109.王城内の被害状況
俺は、デワサザーン伯爵、モーリス侯爵たちとともに、飛行帆船『天船』で王城にやって来た。
王城の正門から一番近い広場に着陸すると、そこには、ラッシュやクラウディアさん達が待っていた。
ラッシュたちは、王城周辺の敵の撃退と人々の保護を行っていたので、『小剣者』で連絡して王城に戻ってもらい、王城内の状況把握をしてもらっていたのだ。
大混乱になっているわけだが、クラウディアさんが中心となって、ある程度の情報を把握し終わっていた。
さすがである。
「王城内で戦闘していた第一大隊及び第三大隊には、多大な被害が出ています。
命を落とした者だけでも、五百人以上。
怪我人も多数で、瀕死の者も多かったようですが、ヤマト君のスキルで救われています。
ヤマト君のスキルで、死者の数がかなり減ったのは間違いないと思います。
文官たちは、高位な者ほど機能せず、避難シェルターに逃げた者が多数いるようです。
ただ、若い文官のグループが、いくつか機能していたようでした」
クラウディアさんは、俺に対する報告だけでなく、モーリス侯爵たちへの報告の意味もあるので、しっかりとした言葉遣いで報告をあげている。
そして、この早い情報収集の元となったと思われる文官の青年を紹介してくれた。
話によれば、彼は国王付きの文官で、国王や宰相たちが避難シェルターに逃げるときに、抜け出して、独自の行動に踏み切ったとのことだ。
危機に際して、逃げる気にはなれず、少しでもできることをしようと考えたとのことだ。
賛同してくれる者とともに、状況の把握に努めていたらしい。
文官にも、まともな人がいてくれて、少し救われた思いだ。
ただ彼と行動を共にしていたのは、皆若い文官で、それなりの地位の文官がいなさそうなのは残念だが。
彼は名を、カイシュウ君と言い、国王付きの中では、最下級の文官だったそうだ。
やっている事は、様々な雑用だったらしい。
いいように使われていたのだろう。
負傷者の為の回復薬や、食料などの物資が必要だろうと、王城の備蓄庫の資料を取り出して、開錠と放出の準備もしてくれていたようだ。
早速、王都中に支援物資を届けるように、モーリス侯爵に指示を出してもらった。
実際の支援物資の配布は、モーリス侯爵指揮下の独立部隊とも言える兵士たちに頼んだわけだが、それを見ても王城にいた兵士たちが文句を言う事はなかった。
元大将軍であるモーリス侯爵は、今でも多くの兵士たちの尊敬を集めているようだ。
王都は広いので、王城から遠い場所への支援物資は、シーア族長に頼んで、『天船』で運んでもらうことにした。
それから、文官カイシュウ君が集めた情報によれば、一番激しい戦闘が行われたのは、ジャスティスたちがいた王宮本殿の周辺エリアだったそうだ。
王宮本殿の守りについていた第一大隊は、壊滅的な被害を受けたらしい。
俺が、王宮本殿に着いたときには、すでに壊滅的な被害を受けた後だったようだ。
言われてみれば、王宮から少し離れたところに、数多くの兵士が倒れていた。
王宮本殿のすぐ近くで戦っていたと言うよりは、近づけさせない為に、ある程度離れた場所に布陣して戦っていたのだろう。
ちなみに、この第一大隊は、ジェイスーンと共に、『北端魔境』に進軍しようとしていた部隊だったらしい。
出征しようとしていた、まさにその時、魔王ジャスティスたちの襲撃が始まったのだそうだ。
王命で王宮本殿を死守するように指示があったらしいのだが、そのせいで、ジャスティスたちに直に攻撃されることになり、大被害にあったわけだ。
出征に同行しようとしていた大将軍と、第一大隊の隊長である将軍と、幹部将校たちは全滅らしい。
生き残った兵士の話によれば、ジャスティスにやられたようだ。
部隊を混乱させる為に、上位の者たちを先に始末したのだろう。
国王を守る『近衛騎士団』五十名と、支援に来ていた『王国聖騎士団』の一部である五十名も、同じ場所で戦っていて、全員死亡したらしい。
ジャスティスが倒したようだ。
やはり意図的に、力のある者を先に始末したということだろう。
生き残りの兵士の話では、この力がある騎士たちがゾンビ化したことによって、第一大隊の兵士により多くの被害が出たのだそうだ。
ジャスティスには、その狙いもあったのだろう。
『王国聖騎士団』は百五十名いて、そのうちの五十名ほどはモーリス侯爵に賛同し、独自行動をとる部隊に参加していたとのことだ。王城外で活動していたのだ。
『近衛騎士団』と共に戦死した五十名以外の残る五十名の聖騎士たちは、王城の各所に散らばっていて、生き残っているとのことだ。
実力のある彼らが、王城の中での撃退戦の主力として活躍してくれていたようだ。
同様に、王国軍第三大隊も、広い王城内で散開して戦っていたようだ。
第一大隊ほどではないが、被害が出ている。
ただ、隊長である将軍をはじめ、幹部将校はほとんど生き残れているそうだ。
兵士たちは、命を落としてしまうとゾンビ化して敵の戦力になってしまう状態になっていた。
特に第一大隊の布陣していたところにいた、実力のある騎士たちのゾンビは、一般兵では敵わない恐るべき存在になっていたわけだ。
ただそれも、俺が浄化の砂嵐をまいたので、殲滅できたのだが、それがなければ、おそらく王城内にいた兵士たちは、壊滅していたのではないかとの事だった。
そんな証言をした兵士たちが多くいるらしく、俺を救いの神のように言っていたらしい。
現に、すれ違う兵士や、負傷して休んでいる兵士たちも、俺を見ると、わざわざ片膝をついて頭を下げている。
中には、祈るように手を組んでいる者もいる。
感謝してくれるのはいいが……神に祈るようなポーズをされるのは、微妙にいたたまれない。
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