24.急遽、新天地へ
俺は、守護の屋敷を後にし、宿に戻った。
待ちわびていた感じのクラウディアさんとラッシュに対し、守護から伝えられた話を説明した。
「ヤマトくん、これ絶対戻っちゃダメよ。
多分だけど、やっとヤマトくんの力があって戦えてたことに、気づいたのよ。
だから、なんだかんだ理由をつけて、自分の奴隷にするのよ。
ヤマトくんにスキルを使わせて、戦いを有利に進めるつもりなんでしょう。こき使うつもりなんだわ」
クラウディアさんが、冷静に分析する。
「そうですよ。あんな馬鹿勇者のところに戻ったら、酷い目にあいますよ」
ラッシュも心配そうな表情だ。
「ああ、わかってるよ。戻るつもりはない。本当はもう少しこの街の人たちと関係を築いて、一人でも二人でも一緒に暮らす仲間を募ろうと思ったけど、それはもうできないな。
これから暮らすための拠点も作ったことだし、この街を出よう! いや改めて、この国を出よう! どうなるかわからないけど、俺たちだけで生きて行こう。いいかな?」
俺は改めて二人に確認した。
「もちろんよ! 大賛成!」
「それがいいです! 先輩にどこまでもついていきます!」
二人は両側から俺の腕に抱きついて、笑顔を作った。
あぁ、ほんとにこの二人がいてくれて良かった。
一人ぼっちだったら、いくら力を得たとしても、こんな温かい気持ちにはなれなかっただろう。
予定よりだいぶ早くなってしまったが、『カントール王国』とは、本当におさらばだ。
◇
夜もふけた頃、俺たちは密かにこの街を出た。
『北端魔境』へと出る北門は当然閉じているが、俺たちは少し離れた場所の外壁を飛び越えたのだ。
飛び越えたと言っても、オートホースに乗って空を飛んだのだ。
門の所は当然兵士が立って番をしているが、そこから離れてしまえば、人目は無い。
オートホースで三人乗りは密着状態で窮屈なので、早く『魔境台地』に着くように、スピードを上げる——
スピードを上げると言っても、何かを操作するわけではなく念じるだけなのだが、思った以上にスピードが出せた。
襲いかかってこようとしていたコウモリ魔物の群れを突っ切って突破してしまった。
クラウディアさんとラッシュは、そのスピードに驚き、長く伸びた手綱代わりの持ち手棒というか、落ちないためのガードの役割を果たしている棒にしがみついていた。
スピードが出せたお陰で、あっという間に『魔境台地』の『第一拠点』に降り立った。
『第一拠点』といっても、まだ建物を作っていないので何もない平坦な場所だ。
クラウディアさんが持ってきた野営用のテントを出して、休むことにした。
昼に周辺の魔物を倒したとは言え、その奥のスペースから魔物がやってくる危険もある。
だが、『大剣者』のアナライズ機能で周辺を探知できるので、大きな問題は無い。
常時は無理でも、定期的に確認すればいいのだ。
火を起こして、お湯を沸かし、みんなでお茶を飲むことにした。
クラウディアさんが魔法カバンで持ってきた食料の中に、緑茶がある。
この国では、一般的に飲まれているお茶だ。
俺は、紅茶の方が好きなのだが。
ちらっとそんなことを口にしてしまったら、紅茶もあるから出すとクラウディアさんが言ってくれたのだが、今は渋いお茶が飲みたい気分なので構わないと伝えた。
甘い紅茶でまったりするよりも、渋いお茶で頭をクリアにしたい気分なのだ。
火を起こすのも、『大剣者』のお陰で簡単でいい。
『大剣者』は、炎を纏う機能があるから、着火にも使えるのだ。
三人でお茶をすする——
予定よりもだいぶ早くというか、準備不足のまま、この場所で暮らすことになったが、クラウディアさんもラッシュも、楽しそうな顔をしている。
そんな表情を見せてくれるだけで、安心する。
これが家族というものだろうか。
みんなでいろんな話をした。
クラウディアさんは、この『北端魔境』全体を国にしてしまおうなんて、夢のような話をしていた。
クラウディアさんによれば、俺たちが今まで調べた『ショウナイの街』の北門から、この台地までの周辺のエリアは『北端魔境』全体から言えば、ほんの数%でしかないだろうとの事だ。
そして『北端魔境』は、『カントール王国』がある島の北側五分の一を占めているらしい。
『北端魔境』は、広大なのである。
クラウディアさんが言うように、全面積を統治下におけば、一つの国と言える程の面積にはなりそうだ。
まぁそうだとしても、小さな国ではあるが。
『カントール王国』は、当然『北端魔境』を統治下におきたかったはずだが、完全に魔物の領域で、とてもできなかったわけである。
それを俺たち三人でやろうと言うのだから、クラウディアさんの発想は、吹っ飛んでいると言える。
当然、現時点では夢物語だ。
ラッシュは魔物を従えて、魔物軍団を作ろうなんて言っていたが、『テイム』スキルを持つ者でも魔物は『テイム』できないとされているんだよね。
これもまた夢物語である。
それからラッシュは、一旦の生活スペースとして、丸太小屋を作ったらどうかと提案してくれた。
簡単な丸太小屋の作り方なら、知っていると言うのだ。
それは願ってもないので、夜が明けたら早速取り掛かることにした。
木はいっぱいある。
そして『大剣者』の切れ味を持ってすれば、伐採も加工も容易である。
◇
翌日、俺は、クラウディアさんとラッシュと共に、生活拠点となる丸太小屋作りに励んでいる。
守護には、今日の昼頃に、屋敷に行くという話をして来たが、もう昼過ぎだ。
今頃大騒ぎになっているかもしれない。
だが、もう俺には関係ないことだ。
昨日たき火を囲みながら話した時に、話題に出たのだが、もし生活物資として必要なものがあれば、『ショウナイの街』ではなく、もう少し内部に入った街に、こっそり買い物に行く手がある。
オートホースに乗って、宵闇に紛れて移動する。
外壁を飛び越えて街に降り立てば、門での検査もスルーできる。
必要な買い物だけ済ませ、またオートホースで戻ってくればいいのである。
この方法を使えば、物資の調達も問題ないから、充分ここで暮らしていけそうだ。
『加護ガチャ』のお陰で、金貨も大量にあるし、当面の資金も問題ない。
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この物語は、私の書いているもう一つの連載「異世界を魅了するファンタジスタ 〜『限界突破ステータス』『チートスキル』『大勢の生物(仲間)達』で無双ですが、のんびり生きたいと思います〜」と、同一世界線の違う時代の違う場所の物語です。
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