105.悪行で汚れた魂を切り刻む浄化の光
俺が『大剣者』に握り変えたわずかの間に、ジャスティスも攻撃への備えをしていた。
俺に切断され、宙を舞っている三本の腕にも落ちている剣を拾わせ、一旦自分の体に引き寄せ、魔力を流し込んで、同様に魔力の刃を纏わせたのだ。
あの切り離された腕が襲ってくると、地味に厄介だ。
『大剣者』が宙を舞って襲ってくるのが、敵にとって、いかに厄介かが良くわかった。
反対の立場になって、身に染みて感じられた。
まぁそんな事は、今はどうでもいいが。
まずは飛んでくる三本の腕を、『大剣者』で薙ぎ払う。
魔力刃を纏って強化されている剣も、『大剣者』で問題なく切断できた。
だが、腕を斬りつけていないので、腕自体は大きく飛ばされるだけで、消滅しない。
驚きなのは、剣が折れても、折れた部分に魔力刃ができて、剣としての機能を保っていることだ。
腕ごと、一気に消滅させないとダメだな。
俺は、焼き尽くす為、左手の指先からソーラレイを発射したが、この腕も、ジャスティス並みの速度で回避した。
見た感じ自律行動で動いてるようだが、魔王の力が及んでいるようだ。
俺は、牽制でジャスティスにソーラーレイを連射しつつ、三本の腕に斬撃を放つ——
横一閃の斬撃は、斬撃波となって三本腕に直撃する。
周辺被害を考えて、手加減したから、三本腕は無傷だ。
だがそれで良い。
斬る為ではなく、押し飛ばす為に放ったのだから。
そう、俺が計算している場所に。
再びの隠し球、『オートホース』の射線上だ。
まぁ実際は隠し球と言うよりは、着陸してそのまま『オートホース』を置いていただけなのだが。
「今だ! 『大剣者』!」
「イエス、マスター」
「オートホース、フルバースト!」
『大剣者』の指示で、『オートホース』が口の魔砲、両脇腹の魔法銃を一斉射撃した。
攻撃範囲を広くするために、放射範囲を広げて撃ち出したフルバーストは、三本腕の回避を許さない。
三本腕を直撃し、後ろの王宮本殿の壁に大穴を開け、轟音を響かせた。
本殿自体が崩れ落ちるかと少し焦ったが、大穴を開けただけで済んだ。
本殿の奥へと追いやられた三本腕を、俺の本命の攻撃が襲う。
『光魔法——光の洗礼』の浄化の光を纏った砂塵だ。
聖剣との合わせ技で、王都中のゾンビを殲滅した光のそよ風である。
だがここで放ったのは、そよ風なんてものではない。
光の強風、浄化の嵐である。
間髪入れないこの追撃によって、三本腕は捕らえられ、今まさに浄化されている。
実際は、切り刻まれていると言ったほうがいいだろう。
「グギャァァァ、、、」
ジャスティスが悲鳴をあげた。
魔力を送り繋がっている状態だからか、浄化による苦痛が、離れたジャスティスをも襲ったようだ。
だが、ジャスティスはすぐに繋がりを切ったようで、今はうずくまっているだけだ。
「おのれ、ヤマトォォォ」
苦痛と怒りに、顔を歪めるジャスティス。
これで奴の対抗手段は尽きたと思うが、油断はできない。
このまま一気に倒す!
斬りかかる俺の攻撃を、ジャスティスは避けたり、魔力刃の剣で受け流す。
ジャスティスの剣は、最初の受け流しで、『大剣者』に切断されたが、その後は、剣の実体がないところに魔力刃が形成され、事実上、破壊不可能な状態の剣になっている。
『大剣者』を受け流す度に、魔力刃は弾けるのだが、すぐに再生し復活するのである。
だが、奴の魔力は、その度に大きく削られているはずだ。
このまま攻撃を続けていれば、いずれ奴の魔力も尽きるだろう。
だが、それを待っているつもりはない。
数合の打ち合いを続け、十分にタイミングを図り、十分に近づき、かつ、奴の動きが鈍ったタイミングを見て、俺は奴の足に『巻きひげ縄』を放った。
「グギャァァァ、ぐうぅぅぅ」
ジャスティスが、悲鳴をあげる。
それもそのはず、奴の足に巻きついた『巻きひげ縄』は、ただの『巻きひげ縄』ではない。
『光の洗礼』の浄化の光の粒子を纏わせた『巻きひげ縄』なのだ。
さっき三本腕に『光の洗礼』を放ったときに、仕込んでおいたのである。
魔王であるジャスティスを完全に拘束できるほどの強固さはないが、光の粒子を纏っているので、激痛でジャスティスは動きを止めているのだ。
まともに『光の洗礼』の砂塵を放射しても、今の奴の動きなら避けられてしまうだろう。
それゆえに、確実に捕らえる方法を選んだのだ。
そしてこれが成功した時点で、もう奴は終わりだ。
わずかな時間であっても、動きが止めれれば、それでいいのだ。
俺は、残っているすべての『巻きひげ縄』を、ジャスティスに巻き付け追加で拘束し、特大の『光の洗礼』の『光滴』をお見舞いした!
「グギャァァァ、ギィィィィ、ヤ、マ、ドォォ……」
ユーリシアと同じ状態だ。
苦痛で歪んだ顔は、この世のものとは思えないほど醜い。
ちなみに、『光の洗礼』を浴びていたユーリシアは、もう悲鳴をあげていない。
とっくに絶命していた。
ジャスティスもそれに気づいていたのか、初めからそれほど重要視していなかったのか、戦いの中でユーリシアを気にかける様子は、途中から一切なくなっていた。
ユーリシアは、汚れきった魂が浄化の光に耐えきれず、精神が崩壊し、命も尽きたのだろう。
多分、魂が崩壊するレベルに、細かく浄化されてしまっている。
おそらく永遠にも思える長さの苦しみだったはずだ。
永遠に続くような拷問の中で、息絶えたのだ。
もし魂の欠片が残っていて、輪廻の輪に帰ることができたなら、今度転生するときは、本当の聖女のようになってもらいたいものだ。
そしてジャスティスは、今、ユーリシアと同じ苦しみを、一身に浴びている。
悪行の罰を受けているのだ。
目、鼻、口から血を流している。
体中のあちこちから、血を吹き出している。
アンデッドになったジャスティスが浄化されているわけだが、普通のアンデッドの浄化とは違う。
『闇落魔王』のアンデッドであり、その所持している魂はユーリシア以上に汚れてしまっているはずだ。
ユーリシア以上の苦しみを、味わっているかもしれない。
浄化しきるまで、仮に数分だったとしても、ジャスティスにとっては永遠に感じる長さのはずだ。
魂が浄化の光で切り刻まれ、粉々になるまで、奴の罰は続く。
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