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104/228

104.無意味な人質作戦は、やはり……

「ジャスティス、お前も悟ったのではないか?

 俺には勝てないと。

 ゾンビとなったお前は、より俺との相性が悪くなっていると、気づいてるんだろう?」


 俺は、ジャスティスを挑発する。


「バカめ、お前ごときが、な、何を言っている!?

 不死を手に入れ、真の魔王となった俺を倒せるわけがない!」


「本当か?」


「バカめ、本当に決まっている!」


「じゃあ試しに、俺の『光の洗礼』を受けてみてくれないか?」


「なに? ふっ、その手には乗らんぞ。

 少しでも俺にダメージを与えたいという姑息な作戦だな。

 そんな手に乗るわけないだろ!

 お前は、これから俺に蹂躙されるのだ!」


 ジャスティスは、言っていることとは裏腹に、やはり余裕を失っているようだ。


 そしてジャスティスを挑発しながら観察したが、おそらくこれ以上の隠し球はないだろう。


 俺が気をつけるべきは、奴の異常な動きの速さだ。

 『光の洗礼』をお見舞いしたいが、それを避けられずに当てる方法を、会話しながら考えていたのだ。


 やはり、あの手しかないか……。


 俺が動き出そうとしたのを察知したのか、ジャスティスが声を張り上げる。


「あれを見ろ! お前が少しでも動けば、国王の命はないぞ!」


 え、なに言ってんだこいつ!?


 この後に及んで人質?

 しかも国王って。

 全然人質の意味ねーし!

 殺されても、全然平気だけど。

 あまりのバカバカしさに、俺は言葉を失った。

 思わず、笑みまでこぼれてしまった。


「何がおかしい? できないと思っているのか? ほんとに殺すぞ!」


 ジャスティスがそう言って目配せをすると、やはりジェイスーンは言いなりで、魔剣の代わりに握っている短剣を国王の首筋に当てた。


「待て、待て、ジャスティス、いや魔王ジャスティス殿、早まるでない。

 我を殺したら、国民が悲しむ!

 そなたにメリットはないぞ。

 我を生かせば、人も財産も好きなだけ渡そう。

 いくらでも殺して、ゾンビにすればいい!

 だから我を殺してはならん!」


 なんだ、こいつ、この期に及んで、何言ってんだ?

 この国王……思ってた以上に、クソだな。


「俺にとって、国王なんて関係ないから、人質になんてならないぞ。

 ジャスティス、お前って、そんなにバカだったか?

 いやバカだったな。

 国王を殺してくれた方が、人々の為になるんだが。

 魔王のお前でも、人々の為になることができるんだな。ハハハ」


 俺は、親指で首を切るようなジェスチャーを入れ、どうぞ殺せとアピールした。


「なにを!? ヤマト、いやヤマト殿と呼ぼう。

 そうだ、わかった、そなたを『聖者』と認めよう。

 我が認めれば、皆認める。国も後ろ盾になろう。

 だから、早まったことを言うでない。

 ……そうか、そなたにも、人も金もやろう!」


 国王が、俺に向けてそんなことを言ってきた。


 もう人質どうのこうのと言うよりも、俺がこいつを殺したい。

 ゲンナリだ。

 この真剣勝負の中で、なんでこんなゲンナリした気持ちにならないといけない。


 これも、状況を変えるためのジャスティスの作戦か……?

 いや、そんなはずはないな。さすがに考えすぎだろ。


「ヤマト、お前がほんとに『聖者』なら、人を見殺しにはできないだろう? ましてや国王だ。どうだ?」


 ジャスティスは、一体何を考えているんだ……?


「確かに、人は見殺しにしたくないけど、そいつは、国王は、俺の中で人じゃない。だから全然見殺しにできるけど」


 もう相手にするのも、馬鹿馬鹿しい。


「な、なにを!? 貴様、いや、ヤマト殿、高貴な我を、人以上の存在だと敬う気持ちはわかる。

 だがこの身は、不死ではないのだ。

 だから大事にせねばならんのだ!」


 はぁ?

 ほんとに、何言ってんのこいつ?


 ……誰か黙らせて欲しい。


 ていうか、もう付き合ってられん。俺が黙らそう。


 俺は、『聖槍 カントウロウム(ソウ)』を使い、国王の足元に穴を作って、ジェイスーンともども落とした。


 国王のいた場所は、本殿の入り口付近だったが、地下室があったようで、より深く落ちてしまった。

 悲鳴を上げる間もなく落ちていたが、まぁ放置でいいだろう。


「な、お前!?」


 なんだ?

 ジャスティスが、ほんとに驚いている。


 こいつ、まさかほんとに人質にしようと思っていたのか?

 何か他の作戦があって、やっていたことじゃないのか?

 こいつ、ほんとにバカなのか? いや、バカだった……。


「さぁ行くぞ、ジャスティス!」


 俺は、聖剣を振り上げ斬りかかる。

 もちろん単純に斬れるとは思っていない。牽制の為の初動だ。


 ジャスティスは、瞬時に避けて、転がるようにして、落ちていた剣を掴んだ。


 一般の兵士が使う普通の剣だが……


大魔刃(だいまじん)!」


 ジャスティスがそう言うと、剣の周りに、薄赤のエネルギー……おそらく魔力が広がっていく。


 そして、魔力の刃を形成した。


 どうも、さっきの言葉は、発動真言(コマンドワード)だったようだ。


 剣が、普通の剣である以上、剣の能力ではなく何らかのスキルを発動したのだろう。


 やはり、さっき国王を人質に取ったのは、この為の時間稼ぎだったようだ。


 それにしても、この剣の状態……見たことがある。

 まるで『河童族』の『種族固有スキル』の『河童魔鬼(かっぱまき)』を発動し、剣を強化した状態みたいだ。


 同じような性質の技だとすれば……ただの剣は、おそらくかなり高性能な、切れ味抜群の剣になっているはず。


 初見だったらわからなかったが、同じような状態を見ているから、見当がつく。


 聖剣でも多分対応できるが、ここはより強度な、切れ味抜群な『大剣者』で戦おう。


「大剣者!」


 一言で、『大剣者』は瞬時に移動して、俺の手に収まった。


「よし、全力で行くか!」


「イエス、マスター。ただ、全力を出した場合、斬撃波が発生する可能性があります。

 周辺被害防止のため、本気の一撃は、斬り上げるかたちで、空に向けて出したほうがいいと思われます」


「わかった。俺もそう思ってたよ」


 俺はジャスティスに向けて、『大剣者』を構えた。



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