第70話 遊女を身請け
屋敷から歩いて数十分。
遊郭へと到着した。
「ここの楼主に会いたいのだが」
樹は遊郭に入るとそう言った。
「私がここの楼主ですが」
そう言って現れたのは意外にも若い青年だった。
「鈴を身請けさせてもらいたい」
「そういう事でしたら、ここでは何ですので中の方にお入り下さい」
楼主に促され、樹は奥の部屋へと通された。
「身請けされたいとのことでしたが、身請けにはかなりの額が必要になるのはご存じですよね?」
「ああ、知っている。それを承知で頼んでいるんだからな」
「お見受けしたところあなたはまだお若い。失礼ですがそのような額がお支払いになられるので?」
お前に言われたくねぇよと言いたい所だが、ここは我慢する。
「綾瀬樹、王都に住んでいれば名前くらい聞いたことがあるだろう」
「あ、綾瀬……!? まさか……」
「ああ、そのまさかだよ」
「失礼いたしました。最強と名高い方のお顔も存じ上げなくて」
この頃になると、樹の顔は王都中に広がっていたのだが、まだ知らない人も居たようだ。
「ふう、俺もまだまだだな。それで、身請けはさせてもらえるのか?」
「はい。うちとしましては身請け金をお支払い頂けるのであればそれで構いません」
「分かった。頼む」
「しかし、鈴はうちでも指折りの遊女です。身請け金もそれなりになりますよ」
「構わない」
「分かりました。それでは、万鈴を連れて参ります」
そう言うと楼主は部屋を後にした。
「お待たせいたしました」
数分後、楼主は鈴を連れて部屋に戻ってきた。
「ああ、ありがとうな」
「こちら、鈴を身請けしてして下さる、樹さんだ」
「私を身請け……」
この時代、遊女にとって身請けが唯一の救いの道とされていた。
「身請け金なのですが、白金貨8枚でどうでしょうか?」
白金貨8枚となると約800万円ほどである。
「分かった。それで構わない。これでいいか?」
樹はこの時のために下ろしておいた白金貨8枚を楼主の前に置いた。
「い、一括ですか!?」
「なんだ、一括じゃダメなのか? 分割でちまちま払うのなんて面倒だろ」
「ま、まあ、そうですね。確かに身請け金を頂戴致しました」
「私の身請け金をこんなにあっさり出すお方が居るなんて……」
鈴は唖然としていた。
「鈴は今日から連れて帰ってもいいのか?」
「もちろんでございます。身請け金は頂いておりますから、何の問題もございません」
「そうか。じゃあ、帰ろうか」
樹はそう言うと鈴の手を取った。
「はい」
「鈴は本名はなんて言うんだ?」
屋敷に向かう途中、樹が尋ねた。
「はい。本名はアルマと申します」
「そうか、アルマか。いい名前だな。これからはアルマと呼ぶことにするよ」
「ありがとうございます」
「お、着いたぞここが俺の家だ」
なんやかんや話しているうちに樹とアルマは屋敷に到着した。
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