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そらのそこのくにせかいのおわり(改変版)3.9 < chapter.12 >

 四回目、五回目、六回目と回を重ねるごとに、分かってきたことがあった。それは、何をどうしても『あの男』とは出会ってしまうということだ。

 ランディ・ヤンを殺せば世界はリセットされる。ならば、彼の仲間を殺した場合はどうだろう。『彼一人』が特別な存在なのか、『彼ら』がそうなのか、確かめたくなった。

 私は手始めに、特務部隊の連中から殺して回った。


 アレックス・ブルックリン

 ポール・イースター

 チョコレートシロップ・カカオシード

 レイン・クロフォード

 トニー・ウォン

 ハンク・J・ゼッツ


 この辺りは楽に殺せた。でも、何も起こらなかった。それならば、と狙ったガルボナード・ゴヤで、ようやく『面白い結果』にたどり着いた。

 私はガルボナード・ゴヤを殺した。確かに氷の刃で切り裂いたはずだった。けれども彼は蘇った。ほんの数秒で全ての傷を完治させ、どういうわけか、魔力も戦闘力も向上していた。

 しかし、彼の魔法属性で私に傷を負わせることはできない。

 何百体と召喚される死者の群れ。それらをすべて凍結させ、私は彼をもう一度殺した。


 するとどうだろう。彼はまたも生き返ってしまった。


 私は楽しくなって、もう一度殺した。けれども、今度は生き返ってくれなかった。命のスペアは二つしかなかったようだ。

 蘇生後の人格はガルボナード・ゴヤとは明らかに異なっていて、それぞれ『アスラン』『シュラト』と名乗っていた。そのうち『シュラト』のほうが、興味深いことを教えてくれた。

「シアンの仲間を殺して回っていると言ったな? 復讐か? 君とシアンの間に何があった?」

「何も。ただ、あいつを殺すと世界がリセットされるんだ。だから他の人間ならどうかな、って」

「たったそれだけの理由で……? 君はいったい、これまでにいくつの命を奪った?」

「そこいらの支部の下っ端騎士団員の数、全部カウントしたほうがいい? 余裕で三桁行っちゃうよ?」

「……君は、何だ? 私のほかに『修羅の王』が現生しているとでもいうのか……?」

「しゅらの……なんだって?」

「なぜ『せかいのおわり』が発生するか、君は理由を知っているのか?」

「……せかいのおわり?」

「運命はすでに決まっている。それに反する事象が発生した場合、世界は強制停止し、問題が発生していなかった時点からリスタートする。君の言う『リセット』とはそれだ。君は何かの拍子に強制停止の発生条件を見つけてしまったのかもしれないが、それは君の人生をやり直すための『リセット』ではない。まったく別の事象に関して行われているはずだ。こんなことはもうやめなさい。この因果は、必ず君に応報する」

「それ、命乞いのつもりか?」

「やめる気は無いのだな?」

「つべこべうるせえよ。バーカ」

 そのまま殺してしまったから、それ以上の会話はしていない。けれども今なら、彼の言葉の意味が分かる。何度も人生をやり直しているうちに、拾い集めた断片情報が徐々に形を成してきた。


 君の人生をやり直すための『リセット』ではない。

 この因果は、必ず君に応報する。


 まさにその通りだと思った。

 これはグレンデル・グラスファイアの人生でも、ヘーゼル・グラスファイアの人生でもない。もはや別物と化した何者かの、ループすることでしか成立しない『奇妙な人生』の一幕である。

 三回目の人生で遭遇した貴族のボンボンは、ついこの間ゾンビゴーレムにした、あの貴族の息子だ。今は母親と二人、このサザンビーチの別荘に監禁してある。一筋の光も差さない暗闇の中で何日間正気を保っていられるか、薬物なしでも憑依可能な状態まで心を壊せるか、復讐のついでに実験中だ。

 一回目、二回目で私に危害を加えた連中も、既に幾人かは始末している。最本命のアンヌは残念ながら自滅してしまったが、二回目の人生で私を玩具にしたあの男は、見つけ次第始末する予定である。


 因果は応報する。


 ならばそれは、私以外の、他の人間たちにも等しく訪れるべき事象だろう。

 そう、私にはまだ、復讐すべき人間がいくらでもいるのだから。

「……シアンを殺すのは、もう少し先でいいかな。なんだかちょっと、面白くなってきたし……ね」

 土産に持たされた袋の中身は、サザンビーチ土産のド定番、『サーフボードクッキー』だった。土産用に量産された安っぽくて粉っぽいクッキーが、どういうわけか、今はとても美味しそうに見えた。

 地下室から漏れ聞こえる哀れなすすり泣きに耳を傾けながら、私はお茶の支度をした。

 今夜のティータイムは、いつにもまして、素敵な時間になりそうだ。


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