144.大商会と大行商団
王城の最大級のホールにびっしりと入っている約二千人は、すべてミトノ公爵の関係者とのことだ。
この人たちのほとんどが、歴代のミトノ公爵家の血縁者や子孫、育てた孤児たちやその子孫たちだと公爵が説明してくれた。
ミトノ公爵一族というか一派ということだ。
「ヤマト様、こちらの右側におります約千名は、我らと共に『魔境台地』への移住を希望している者たちでございます。
どうか、その許可をいただきたく、お願いいたします」
ミトノ公爵がそう言うと、
「「「何卒、お願いいたします」」」
と、約千人が頭を下げた。
俺は、改めて詳しく聞いたのだが、ここの移住希望者たちは、以前公爵が話していていた人たち約五百人とは、また別の人たちだった。
まぁ人数が違うので、当然別の人たちではあるのだが、この中に、以前話していた人たちは含まれていないとの事なのだ。
約千名のうちのほとんどは、公爵家の血を引いた者たちの子孫や保護した孤児たちの子孫らしい。
それぞれ独立して生活していて、公爵家の特別な仕事を請け負っているわけでは無いそうだ。
だが、何か事あるときには、いつでも公爵家の力になるという人たちで、過去何代にもわたる公爵家の結束が見て取れる。
連絡網が整備されていて、今回公爵家の取り潰し及び移住と言う決断を、連絡網で流したらしい。
すると皆すぐに反応し、集まって来たのだそうだ。
そしてほとんどの者は、一緒に同行することを願い出てきたとのことだ。
ミトノ公爵は、今現在独立して普通に生活していることもあるし、国の体制が変わるとしても今まで築いてきたものもあるのだから、残るように説得したらしい。
だが、どうしてもついて行きたいと泣きつかれたのだそうだ。
実は、左側にいる約千人の人たちも、同様に共に新天地に向かうと言ってきた者たちらしい。
だが、この国の経済に少なからず影響を与えてしまう者たちで、ミトノ公爵が説得して、この国に残る形で役割を果たすと納得してくれた人たちなのだそうだ。
大きな商会を経営していたり、有名な職人であったりという影響が大きい者たちだ。
残る代わりに、今までのように放任ではなく、定期的に連絡を取り合うことを約束して、納得してもらったとのことだ。
どうもこの残留する左側の人たちは、この王都の経済その他の中心人物の集まりみたいだ。
この人たちの役割は、主に経済的な面で国を更に発展させて、国ひいては俺の役に立つ事らしい。
そんなこともあり、移住するわけではないが、俺と顔つなぎをするために集まってもらったのだそうだ。
「私は、王都に残るミトノ一派の代表を務めますカクサーンと申します。
ヤマト様に拝謁を賜り、この上ない喜びです。
我らは、王都の経済を発展させ、また情報をつかみ、ヤマト様に貢献したく存じます。
何卒、よろしくお願いいたします」
そう挨拶をしてくれたカクサーンさんは、四十歳位のできる感じの渋いおじさんだ。
よくよく聞いたら、王都で一番大きな商会『エチゴー商会』の会頭でもあるようだ。
『エチゴー商会』の名前はよく知っている。
確か、王都中にいくつも支店があるはずだし、他の市町にも支店を持っているはずだ。
この国の人間で、『エチゴー商会』の名前を知らない人はいないのではないだろうか。
取り扱い品目も多岐にわたっている大商会、総合商会だ。
俺は挨拶をし、今後の総督府の運営に陰ながら協力してくれるように依頼をした。
そして最初に紹介された右側の移住希望の約千人に対しても、移住の許可を出した。
ミトノ公爵の話では、この千人の中にも、一通りの職人がいるし、商売の経験のある者もいるとのことだ。
これからの国づくりに役立つ人材ということだ。
はっきり言って、非常に助かる。
「ご挨拶をさせていただきます、私は今回移住をさせていただく者たちのまとめ役を仰せ付かりましたスケサーンと申します。
今後、ヤマト様の国づくりのお役に立つように、誠心誠意努めます。
何卒よろしくお願いします」
スケサーンと名乗った代表は、カクサーンさんと同じ四十歳位だと思うが、少し愛嬌のある良い笑顔を作る、感じの良い人だ。
ちなみにカクサーンさんは、とても生真面目な印象だ。
まぁ大商会の会頭だから、それが普通なのだろう。
よくよく話を聞くと、スケサーンさんも実はすごい組織の代表だった。
『チリメン行商団』の代表、団長であった。
行商団と言うのは、一つの街に定住してお店を出して商売するのではなく、いろんな場所を渡り歩き、商売をする人たちだ。
そんな人たちを行商人と言ったり、規模が大きくなれば行商団と言ったりするのだが、それの一番大きな組織が、『チリメン行商団』なのだ。
俺も名前を聞いたことがある位有名だ。
『エチゴー商会』と『チリメン行商団』で、ほぼこの国の経済の中核を担っていると言っても良いのではないだろうか。
この二人の組織の動かす金額の規模は、かなりすごいことになると思う。
そしてそれは、ミトノ公爵の一派だったということだ。
国王を始め国家中枢が酷い有様だった『カントール王国』が、それなりに機能していたというか、人々の生活がそれなりにできていたのは、ミトノ公爵一派の力だったのではないかと思えてきた。
そう考えると、経済の一翼を担っている『チリメン行商団』がこの国を去るのは、影響が大きいのではないかと思う。
そんなことを確認したら……
『行商団』は、元々あちこちを行商して歩いているので、それを継続することを条件に、移住組に回ることをミトノ公爵が許可したとの事だった。
つまり、今までは行商団の本部が『カントール王国』の王都にあったが、今後は、『ヤマダイ国』に移るというだけというかたちらしい。
一応、『ヤマダイ国』と『カントール王国』は別の国だが、属国だから大きな問題は無いわけだ。
今後、『ヤマダイ国』でも何か特産品を作りたいと思っていたから、それを販売してもらうのもいいかもしれない。
読んでいただき、誠にありがとうございます。
ブックマークしていただいた方、ありがとうございます。
評価していただいた方、ありがとうございます。
次話の投稿は、明後日の予定です。
もしよろしければ、下の評価欄から評価をお願いします。
励みになります。
ブックマークも、よろしくお願いします。




