102.閃きとスキルを信じた賭け
「ガッハハ、お前の、その動く剣……すごいな。時を止めた俺の攻撃を防ぐとは。
だが二度目は無いぞ! ガッハハ。
だが……ゆっくり楽しむか。
死を怯えるお前の顔を見るのも悪くない、ガッハハ。
いやぁー、この魔剣は素晴らしい。
ジェイスーンというか、国王もたまには使えるなぁ。
ジェイスーンをいたぶった時、所持していた魔剣を確認しておいて良かったぜ。
こんなに使える剣だったとはな、ガッハハ。
こんなことなら、俺が勇者だった時に、貰っておくんだったぜ」
ジャスティスが、急に余裕の表情になった。
完全に俺を倒せると思って、饒舌になっている。
だが、オレも考える時間ができるからありがたい。
奴の口ぶりからして、ジェイスーンが持っていたのをたまたま目に留めて、性能を知っていたということか。
ある意味、奴の隠し球的な武器だったのか……。
ただ、ここまでの性能というのを知らなかった可能性もあるが。
それにしても、わずか一、二秒であっても時を止められるというのは厄介だ。
その間、俺は何もできない状態だからな。
対抗策が思い浮かばない……。
俺が攻撃をしかけても、瞬間移動のように避けられてしまうだろう。
その時に、カウンターのように返り討ちに遭う可能性が高い。
そう考えると、迂闊に動くことはできない。
まさに、動きを封じられた状態だ。
そして狩られるのを待つ、獲物みたいな状況になっている。
くそ!
どうにかしないと……集中だ……集中、集中……
……俺ができること……俺が持っているもの……俺のスキル……
……ん、これだ!
極限の集中の中で、一つの考えが閃いた。
それは、追い詰められた状況の中での、火事場の馬鹿力的なヤケクソのアイディアかもしれない。
でも、現時点での最善の対応策だと直感的が告げている。
止まった時の中で、攻撃を受けても、即死させられなければいい。
それで俺の勝ちだ。
何故かそんな自信に似た感情が、湧き上がってくる。
「おいジャスティス、ほんとにその魔剣で俺を倒せると思ってんのか? お前に俺を倒すことはできないぞ!」
俺は、敢えて挑発した。
「ガッハハ、お前……狂ったんだなぁ。
ふっ、つまらん奴だ。
恐怖に怯えないんじゃ、全く面白くない。
……もういい。
さっさとお前を殺して、俺の手駒にしてやろう。
ゾンビヤマト、ガッハハ、面白い!
思う存分、こき使ってやるぜ! 本当の奴隷にしてやる、ガッハハ」
何言ってんだ、こいつ。
完全に悦に入ってるが、まぁいい、好都合だ。
俺は、ジャスティスを手招きをする。
その仕草を見て、『北端魔境』での屈辱を思い出したのか、ジャスティスは、一転、不機嫌な顔になった。
俺を睨み付ける。
「バカめ、死ねヤマトォォォ」
——グサッ
「ぐぁ、ゲボッ、……」
ジャスティスが斬りかかってくる姿を見た次の瞬間には、俺の胸に奴の魔剣が刺さっていた。
時間を止められ、貫かれたようだ。
口から血も出て、呼吸も苦しい。
だが……俺は生きている。即死では無いのだ。
上手くいった。俺の勝ちだ!
「ガッハハ、終わりだ! お前の心臓を貫いた! さぁ死に顔を見せろ!」
「ぐうぅ、……残念だったな……ジャスティス。俺を即死させれなかった時点で、お前の負けだ!」
俺はそう言いながら、力を振り絞り、聖剣でジャスティスの胸を貫いた。
「ぐはっ、バカな……、なぜ……? 心臓を貫いているのに……」
「『大剣者』、 今だ!」
「イエス、マスター」
俺の合図とともに、『大剣者』が鞘から出て、大車輪のように回転して、俺の心臓に突き刺さっている魔剣を切断した。
抜群の切れ味で、俺の心臓への追加ダメージは無い。
俺は、左手で心臓に突き刺さった折れた剣先を抜きながら、自分に『光魔法——光の癒し手』をかけた。
……ふう。これで大丈夫だ。
もう俺が奴に負ける要素は無い。
なぜ俺が心臓を刺されて、生きていられたのか?
それは、自分自身に対して『固有スキル』の『献身』を発動していたからだ。
『献身』は、対象者の受けたダメージを半分肩代わりする。
つまり俺が受けたダメージを、俺自身が半分肩代わりしたということである。
自分の即死級のダメージを、自分が肩代わりすれば、半分のダメージで済む。つまり即死を免れる。
だが、その肩代わりした半分のダメージが、改めて自分に返ってくる。
普通なら、合わせて死に至るダメージになるわけだが、俺の『献身』スキルは、引き受けたダメージが俺のHPを超えても、HP1で踏みとどまれるのだ。
だから、結果として即死を免れたのである。
閃いたときには、自分でも訳がわからなかったが、俺はそれにかけた。そして勝ったのだ。
俺が刺された時に、HP1であることをジャスティスが気づき、追撃されていたら厳しかったが、もう大丈夫だ。
時間にしたら数秒の中でのことだから、奴にそんな余裕はなかった。
それに、追撃については、『大剣者』も警戒してくれていたし。
俺は、常に『小剣者』を装備しているので、『大剣者』と離れていても、敵に悟られないほどの小声で、連絡し合えるのだ。
第一の目標は、魔剣を破壊すること、そして第二の目標は、同時にジャスティスを倒すことだった。
最善の結果が出た。
俺と『大剣者』の連携の勝利だ。
……と思ったのだが……ん?
ジャスティスは、まだ死んでいないのか?
と思った瞬間、奴は大きく後方に飛び退いた。
なぜだ……心臓を貫いたのに……?
まさかこいつ……心臓も再生できるのか?
「マスター、どうやらジャスティスは、ゾンビになったようです。自分のスキル『死者蹂躙』を、自分に発動しゾンビ化したのでしょう」
『大剣者』が早速解析してくれたが……なんて事だ。
こいつも、咄嗟に自分に自分の『固有スキル』をかけたのか。
死者をゾンビ化して使役するというスキルのはずだが……自分が死んだのだから、そのスキルの効果も無くなって、ゾンビ化できないのではないかと思うが……。
どういう理屈で、ゾンビができたのか……?
魔王の理不尽の力なのか……?
まぁ今考えてもしょうがない。
現に奴は、ゾンビ化しているのだ。
魔王で、かつゾンビ、なんて厄介な……。
だが……やはりジャスティスは、バカだな。
良く考えてみれば、ゾンビ……アンデッドなんて、光の属性の魔法を使う俺に対しては、相性的に圧倒的に不利だろう。
しぶとさだけは認めるが、悪あがき程度のことでしかないな。
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