108.重傷者の回復と被害状況の把握
俺は、『天船』で王都上空を移動し、『視力強化』スキルを使って、重傷者を確認し、固有スキル『献身』の対象者に指定した。
そしてスキルを発動し、ダメージの半分を引き受けた。
光魔法でゾンビを浄化した時と同じで、王都全域をカバーするには、十回以上繰り返す必要があった。
もちろんその度に、俺のHPは1になったが、自分ですぐに回復をしたので問題ない。
『視力強化』スキルを使って確認したとは言え、怪我人を漏らさず見つけるためには、ある程度高度を低くして飛行する人があったので、数多くの人々に目撃されてしまった。
もっとも、そもそもが空飛ぶ船自体が珍しくて、みんな見るわけだから、しょうがないことではあるのだが。
逆に船に注目が集まっていたはずだから、俺が人々を助けていると気づく者は、ほとんどいなかっただろう。
まぁそのことに気づかれても、特に問題は無いのだが。
重傷者の回復が終わったので、俺はデワサザーン伯爵と合流することにした。
デワサザーン伯爵は、人々を守っている独立部隊とも言うべき独自組織のリーダーのモーリス侯爵邸にいるのだ。
そこが本部機能を果たしているので、ある程度の情報も把握しているはずである。
現状の詳しい情報を、確認することもできるだろう。
ちなみに、重傷者の治療をしながら確認したが、『小悪魔』はもう駆逐されていると言っていい。
まぁ多少残っていた『小悪魔』は、俺が倒してしまったのだが。
モーリス侯爵邸の広い中庭に、船を着陸させる。
船から降りて行くと、デワサザーン伯爵と、女性情報官のアガサさんが出迎えてくれた。
その奥には、モーリス侯爵と思われる髭を蓄えた威厳のある老紳士が立っている。
俺は、挨拶をしようと微笑みながら近づいたのだが……
突然、モーリス侯爵を始め、そこにいた人たちが全員俺に跪いた。
「ヤマト様、いや『ヤマダイ国』初代国王ヤマト陛下、お初にお目にかかります、私はルブランド・モーリスと申します。
王都の民を救っていただき、そして、魔王を討伐していただき、誠にありがとうございます」
「「「ありがとうございます」」」
モーリス侯爵がそう言うと、他の兵士や文官と思われる者たちが、一斉に感謝の言葉を伝えてくれた。
デワサザーン伯爵には、『小剣者』の通信機能で、魔王ジャスティスや悪魔契約者ユーリシアを倒した事は、報告済みなのだ。
当然、俺のスキルでゾンビを殲滅したことや、瀕死の者たちのダメージを引き受けて、助けた話も簡単にしてある。
それらの情報は、ここにいるみんなにも伝わっていたわけだ。
「はじめまして、ヤマトと申します。
何とか魔王は倒しましたが、かなりの人的被害が出ていると思います。詳しい状況を教えてもらえますか?」
「はは。では早速、今集まっている情報をお伝えいたします」
そう言ってモーリス侯爵が、襲撃時から今までの情報を説明してくれた。
突然に、王都全域に小悪魔及び魔物のゾンビが現れ、大混乱に陥ったが、モーリス侯爵と志を同じくする兵士・衛兵がすぐに行動を開始し、人々の避難誘導を始めたとのことだ。
初動が早くできたので、地下の避難シェルターに近い場所の住民には、大きな被害は出ていないらしい。
避難シェルターがない地域では、人々を広場に集め、兵士・衛兵でそのエリアを守るようにして、ゾンビ魔物や『小悪魔』を撃退していたとのことだ。
ただそうした戦いが激しくなった現場では、死者が出てしまい、死者はゾンビ化し襲って来て、より被害者を出すという厳しい状態に陥っていたらしい。
兵士・衛兵を中心に、かなりの死者が出てしまったとのことだ。
もちろん一般人の死者も、場所によってかなり出ているらしい。
現時点でわかっている死者は、千五百人以上になるそうだ。
正確に把握できていないが、王城内の兵士・文官などの死者を含めると、二千人近くになるだろうとのことだ。
かなりの人が命を落としてしまい、やるせない気持ちでいっぱいだが、モーリス侯爵曰く、魔王の襲撃であったことを考えれば、被害規模としてはかなり少なく済んだと言えるとのことだ。
王都の人口が約五十万人であることを考えても、最低限の被害で凌いだと判断して良いのではないかと言っていた。
だが、俺はとてもそんな気にはなれない。
二千人近くの人が死んだのだ。
そのうちの多くは、兵士・衛兵ということだが、兵士だからって死んでもいいと言うわけではない。
その者たちにだって、家族がいたわけだし。
また地域によっては、一般人にも多くの被害が出ている。
改めて、怒りが込み上げてくる。
魔王ジャスティスたちが許せないのはもちろんだが、国王を始めとした無能な国の中枢の連中たちが許せない。
まぁその中で生き残っているのは、国王しかいないわけだが。
国として、全く機能していなかった。
モーリス侯爵たちの動きがなければ、おそらく被害は十倍以上になっていただろう。いや、それ以上だな。
俺の報告で、国王以外の国の中枢メンバーが死亡したことも、モーリス侯爵たちに伝わっている。
おそらく王城内は、かなりの混乱状態になっているだろうということで、一旦、デワサザーン伯爵とモーリス侯爵とともに、王城に戻ることにした。
足りない物資を、王城の備蓄から調達するという目的もある。
現状、負傷者全員が回復しているわけではないのである。
回復薬が足りないのだ。
俺が、『献身』スキルでダメージを引き受けたわけだが、それはあくまで半分である。
残りのダメージは、回復薬などで回復させなければならない。
俺が、スキルの対象に指定しなかった軽傷者もかなりいるが、その者たちも回復させてあげた方が良い。
そう考えると、大量の回復薬が必要である。
この有事にこそ使うべきなので、備蓄品を全て吐き出させるつもりだ。
俺たちは、飛行帆船『天船』に乗り込んで、王城を目指す。
読んでいただき、誠にありがとうございます。
ブックマークしていただいた方、ありがとうございます。
評価していただいた方、ありがとうございます。
次話の投稿は、明日の予定です。
もしよろしければ、下の評価欄から評価をお願いします。
励みになります。
ブックマークも、よろしくお願いします。




