104.無意味な人質作戦は、やはり……
「ジャスティス、お前も悟ったのではないか?
俺には勝てないと。
ゾンビとなったお前は、より俺との相性が悪くなっていると、気づいてるんだろう?」
俺は、ジャスティスを挑発する。
「バカめ、お前ごときが、な、何を言っている!?
不死を手に入れ、真の魔王となった俺を倒せるわけがない!」
「本当か?」
「バカめ、本当に決まっている!」
「じゃあ試しに、俺の『光の洗礼』を受けてみてくれないか?」
「なに? ふっ、その手には乗らんぞ。
少しでも俺にダメージを与えたいという姑息な作戦だな。
そんな手に乗るわけないだろ!
お前は、これから俺に蹂躙されるのだ!」
ジャスティスは、言っていることとは裏腹に、やはり余裕を失っているようだ。
そしてジャスティスを挑発しながら観察したが、おそらくこれ以上の隠し球はないだろう。
俺が気をつけるべきは、奴の異常な動きの速さだ。
『光の洗礼』をお見舞いしたいが、それを避けられずに当てる方法を、会話しながら考えていたのだ。
やはり、あの手しかないか……。
俺が動き出そうとしたのを察知したのか、ジャスティスが声を張り上げる。
「あれを見ろ! お前が少しでも動けば、国王の命はないぞ!」
え、なに言ってんだこいつ!?
この後に及んで人質?
しかも国王って。
全然人質の意味ねーし!
殺されても、全然平気だけど。
あまりのバカバカしさに、俺は言葉を失った。
思わず、笑みまでこぼれてしまった。
「何がおかしい? できないと思っているのか? ほんとに殺すぞ!」
ジャスティスがそう言って目配せをすると、やはりジェイスーンは言いなりで、魔剣の代わりに握っている短剣を国王の首筋に当てた。
「待て、待て、ジャスティス、いや魔王ジャスティス殿、早まるでない。
我を殺したら、国民が悲しむ!
そなたにメリットはないぞ。
我を生かせば、人も財産も好きなだけ渡そう。
いくらでも殺して、ゾンビにすればいい!
だから我を殺してはならん!」
なんだ、こいつ、この期に及んで、何言ってんだ?
この国王……思ってた以上に、クソだな。
「俺にとって、国王なんて関係ないから、人質になんてならないぞ。
ジャスティス、お前って、そんなにバカだったか?
いやバカだったな。
国王を殺してくれた方が、人々の為になるんだが。
魔王のお前でも、人々の為になることができるんだな。ハハハ」
俺は、親指で首を切るようなジェスチャーを入れ、どうぞ殺せとアピールした。
「なにを!? ヤマト、いやヤマト殿と呼ぼう。
そうだ、わかった、そなたを『聖者』と認めよう。
我が認めれば、皆認める。国も後ろ盾になろう。
だから、早まったことを言うでない。
……そうか、そなたにも、人も金もやろう!」
国王が、俺に向けてそんなことを言ってきた。
もう人質どうのこうのと言うよりも、俺がこいつを殺したい。
ゲンナリだ。
この真剣勝負の中で、なんでこんなゲンナリした気持ちにならないといけない。
これも、状況を変えるためのジャスティスの作戦か……?
いや、そんなはずはないな。さすがに考えすぎだろ。
「ヤマト、お前がほんとに『聖者』なら、人を見殺しにはできないだろう? ましてや国王だ。どうだ?」
ジャスティスは、一体何を考えているんだ……?
「確かに、人は見殺しにしたくないけど、そいつは、国王は、俺の中で人じゃない。だから全然見殺しにできるけど」
もう相手にするのも、馬鹿馬鹿しい。
「な、なにを!? 貴様、いや、ヤマト殿、高貴な我を、人以上の存在だと敬う気持ちはわかる。
だがこの身は、不死ではないのだ。
だから大事にせねばならんのだ!」
はぁ?
ほんとに、何言ってんのこいつ?
……誰か黙らせて欲しい。
ていうか、もう付き合ってられん。俺が黙らそう。
俺は、『聖槍 カントウロウム槍』を使い、国王の足元に穴を作って、ジェイスーンともども落とした。
国王のいた場所は、本殿の入り口付近だったが、地下室があったようで、より深く落ちてしまった。
悲鳴を上げる間もなく落ちていたが、まぁ放置でいいだろう。
「な、お前!?」
なんだ?
ジャスティスが、ほんとに驚いている。
こいつ、まさかほんとに人質にしようと思っていたのか?
何か他の作戦があって、やっていたことじゃないのか?
こいつ、ほんとにバカなのか? いや、バカだった……。
「さぁ行くぞ、ジャスティス!」
俺は、聖剣を振り上げ斬りかかる。
もちろん単純に斬れるとは思っていない。牽制の為の初動だ。
ジャスティスは、瞬時に避けて、転がるようにして、落ちていた剣を掴んだ。
一般の兵士が使う普通の剣だが……
「大魔刃!」
ジャスティスがそう言うと、剣の周りに、薄赤のエネルギー……おそらく魔力が広がっていく。
そして、魔力の刃を形成した。
どうも、さっきの言葉は、発動真言だったようだ。
剣が、普通の剣である以上、剣の能力ではなく何らかのスキルを発動したのだろう。
やはり、さっき国王を人質に取ったのは、この為の時間稼ぎだったようだ。
それにしても、この剣の状態……見たことがある。
まるで『河童族』の『種族固有スキル』の『河童魔鬼』を発動し、剣を強化した状態みたいだ。
同じような性質の技だとすれば……ただの剣は、おそらくかなり高性能な、切れ味抜群の剣になっているはず。
初見だったらわからなかったが、同じような状態を見ているから、見当がつく。
聖剣でも多分対応できるが、ここはより強度な、切れ味抜群な『大剣者』で戦おう。
「大剣者!」
一言で、『大剣者』は瞬時に移動して、俺の手に収まった。
「よし、全力で行くか!」
「イエス、マスター。ただ、全力を出した場合、斬撃波が発生する可能性があります。
周辺被害防止のため、本気の一撃は、斬り上げるかたちで、空に向けて出したほうがいいと思われます」
「わかった。俺もそう思ってたよ」
俺はジャスティスに向けて、『大剣者』を構えた。
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