタ 〜『限界突破ステータス』『チートスキル』『大勢の生物(仲間)達』で無双ですが、のんびり生きたいと思います〜」と、同一世界線の違う時代の違う場所の物語です。
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