第80話 大精霊の力
樹は中庭にシルフィルを引きっ連れて立っていた。
『来い、風の精霊たちよ』
樹の言葉により、空気中に漂っていた精霊たちが樹の管理下に置かれた。
「これが風の精霊たちか」
「感じることができました?」
「ああ、こんなにたくさんいるんだな」
「はい、この世界には数えきれないほどの精霊たちが常にいる状態になります」
『防御』
樹は風の精霊の力を利用した防御障壁を展開した。
「すごいな。断絶結界より性能いいんじゃないか……」
「おそらく、断絶結界と同等ほどでしょう。しかし、これは風魔法を完全無効化します」
風の精霊の加護を受けると、風の魔法は一切樹には通じないようだった。
「魔法を無効化か。これは使えそうだな。ほかにはどんなことができるんだ?」
「はい、風の精霊たちを集めて大規模な爆発を引き起こしたり、風魔法の威力が極端に高くなっていると思います」
「なるほど。どれ、やってみるか」
『風の精霊よ……』
「お待ちください旦那様」
セザールが慌てた様子で止めに入ってきた。
「そんなことをしたらこの屋敷が吹き飛んでしまいます」
「あ、忘れてた。すまんすまん」
「しっかりしてくださいよ。旦那様のお屋敷なのですから」
樹は新しい力に浮かれてここが屋敷の中庭だということをすっかり忘れていた。
「とりあえず、シルフィルの力は大体わかったな」
「はい、あとは実戦でお見せしましょう」
一通りのことを終えると樹たちは屋敷のリビングへと戻った。
「さて、そうなると、シルフィルの部屋も必要だよな。セザール、用意してくれるか?」
「かしこまりました」
「あ、それは無理です」
シルフィルが言った。
「え、無理って?」
「私は、マスターと契約してしまっているので、マスターから離れることはできないのです」
「え、それって具体的にはどのくらいなの?」
「マスターから50メートル以上離れるとマナの供給ができなくなり、この姿を維持できなくなります」
ということは、樹とシルフィルはずっと一緒にいないといけないということである。
「それって、意図的に精霊の姿に戻ることはできるの?」
「はい、できますよ。こんな感じに」
シルフィルはポンっと人型から精霊らしい小さな姿になった。
「こっちと人型だとどっちの方が楽なの?」
「人型ですかね。そっちのほうが慣れてるので」
「そうか。なら、部屋は俺の隣にしよう。まだ空いているよな」
「はい、空いておりますよ」
セザールが言った。
「えぇ、せっかく、マスターと同室になれると思ったのに」
美人精霊さんはなにやら不貞腐れているが、こんなに美人とずっと一緒なんてこっちの気が狂ってしまいそうになる。
「文句言わない。50メートル離れなければいいんだろ?」
「まあ、確かにそうなんですけど」
精霊さんはまだ不貞腐れている。
そんな美人精霊を仲間に加え、樹たちは次の悪に挑むことになるのであった。
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