103.真の魔王への覚醒
どういう理屈かわからないが、ジャスティスは自分のスキルによって、ゾンビ化し、ゾンビの魔王となってしまった。
そのしぶとさに一瞬焦ったが、よくよく考えてみれば、ゾンビ……アンデッドは、『光の聖者』の『称号』を持ち、『光魔法』を使う俺にとっては、有利に戦える相手である。
ユーリシアと同様に、浄化の光で、永劫とも思える苦しみを与えてやる!
ジャスティスのように汚れきった魂の持ち主には、浄化の光は、もはや浄化ではないだろう。
魂を切り刻む破滅の光になるはずだ。
魂への拷問とも言えるだろうが、多くの人々の命を奪った罰としては、足りないぐらいだ。
「ヤマト、しぶとい奴め。だがもう終わりだ!
俺は、死を乗り越えて、不死となった!
魔王の力を手に入れただけでなく、死を超越したのだ!
我こそは、アンデッドの魔王だぁぁぁ!」
ジャスティスが、悦に入った顔をしている。
これで何度目か。
そしてこいつ、何言ってるんだ?
アンデッドの魔王だと……ただのゾンビじゃないか。
しかもこれから、俺に蹂躙される哀れなゾンビだ!
「マスター、ジャスティスは、『種族』が、『ゾンビ魔王(闇落魔王)』となっています。
『称号』にも、同様の表示があります。
更に、驚くことに、『職業』欄に、『魔王(闇落魔王)』と表示されています。
『職業』欄に表示されているという事は、真の魔王として覚醒したということです。
警戒が必要です。
真の魔王となったことで、魔王としての『職業固有スキル』が発生しているはずですが、それについては、うまく確認できません。
何らかの認識阻害効果が働いているようです」
『大剣者』の報告に、俺は一瞬固まった。
なんと、この状況で奴は、真の魔王として覚醒したのか!?
『大剣者』によれば、確認できないが真の魔王の固有のスキルがあるようだ。
前にクラウディアさんが言っていたが、真の勇者になると『称号』だけでなく、『職業』の欄にも、『勇者』と表示されるらしい。
そして、『勇者』としての『職業固有スキル』が現れて、使えるようになるということだった。
それと同じことが、魔王にも起きるのだろう。
ジャスティスが、真の魔王として覚醒してしまった以上、何らかの力を得たと思った方が良いだろう。
相性的には俺が有利と思っていたが、油断ならない状況になった。
覚醒したばかりの今のうちに、倒すしかない。
「ソーラーレイ!」
俺は、左手を突き出し、五本の指から『太陽光線』を発射する。
奴は、俺の連続発射したソーラーレイを、凄い速さで躱したが、最後には両腕に当たった。
というか、あいつ、敢えて両腕に受けて切断させたのか!?
瞬く間に、両腕を再生させた。
そして最初に切断されて腕と合わせて、合計三本の腕が宙に浮いている。
その三本の腕が、俺に対する攻撃を始めたが、すぐに『大剣者』が迎撃行動に移る。
三本の腕は、『大剣者』の動きに応じて、牽制するように動くだけで、適度な距離を維持している。
攻撃しようと、無理に突っ込んで来るわけではない。
意外と厄介だ。
——パチンッ
ん、ジャスティスが再生した腕で、指を鳴らした。
何かの技を出したのか?
……特に何も起きないが……。
…………いや、こいつ何をした!?
俺がさっき穴を掘って埋めた……俺的には避難させたつもりだった大臣や役人たちの呻き声のようなものが聞こえて来た。
「気づいたか?」
ジャスティスは、満足そうな笑みを浮かべると、穴の蓋になっている俺が作った土壁を叩き割った。
穴の中では……殺し合っている!?
変な動きができないように、膝や腰ぐらいまでを土砂で埋めて動けなくしてあったのだが、無理矢理動きながら、近くにいる者を殴ったり護身用の小刀で刺したりしている。
よく見ると……もう生きている者はいないようだ。
ゾンビ化しながら戦っている。
これは一体?
「ガッハハ、これが俺の、真の魔王の力だ!
悪意の解放……その者が持つ悪意や、今までの悪行による邪念を強化し暴走させる。
悪の種を植え付ける、いや、元々持っている悪の種を芽吹かせる!
それが『闇落魔王』たる俺の『職業固有スキル』、闇落ちへと誘う至高のスキル『闇落萌芽』だ! ガッハハ。
この国の中枢を担っていたこいつらは、かなり優秀だな。
初めて使うスキルだが、感覚的にわかる。
普通の人間が持っている悪意程度じゃ、こんなにすぐに殺し合う事はないんだがな。
並外れた悪意……マイナスの思念を持つ腐った奴らだったってことだな。
実に愉快だ、ガッハハ」
ジャスティスは、真の魔王となったことで、やはり新たなスキルを手に入れていた。
そして、饒舌だ。
すごい高揚感に包まれているのだろう。
悪意のエネルギーのようなものが、渦巻いているのがわかる。
ジャスティスの話が本当なら、殺し合ってゾンビ化した者たちは、皆それぞれに悪意というか、邪念、強いマイナスの思念を持っていたということだ。
まぁ俺の知っている王国の中枢の連中の実態からすれば、当然の結果なのかもしれない。
だがだからといって、ジャスティスが無差別に殺してもいいということにはならないが。
そして、殺し合いの動きがピタリと止まった。
おそらく悪意が暴走した勢いのままにゾンビ化した後も、攻撃し合っていたのだろう。
だが、ジャスティスの元々持っていた『固有スキル』で手駒になるようだ。
奴の思い通りにはさせない!
この穴から抜け出す前に、浄化する!
「光の洗礼!」
ゾンビ化した者たちに、『光の洗礼』を浴びせる。
「「「グギャァァァ」」」
「「「ギャァァァァ」」」
「「「ゴォォォォ」」」
皆、苦しみの声を上げている。
この者たちに対しても、浄化は拷問になってしまったようだ。
『闇落魔王』のスキルに、即座に、強く反応するほどの汚れを魂に持っていたのだからしょうがない。
この者たちの無能のせいで、多くの命が失われたのだから、ある意味、当然の罰とも言えるし。
それにしても……ユーリシアと同じように、この世のものとは思えない表情で苦しんでいる。
もともと持っていた悪意や邪念が、ジャスティスのスキルで強化されてしまったのだから、悪魔契約者であるユーリシアに近いくらいの汚れを魂に持ってしまったのかもしれない。
ん、ジャスティスが、片膝をついた。
どうやら、俺の放った『光の洗礼』の浄化の光流を少し浴びたらしい。
当然のことながら、奴にも抜群の効果だ。
「ジャスティス、次はお前の番だ! 償いの時だ!」
「バカめ! 俺は死を超越した、そして真の魔王になったのだ! お前ごときに何ができる!」
ジャスティスのその叫びには、もはや先程までの高揚感は無い。
俺の『光の洗礼』を浴びたことが、理解させたらしい。
……俺には勝てないと、聖なる光には勝てないと。
「さぁ、ジャスティス、震えて懺悔しろ!」
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