101.恐るべきジャスティスの成長と、恐るべき魔剣
俺は、魔王ジャスティスの右腕を切り落とし、奴は聖剣で斬られた痛みに悶絶している。
だが、かすかな違和感を感じた。
「ぐうぅ……しんでも、や、く、だて……」
ジャスティスが悶絶しながらも、何やら呟いた。
——おっと、危な!
斬り落とした奴の右腕が、剣を握ったまま、宙を動いて俺を斬りつけてきたのだ。
躱したが、危なかった。
もしかして……奴は、自分の斬り落とされた腕に、スキルを使ったのか?
自分の腕を死者と同じように、ゾンビ化したのか?
多分そうだろう。
そんな使い方ができるなんて……なんて奴だ。
「マスター、おそらくですが、ジャスティスは、今この状況で、自身の固有スキル『死者蹂躙』の新たな使い方を見出したようです。
新たな技コマンドを獲得した可能性もあります。
魔王化したジャスティスは、もともと強かった想念も強化されていると推測されるので、トドメを刺すまでは油断できません」
『大剣者』が、解析してくれた。
奴はこの局面でも、成長を続けているということか。
お! なんだ!? おいおいおいおい!
「ソーラーレイ」
俺は、慌ててジャスティスにソーラーレイを連射した。
だが悶絶していたはずのジャスティスは、今までには考えられない動きで避けた。
聖剣で受けた傷の痛みは、長く続くわけではないようだ。
そして奴は、俺が狙えないように大臣や上級役人たちを盾にした。
くそ!
俺が慌ててソーラーレイを発射したのには、理由がある。
奴の切断された右腕が、再生を始めていたからだ。
魔王になると、再生能力まであるようだ。
厄介な奴だ。
大臣ごと撃ち抜けば良かったが、どうしても咄嗟にブレーキがかかってしまう。
こんな国民を見捨てているような者たちを生かす価値はないのだが、生身の人間を見ると条件反射で一瞬ブレーキがかかってしまう。まだまだ俺は甘いようだ。
そしてこの隙に、奴の腕は再生してしまっている。
この大臣たち……怯えた顔で、助けを乞うような視線を俺に向けているが、はっきり言って邪魔でしかない。
だが、こいつらを肉の壁にしようと思っているジャスティスの目論見を潰す方法はある。
俺は、『大剣者』の『亜空間収納』から、『聖槍 カントウロウム槍』を取り出した。
そして素早く技を発動する——
「聖なる地層」
——バウンッ
——ドサッ、ザザザ
「「「うわ、ぎゃっ」」」
大臣たちがいる場所に、大穴を開けたのだ。
落下した大臣たちは悲鳴をあげているが、まぁ死んではいないだろう。
もちろんジャスティスは察知して、すぐに飛び退いて避難している。
だが別に関係ない。
ジャスティスへの攻撃ではないのだ。
ジャスティスが、肉の壁にしようとしていた者たちを、使用不能にする為のものだったのだから。
穴に落ちた大臣や役人たちが下手に動けないように、聖槍の力で、足元を固定する程度、土砂を埋め戻した。
そして素早く、『聖剣 カントローム』で巨大な土壁をだし、それを切断して落とし穴の蓋にした。
これで、大臣たちが利用されることも邪魔になることもない。
俺は、瞬く間に、この隔離措置をやってのけたのだ。
ジャスティスは、途中から俺の意図に気づいたようだが、無理に邪魔する事はなかった。
大臣たちを利用したのも、一時凌ぎであって、無理に阻止するほどの価値もなかったのだろう。
それと、先程聖剣に斬られて悶絶していたから、奴なりに慎重になっているのかもしれない。
まぁ慎重なジャスティスなど、俺の常識の中にはいないが、魔王化したことによって、奴も成長しているのかもしれない。
それを成長というのは、嫌な気持ちだが。
それから忘れていたが、国王と国王に剣を突きつけている勇者ジェイスーンだけは、離れた場所にいたので、落とし穴に落とすことができなかった。
まぁいいだろう。
「ジェイスーン、その剣を寄越せ!」
俺の視線に気づいたのか、ジャスティスが突然、ジェイスーンの剣を要求した。
そしてなぜかジェイスーンは、即座にジャスティスに剣を投げた。
「なんだ、あの剣は?」
あまり気にしていなかったが、投げられた剣を改めて見ると、変わった剣だ。
ソリのない真っ直ぐな剣で、意匠は刀に近い。
刃は普通に見えるが、反対側……峰の所がギザギザになっている。
ノコギリ状だ。
「マスター、魔剣です。これは……危機です! 全力でガードを! 後は私がなんとかします」
ん!?
『大剣者』がアナライズ結果の報告の途中で、危険を知らせた。
「もう遅い! 時を置け!」
ジャスティスが発動真言唱えた次の瞬間、俺は大きく後ろに吹っ飛び、浮遊していた『大剣者』が俺を庇ったようで、一緒に飛ばされている。
一体、何が起きたんだ?
「マスター、あの魔剣は危険です。
禁呪に属する魔術式が組み込まれています。
おそらく一秒程度でしょうが、時を止められるようです」
『大剣者』も無事で、解析結果を伝えてくれたが……
時を止める?
なんだそれは!?
そんな無茶苦茶な能力、ありなのか!?
でも『大剣者』が言うのだから、本当なのだろう。
気がつくと、弾き飛ばされていた理由がわかった。
そして『大剣者』が庇ってくれなければ、俺は即死していたかもしれない。
それにしても……『大剣者』は、この能力を予測して、俺を守ってくれたんだよな?
一体どうやったんだ?
止まった時の中で、動けたなんて事は無いよな?
軌道を予測したのか?
止められる時間が、ほんとに一秒ぐらいなら、複雑な動きはできなかっただろうから、『大剣者』が防げたのかもしれない。
だが今そんなことを考えていてもしょうがないし、『大剣者』に訊いている場合でもない。
対策を考えなければ。
一秒程度とは言え、止められている間は、俺は何もできないわけだからなぁ。
どうしたものか……。
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