142.断罪
翌日の夕方、俺たちは王城の別館の会議室に集まり、再び打ち合わせをしている。
本日午前中は、簡易な復興イベントのようなものを行った。
もともと王城にあるイベントスペースを利用した。
国王が直接姿を見せたり、告知を行うオープンスペースがほぼ無傷だったのだ。
王城の城壁の上に、広いステージのようなスペースが作ってある。
そして、その下には人々が集まれるような大きな広場ができている。
そこに集まった人々に対し、今後の事に対して告知を行った。
今回も、『トブシマー』一族に伝わる魔法道具『撮影投影ユニット ボローン(フクロウ型)』を使わせてもらい、王都内の各所に映像を映し、できるだけ多くの人が、情報を知ることができるようにした。
まず行ったのは、何が起きたかの説明である。
元『王国認定勇者』であるジャスティスが、魔王として攻めてきたこと。
聖女と謳われていたユーリシアが悪魔契約者で、悪魔が影で協力していたこと。
新しい『王国認定勇者』となっていたジェイスーンが、魔王側に寝返って魔王になったこと。
その者たちが、ゾンビを王都中に放ち、多くの犠牲が出たこと。
国王や重臣たちは、それに対して適正な指示を出さず、自分たちだけがシェルターに避難したこと。
挙句の果ては、ジェイスーンの裏切りで避難シェルターから出され、国王以外が魔王ジャスティスにより殺されたこと。
他にも、自分の仕事を放り出し、勝手に避難シェルターに逃げた者たちが大勢いたこと。
直接の加害者は、魔王ジャスティスたちだが、国王を始めとする国の中枢の者たちの怠慢が、被害を大きくした。
つまり加害者であると言うことを、まず報告した。
この時点で、人々から大きな落胆の声と巨大なブーイングが起きた。
かなりの怒声も飛んでいた。
国王、貴族、役人を処刑しろと言う声も、どんどん広がっていった。
だが、それだけで終わりではない。
そんな状況の中で、どうして最低限の被害で済んだのか、救われたのかという事についても説明した。
元大将軍であるモーリス公爵を中心とした有志の部隊が、独自判断で動き、国民の避難誘導とゾンビの迎撃に当たったこと。
この有志の部隊は、王国軍の一部、王国聖騎士団の一部、衛兵の一部、その他の有志で構成されていたこと。
そしてモーリス侯爵の判断で、『光の聖者』である俺に対して助けを求めたこと。
その後、俺や仲間たちが北端魔境から王都に駆けつけ、王都中のゾンビを倒し、怪我人の救出、治療を行ったこと。
王城において、俺が悪魔契約者のユーリシア、魔王ジャスティス、新勇者で魔王となったジェイスーンを倒したこと。
それらのことを説明した。
この時点では、逆に大歓声が巻き起こり、王都の空気が震えるほどであった。
『光の聖者』コールやヤマトコールが巻き起こって、それがしばらく続き、静かにしてもらうのが大変だった。
もちろん、モーリス侯爵に対するコールも起きていた。
何とかそれらのコールが収まったところで、断罪パートに突入である。
悪魔契約者や魔王が直接の加害者だとしても、それを許した国のトップである国王、貴族、役人も同様の加害者であり、到底許すことができない。
おまけにユーリシアが、悪魔契約者に落ちた原因は王族なのだから、根本原因は王族にあると言ってもいいわけだ。
当然そのことについても、明らかにした。
千にも及ぶ命が失われた責任は、国王や王族にあるのである。
それだけではない。
悪魔契約者であったものを勇者候補パーティーに加え、しかもそのパーティーの勇者候補を『王国認定勇者』とした。
そして、その中にいた俺を理不尽に追放した。
ジャスティスが魔王となり去った後、新たに認定した新勇者ジェイスーンまで魔王側に寝返った。
為政者として、最悪最低の決断と人選である。
酷い言い方をすれば、『勇者選定機構』は、魔王を育てたと言っても過言ではないのだ。
この断罪パートが始まってから、実はイベント用のテラスには、下の広場に見える位置に、国王、貴族、役人など断罪を受ける者たちが並べられている。
俺は、その者たちの罪を改めて暴いていった。
最初は、当然国王である。
国王がどんな人間であるかと言うことを、一般の人々は知る機会がないので、実際に見せてやったのだ。
『大剣者』は、随時状況を映像としても記録保存している。
俺に対して国王が言った言葉なども、全て記録されているのだ。
この記録映像を『ボローン』ユニットを使って投影できるので、王都各所で今まで王城の映像を見ていた人に、切り替えてその映像を見せたのだ。
王城の広場に集まった人に対しても、見せている。
もちろん特別な魔法道具によって記録されたものであるとの説明付きでだ。
————
「待て、待て、ジャスティス、いや魔王ジャスティス殿、早まるでない。
我を殺したら、国民が悲しむ!
そなたにメリットはないぞ。
我を生かせば、人も財産も好きなだけ渡そう。
いくらでも殺して、ゾンビにすればいい!
だから我を殺してはならん!」
…………
「なにを!? ヤマト、いやヤマト殿と呼ぼう。
そうだ、わかった、そなたを『聖者』と認めよう。
我が認めれば、皆認める。国も後ろ盾になろう。
だから、早まったことを言うでない。
……そうか、そなたにも、人も金もやろう!」
————
映像が流れている間は、あまりの暴言とその内容に静まり返った場面もあったが、その後は凄まじい数の怒りの声が沸き上がった。
人々の怒り様は凄かった。
殺せコールが起こり、しばらく止む事はなかった。
当然、俺も生かすつもりはない。
国王の後には、ヒトツバ公爵家やその他の貴族たち、『十神教会』の教皇や幹部の罪も暴き、死刑とすることを宣言した。
そして、その死刑を執行したのである。
ただ処刑人に首を落とさせる事はなかった。
俺が、自ら手を下したのである。
だが斬ったわけではない。
簡単に死ねるような方法など生ぬるいと思い、苦しみながらまさに罰を感じながら死んでもらった。
その処刑方法は、俺の『光魔法——光の洗礼』だ。
超高濃度に凝縮した光の洗礼を、頭から浴びせかけたのである。
汚れきった魂には、拷問のような苦しみになり、その後それに耐えきれず死ぬのである。
悪魔契約書のユーリシア、魔王ジャスティスにやったのと同じ方法だ。
はっきり言って、人々に見せるにはあまりにも悲惨でおぞましい姿ではあった。
だが、なぜこうなっているかについても、説明した。
悪行を重ね精神波動を落とし、魂に多くの汚れを持つと光の浄化に耐えきれず、狂い死にしてしまうと言うことを説明したのだ。
普通の人に対して、この魔法を使っても、死ぬ事は無い。
むしろ普段の生活の中でどうしてもついてしまう多少の汚れや、落ち込み等での精神波動の下りを回復してくれる。
そんな説明をして、実はこの方法が、何よりも悪の証明でもあるという話もした。
そして実際に、普通の人にも魔法を行使して影響がないことを見せてやった。
こうすることによって、悪い行いをすれば、浄化の光を浴びたときに恐ろしい苦しみの中で死ぬという事を、ある種の戒めとして理解してもらったのだ。
生き残った人がいい人ばかりなわけはなく、この戦後の混乱を利用して悪事を働くことを考える者もいるだろう。
そういう者たちへの戒めと見せしめという意味も、付け加えたのである。
国王は当然としても、聖職者であるべきの『十神教会』の教皇や幹部が、光の洗礼で悶絶している姿は、かなり皮肉が効いていた。
かなりのインパクト映像だったが、これが悪いことをすることへの精神的な歯止めになってくれるといいと思う。
ちなみに、精神波動の汚れ具合は、実際は程度問題があり、狂い死にせずに生き残った者もいた。
だが、罪状から考えれば死刑に該当するので、その者たちは回収された後に密かに処刑された。
大物と言える国王、ヒトツバ公爵、教皇といった連中は、狂い死にしていた。哀れな話である。
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