110.巫女長からの依頼
俺が使った浄化の砂嵐によって、ゾンビ魔物とゾンビ化した人々を殲滅した。
特に、脅威の存在になっていた元騎士団員のゾンビ騎士を倒せたことは、大きかった。
被害が、だいぶ抑えられたようだ。
それから、仲間たちが教えてくれたのだが、浄化の砂嵐は『小悪魔』たちにも、影響を与えていたらしい。
一斉に動きが鈍くなって、倒すのが楽になったとの事だった。
ちなみに『小悪魔』たちも、死ぬとゾンビ化していて厄介だったようだが、ゾンビ小悪魔は、浄化の砂嵐でゾンビ魔物同様に倒されていたようだ。
生きている『小悪魔』は、浄化の砂嵐で倒されたわけではないが、浄化の光の苦痛で動きが鈍くなり、弱体化していたということだろう。
この報告を受けて思ったが、あの拡散させた浄化の砂嵐ではなく、通常の『光の洗礼』の『光滴』を浴びせたら、もしかしたら『小悪魔』を倒せるかもしれない。
浄化の光の密度が濃いだろうから、可能性はあると思う。
まぁ今となっては、試すことはできないが。
ただ『小悪魔』は、魔物の領域すなわち魔素が濃い場所に、自然発生することがあるらしい。
『勇者選定機構』での講習で聞いたのを思い出したのだが、過去の資料に残っていると言っていた。
今の『カントール王国』で確認されている魔物の領域では、いないはずであるが、普通に人が踏み入れないような魔物の領域にはいる可能性があるとも言っていた。
それを考えると、あの広い『北端魔境』なら、どこかに『小悪魔』たちが生息している場所があるかもしれない。
『小悪魔』と言うのは、悪魔と魔物の中間のような生物で、どちらかと言うと、魔物に近い生物らしい。
それに、そもそものレベルがあまり高くないので、悪魔のような脅威とはみなされていない。
だが悪魔が操れるような因子を持っているらしく、過去に行われた『魔王戦』でも手駒として現れたこともあったようだ。
必ずしも、悪魔や魔王が使役するというわけではないみたいだが。
もしかしたら、悪魔や魔王の考え方や能力などとも関係しているのかもしれない。
ただ今回は襲って来たわけだから、今後も『小悪魔』が手駒として現れる可能性はある。
そう考えると、少なくとも『北端魔境』にいるかどうかは、確認しておきたい。
俺たちよりもはるかに『北端魔境』に詳しい『河童族』の族長や、『ノッカー族』の族長に、今度尋ねてみよう。
王城内がだいぶ落ち着きを取り戻してきたが、また少し騒然となった。
モーリス侯爵の指示を受けた兵士たちによって、避難シェルターに逃げていた文官や一部の兵士たちが連行されて来たのだ。
貴族家の子弟が多いようだ。
この者たちは、職務を放棄して勝手に避難していた者たちとのことだ。
国のトップや大臣たちがあんなだったから、ある意味しょうがないかもしれないが、有事の際の職務放棄は重罪だろう。
こいつらは、全員犯罪者と言える。
そして、その中には俺がよく知っている人物もいた。
『勇者選定機構』の長官だ。
ジャスティスとともに、俺を『北端魔境』に追放した男である。
「ヤマト、いえヤマト様、助けていただき、ありがとうございます」
手のひらを返したような表情と態度の長官に、俺は思わず一発入れてしまった。
鳩尾に軽めに入れただけだが、奴は悶絶している。
本当は剣で貫きたいくらいだが、こいつらには、国民に謝罪させた上で、罰を受けてもらう。
王城内の状況確認が大体終わったところで、俺の前に、老巫女が現れた。
一緒に、巫女見習いのナナリーさんと、神殿騎士のサザリーさんがいるので、おそらく巫女長さんだと思う。
「『光の聖者』様、ヤマト様、お初にお目にかかります。私は『十神教会』の巫女長をしておりますフィルミーヌと申します。此度は、国を、人々を救っていただき、ありがとうございます。深く感謝いたします」
丁寧に、挨拶をしてくれた。
穏やかで、優しい感じの人だ。
「はじめまして、ヤマトです。ナナリーさんから、お話を聞いています。何とか魔王は倒せましたが、多くの命が失われて残念です」
「いえ、ヤマト様のお力がなければ、比べ物にならない犠牲が出ていたことでしょう。本当にありがとうございます。
ヤマト様にお願いがございます。
此度の危機は過ぎましたが、これで終わりではありません。
ナナリーが受けた神託にある通り、ヤマト様の下に勇者が何人も揃わねばならぬほどの危機が訪れるはずです。
今回は始まりに過ぎないのです。
ですからお願いです。
どうか、この王都の民の為に、その存在をお示しください。
民を安心させ、希望を持たせる為には、『光の聖者』様の存在とお言葉が必要です。
人々に、お言葉を投げかけて欲しいのです」
巫女長は、深く頭を下げた。
これは……人々の前に姿を現して、安心するように言葉をかけてほしいという事だろうが、いきなりの難問だ。
本当は目立つのはあまり好きじゃないが、そうも言ってられない。
テラス様からいただいた力を、無駄にするわけにもいかない。
俺に与えられた役目だと思って、やるしかないな。
「わかりました。テラス様から託された使命だと思ってやりましょう。
ですが、どうやって王都中の人々に言葉を届ければ……」
「それは大丈夫ですじゃ。
王城にも声を届ける魔法道具はあるでしょうが、『天船』には、映像投影装置があります。
同時に何箇所かで、映像と音声を流すことができる装置がありますので、ヤマト殿の姿と声を王都中に届けることも可能ですじゃ」
シーア族長が、そんなことを言った。
まじか、そんな機能も内蔵してるのか。
ほんとにすごいな。
「ありがとうございます。ではそれを使わせてもらいます」
俺はシーア族長にお礼を言って、具体的な打ち合わせを始めた。
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