そらのそこのくにせかいのおわり(改変版)3.9 < chapter.11 >
戻された世界は、先ほどの時刻よりほんの少し前の時点だった。
海沿いの道を三人で歩いている。まだグラスファイアと交戦状態になく、アズールの母の写真も見せていない。
ラピスラズリはターコイズに視線を送るが、ターコイズはその視線を『どちらが声をかける?』という問いかけだと思ったらしい。
ターコイズは時間停止があったことに気付いていない。タイミングを計り、グラスファイアに声をかけた。
「グラスファイア。お前にもう一つ、知らせておくべきことがある」
グラスファイアは足を止めた。
街頭の下で、振り向くことはせずにこう返す。
「なんだよ。もうこれ以上、何があるって?」
「この間の屋敷で、お前が気絶させた長髪の男のことだ。あれはお前の従兄だ」
「……嘘だろ?」
「これが証拠だ。見ろ」
「……」
振り向いたグラスファイアの顔には、何の表情も無かった。時間停止があったことを覚えているのか、いないのか。その表情から窺い知ることはできなかった。
無表情のまま、両の目から、涙が滂沱と頬を伝う。
「……どういうことだ? なんで、騎士団が母さんの写真を……?」
本当に驚いているのか、それともこちらの様子を見るための演技なのか。
ラピスラズリは警戒しつつ、ターコイズの説明を聞く。
「残念だが、この写真に写っているのはお前の母ではない。お前の母親の、双子の妹だ」
「……母さんの、妹……?」
「ラ・パチュカには『双子は不吉』という言い伝えがあった。その言い伝えに従い、双子の妹のほうは、隣町の夫婦に預けられた。それがうちの隊員の母親だ」
「……母さんも、双子だったのか……?」
「そうだ。お前とあの長髪の隊員は、血縁上は従兄弟同士ということになる」
「……いまさらそんなこと知らされて、どうしろってんだよ……」
「足を洗え」
「……」
「難しいことだとは思うが、不可能ではない。騎士団に協力してくれるのなら、顔を変えることも、別人として生きることも協力しよう。お前がその顔と名前で悪事を重ねることで、お前の親類が命を狙われるかもしれないんだ。わかるだろう?」
「……いまさらすぎるぜ。そんな話は」
「すぐに答えを出せとは言わない。その気になったら、いつでも連絡をくれ。俺たちは必ず、お前を迎えに行く」
「……マジでクソじゃねえか、畜生。仲間を売って、騎士団の犬になれってのか……」
「強制はしないさ。それじゃあな」
ターコイズは写真を仕舞い、通りを渡って駅のほうへと消えていく。
それに続くラピスラズリはグラスファイアを振り返り、こう言った。
「またな!」
友達のように気安く振られた手に、グラスファイアは眉を寄せた。だが、それだけだ。戦闘にはならなかったのは、声をかけた人間がターコイズだったせいか、それとも『もう一人のラピスラズリ』を警戒してのことか。ラピスラズリがそれを判別することはできなかった。
ポツンとひとり、街灯の下に取り残されたグラスファイア。その手には、アレクサンデルに持たされた土産の袋が握りしめられていた。




