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100.悪魔契約者に、最高の天罰を

「くそ、ゾンビ供集まれ!」


 ジャスティスは、ユーリシアとともに何が起きているのか薄々察したようだが、信じられないとばかりに、またスキルを発動した。


 …………。


 だが当然のことながら、何も起きない。


「おのれ、ヤマトォォォ!」


 ジャスティスが、俺を睨み付ける。


「昔のよしみで待ってやったんだけど、もう必要なさそうだなぁ。何も起きないし」


 俺の挑発に、ジャスティスの顔が怒りに染まる。


「死ね、ヤマトォォォ!」


「死ぬのは、お前だ!」


 俺は、ジャスティスよりも先に動き出す——


 聖剣を抜いて一閃……と思ったが、できない。


 奴は、思ったよりも冷静だ。

 近くにいた宰相を掴んで盾にした。


 俺的には、宰相ごと斬ってもよかったという気持ちもあるが、本能的にというか、とっさに剣を留めてしまったのだ。


 だがそれも一瞬のことで、盾になっている宰相を蹴飛ばし、ジャスティスに斬りかかった。


 ただ魔王化したからか、ジャスティスの動きは今までと段違いだった。


 瞬時のバックステップで、避けられてしまった。

 かなり距離が離れた。


 たが、別に構わない。

 というか、予定通りだ。

 俺の目的は別にある。


「う、な、何これは!? 離れない……」


 ユーリシアが不快そうな声を上げた。


 そう、俺の目的はユーリシアだ。


 前回の戦いの反省から、先にこいつを潰すべきだと判断したのだ。


 こいつの方が厄介だと思えるし、契約しているという悪魔の存在が不気味だ。


 ユーリシアは、体に巻きついた縄で動けなくなっている。


 俺は、先程目にした『河童族』戦士の標準装備品の『巻きひげ縄』を分けてもらっていたのだ。


 ジャスティスに斬りかかりながら、近くのユーリシアに向け、縄を放ったのである。

 目一杯の魔力を込めて。


 魔力を含んだ『巻きひげ縄』は、ユーリシアの身体に触れると同時に巻き付いて、締め上げている。


 いずれ拘束を解くだろうが、今すぐ斬り捨ててしまえばいい。


 だが、剣を振るおうと思ったタイミングで、俺は閃いた!


 閃きなのか、天からのアドバイスなのかわからないが、ここでの最善手……と直感的に感じるものをユーリシアにお見舞いする——


「光の洗礼!」


 俺は、『光魔法——光の洗礼』を放った。


 浄化の光の『光滴』を浴びせたのだ。


 ユーリシアの頭上の『光滴』が弾け、浄化の光流が滝のようにユーリシアを襲う。


「グギャァァァ、ぐわぁ、ぎぇぇぇぇ、グギィィィ、ひぃビェげぇ、タずけテェ、ギャァァァァ」


 ユーリシアは、この世のものとも思えないような悲鳴をあげる。


 今、ユーリシアの精神は、ボロボロにされているはずだ。

 悪魔契約者となる程に精神波動を落とし、悪魔との関係を構築している者が、この光の浄化を受ければ、ゾンビとして囚われている魂が浄化されるのとは、次元の違うようなことが起きているはずだ。

 直感的にわかるというか、今ユーリシアに起きていることがイメージできるのだ。スキル所持者だから、わかるのかもしれない。


 落ちきった波動、渦巻く怨念の波動と一体となった魂が、光の粒子で浄化されるわけだが、それは浄化なんて生易しいものではない。


 全身を切り刻まれているのと同じだろう。


 しかもそれは、物理的な攻撃とは違い、精神に対する攻撃のような状態になっているから、おそらく永遠とも思える時間に感じるはずだ。

 その尽きることがない浄化による苦痛に、精神は壊れるだろう。

 魂は残るかもしれないが、もはや抜け殻、そんな感じになるはずだ。


 これが、ユーリシアに対する一番の罰、そして契約している悪魔に対する攻撃になると直感が告げている。


 ユーリシアと繋がっている契約の悪魔もに、この影響が必ず及んでいるはずである。

 うまくすれば、姿を露わすかもしれないし、露わさなかったとしても、契約者を失い、大きなダメージを受けるはずだ。

 うまくすれば、当面の活動を封じられるかもしれない。


 その意味でも、最善の選択なのだ。


「グギャァァァ、どちて、どう、じて……」


 ユーリシアの悲鳴は続き、目から涙、鼻からは鼻水と鼻血、口からはヨダレを垂らし、この世のものとも思えない顔になっている。


 聖女とも言われた綺麗な顔は、跡形もない。

 この歪んだ顔は、彼女の魂を表しているかのようだ。


 この前の話からして、何らかの恨みを王国に持っているようだが、それを詮索する気にはならない。

 彼女なりの不遇な歴史や理由があるのかもしれないが、だからと言って、悪魔と契約して罪のない人々を蹂躙していいということにはならない。


 同情すべき点があったとしても、それは言い訳でしかないのだ。

 そういう環境の者が、皆悪魔契約者になるわけではない。


 今ユーリシアを襲っている魂を切り刻むような浄化の苦しみは、彼女が当然受けるべき罰なのだ。

 多くの命を奪ったのだから。


「ユーリシア! ヤマトォ、ユーリシアに何をした!?」 


 ジャスティスが激昂して、ユーリシアを助けようと動き出した。


 それもまた、俺の思うツボだ。


 ジャスティスが急に動きを止める。


 俺が密かに『聖剣 カントローム』の技コマンド『クレイパテ』で作っていた泥沼に、足を取られたのだ。


 今の奴なら、一瞬で抜けられるだろうが、わずかな時間動きが止まれば、それでいいのだ。


 ——ザンッ


 俺の一閃は、奴の剣を持つ右腕を斬り落とした。


「ぐおうぅ、グギィィィ、うう……」


 やはり聖剣は、魔王に特効があるようで、抜群の切れ味だし、斬られたジャスティスは悶絶している。


 だが、悶絶しているジャスティスから、少し違和感を感じる。


 何かをやろうとしてるのか……? 



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― 新着の感想 ―
[良い点] テンポが良くて文体も読みやすくスラスラと読み進んでしまいます。100話おめでとうございます!
[良い点]  早くも100話! [一言]  これでユーリシアがうっかり光堕ちして聖女化したら笑ってた。
[良い点] 100話おめでとうございます! ヤマト達の更なる活躍が楽しみです
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