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第67話 誰がために戦う

 何もない休日、樹は中庭の芝生の上に寝転んでいた。


「お隣、いいかしら」


 ミアが樹の隣にちょこんと座った。


「ああ、構わないよ。今日はいい天気だな」

「ええ、そうですね。樹さんはいつもここに?」

「いや、たまたまだよ。天気いいし外で寝転んでたら眠くなっちゃってな」

「そうなんですね」


 そう言うとミアは空を眺めた。

雲一つない晴天である。


「ところで、俺に何か用があるんじゃないのか?」

「そうなんですけど……」


 ミアは少し言いよどんだ。


「そんなに聞きにくい事か?」

「いや、樹さんって強いですよね」

「ん、まぁ、世間的にはそう言われて居るな」

「誰の為に強さを求めて戦っているんですか?」


 ミアは俯きながらそう答えた。


「誰の為か……」

「はい、アリアさんにはお父様という存在、シャルさんには里の仇っていう理由があるじゃないですか」

「そうだね。でも、俺が戦うのにそんな大そうな理由は無いかもな」


 そう言うと樹は起き上がった。


「力がある人間が力が無い人間に手を差し伸べてやる。それって普通の事だと思うんだよな」


 樹はどこか悲しげな目をして空を見上げた。


「俺は昔、大切な人を通り魔に刺されたんだ。もし、俺があの時別の選択をしたらって今でも考えちまう。あの時俺に力があったらってな」

「そう、だったんですね……」

「悪い。湿っぽくなっちまったな」


 樹は苦笑いした。


「いえ、そんな事は」

「だから、俺が誰かの為に悪を切るのは罪滅ぼしみたいなもんなのかもな。カッコ悪いだろ」

「そんな事はないわよ。理由はどうあれ、貴方はどんな敵にも怯まないんだから」


 ミアが少しムキになって言った。


「ありがとうな。だからさ、アリアやシャルは凄いと思うんだよな。明確な目標があって」


 アリアは一度は冒険者の道を退いたが、尊敬する父を上回る冒険者になる事。

シャルは組織によって失われた故郷や仲間たちの仇を取ること。

と言う明確な目標があった。


「アリアも凄いプレッシャーだと思うんだ。最強女性冒険者なんて肩書は。シャルだって、あの小さな手で大きな敵に立ち向かう勇気がある」


 樹が2人をよく見てきたからこそ分かる事だ。


「俺にだって重いんだからな。英雄なんて肩書はさ」


 樹は儚げに笑った。


「それでも、樹さんはカッコいいです! 本当のヒーローだと思います!」


 そう言うとミアは顔を真っ赤にして走り去って行った。


「なんだったんだ、ありゃ」


 樹は独り言のように呟いた。


「樹さま、そのように思って下さっていたのですね……」

「うおっ、びっくりした」


 振り向くとアリアがそこに立っていた。


「恥ずかしい所聞かれちゃったかな」

「盗み聞きするつもりでは無かったのですが、樹様があまりに暑く語られていたので」

「ははは、本心を言ったまでさ。アリアもシャルも凄いと思ってるよ」

「ありがとうございます」

「これからもよろしく頼むな」

「はい! お任せを」


 こうして二人の異世界世直しは続いていくのであった。

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