2:契約
本日2話目です。
ウソツキ…1話1000くらいっていったくせに
注意:今話から今作品は残酷な描写が多数出現します!そういう描写に抵抗のある方は
ブラウザバックする事をお勧めします
「-襲しろ!何とし―!―たらただ―!」
「ざけるなぁ!俺た―がてめ―――!!」
「――私達を―」
「―品な客―――したつも―」
ジャジャジャジャ…!
キィイイイビビジジジジジ!
少女に押されるように出た扉の先で何かが射出される音、
魔術に魔法の反応音が交差している。
自然と場の空気に高揚させられ、気が浮き立ちそうになるのを抑えながら周囲を確認した。
見回した所船の上か。砲撃の嵐を展開されたが透明のガラスみたいな障壁が船全体を包んでいる。
それだけじゃなくワイヤーみたいな細く固い複数の糸がこちらの船から伸び、
向こうにある船を解体しようと潜り込んでいる?
蜘蛛か何かでも飼っているのかよ…
ただ、そのせいでオレはある事実を見てしまった。
海がない。
水が流れる道みたいなのは見えるが今はそれを気にしている時じゃなさそうだ。
さっきの声は上から聞こえた。なら
ダカダカダカダカダカ…!
オレは右腕を上げて無造作に腕にとって付けた兵器に撃ち出す思惟を送り込む。
見た感じ籠手に取り付けられたそれは何かを撃ち出すような兵器だった。
しかも、オレは頭の中身をいじられたようにその使い方を識っている。
気味の悪さより今は何とかしなければという方へ思考を逃避させ、実行する。
それだけで妙な縦長の箱に搭載されていた鉛玉はオレの考え通り帆の上へ飛び移ろうとしていた賊のような男どもが墜落してくる。
特定範囲を指定しての威嚇射撃。にしては随分命中したな?
冷静にそう考えながら
シャコン…
射出兵器の横合いからとれた弾倉が抜ける。
腰についていた弾倉も同じような形なのを確認して…お、はまったはまった。
やっぱり腰回りについてたこいつが弾の入った弾倉なわけね。
にしても―オレは墜落してきたおっさん共を見下ろす。いや、おっさんじゃないな。
20いってない奴もいるけどだいたいはおっさんか。どうやら落下した衝撃とかには耐えたあたり訓練されてたようだが。
「おいおい、高々鉛玉当てただけだろ?根性ねえのなあ」
「貴様ぁ…」
「誰か、とかは聞く気ねーから。テメエの選択でその結果っしょ?おつおつー」
と顔蹴飛ばしたら簡単に首が回っちまったい。
これで立ってきたらゾンビ確定だが、そうでもないらしい。
まあいきなりそういうのと準備無しで戦闘とかの縛りもあるだろうな。場合によるけど。
「隊長!?貴様よくも!!!」
「はぁ?見てくれどう見ても襲う一歩手前だったあんちゃんに何か言われる筋ってある?」
「黙れ愚民が!!
貴様が呼ばれた天上なる場所がその相応しさも知ら「知ってもブヒブヒ言うしか脳忘れてそーな豚のケツが今日も元気そうだなーオイ?
あれ分かんない?おめーらの事言ったんだよ」…」
開いた口が塞がらないというかのような兵士に「何だよ家畜以下かよ訓練されてねえ」と
畳みかけるように煽りながらオレは口にする。
「少なくとも年端いってるか分からねえ小娘相手に剣無常に振り上げるみっともねえ大人なんざ知るかよ」
降りてきた大半は年端いっているかも分からない少女達が大半。
…幼女趣味か?
こいつらと思っていたが例外が艦の先端にいる。…があれは幻だと思いたい。
しかし、オレの希望は裏切られる。
「いやはや、その通りさね」
キェアアアアアアアアアアアアシャベッタァァアアアアアアアアアア!
嘘だと言ってよ現実ぅ!!!何あれぇえええ!
と卒倒しそうな心を奮い立たせながら顔を真顔の鉄面皮にして艦先端のそれに視線を向ける。
ヤベエ…股間のモノの気配はあるから何か今にも漏れそうです、何故って?
目の前にエルフみたいな特徴を持った人の2倍近い大きさがある肉ダルマがいりゃあね、
そりゃあ何かの幻かオレの視界がおかしくなったか疑うだろ常識的に考えて…
それがねえ、ついさっき軽い感じで兵を複数乗せていた見た感じ強襲降下艇を斜め上空にいた鉄の船に投げ飛ばしてたんだよ…
そんな肉ダルマがワイルドな笑みを浮かべてオレのご主人に話しかける。
「良かったじゃないかい、当たりみたいだね?」
オレが脳内で現実という者と格闘している間に肉ダルマの言葉。
しかしなぜか反応が芳しくなく「ふん…」とご主人は不機嫌に目をそらす。
何だ?この空気。うちのご主人とこの肉ダルマ…も含む複数の少女達は距離がある?
オレは無難に尋ねる。
「ええと、マドモアゼル…」
「あんれまぁ!そんな借りてきた猫みたいに警戒されながらもアタイに向けて紳士な発現できたのはユキくらいなもんだよ。
本当にいい子じゃないかい。今晩はうまい飯たんと分けたげるかんね。期待しとくれよ」
そういいながら軽くごみを投げるように空の彼方へ鎧着た兵士を球遊びみたいに投げないで下さい。
あれ、オレの未来じゃないよね…
そんなこっちの気持ちはお構いなしに「さてと」と言いながら世界一でかそうなオカミさんは親指で
解体されていない方の艦を指さす。
もう1つの艦はこちらから伸ばしていた糸が既に1隻解体していた。
墜ちる人影とかの残骸?考えたくねえし、今は話聞くのが先。
「丁度いい機会じゃないかい。あの旗、お前さん追い出した奴らの国旗だろう?」
ご主人に向けて肉ダルマが言う。
…そういう事かよ。オレの顔から軽く熱が消える。
場合によっては優先順位は【ご主人が一番】だ。
ただ、そんなオレの空気を読み取ったのか肉ダルマが呵々と豪快に笑いながら口にする。
「元より身寄り無い所帯さね、そっちの騎士さんと共同作業でもすりゃ気も晴れんかい?」
「だろうな、略式な事を戦場でやるというのもまたおとぎ話にありそうな展開というものだ。
それを間近で見れるというのも面白そうだ」
「あ、オタクは敵じゃないのね」
イケメンずりぃ。もげればいいのにと思ったが即座に撤回。
次の言い分が気に入ったのだわ。
「戦場で女に殺されるなら本望ともさ」
「ほんそれ!」
一応飄々といつもの調子で受け答えしながらやや斜め上に陣取ったご主人の国の旗を下げているらしい艦を見上げる。
ご主人も何かをこらえたように見上げていた。あれをオレ等だけで壊せと?
と思っている間にオレの手にそっとご主人の両手が添えられる。
こちを見上げるご主人の目があの日食糧を目の前に置いた時の妹と弟の目と重なる。
どこにも行かないで。
オレは振り切るのに…慣れてしまった。
けど今はそんなの気にしてられない。彼女は今【たった一人】なんだろう。
そして彼女の手には何か刀身の無い剣の塚だけの道具が手にされている。
…しばし考えた末オレは跪く。
恐らくそれで会っているはずだ。先程まで、否、今も砲弾戦が続く戦闘艦の上で執り行われる儀式。
オレの肩に塚が置かれ、彼女の願いが紡がれる。
「この、エクリア・灯螺を霊契約の主と認め忠誠を誓うか。…あたし達を護って」
「仰せのままに我が主」
立ち上がる。というよりは立ち上がられた。塚を2人がかりで持たされる。
オレは主人を裏切れない理由があった。
意識がこの鎧から視覚が開けた瞬間からオレとエクリアの間には魔力の【道】があった。
そしてその魔力の【道】の色―というよりは何色にもなそうな純粋な思惟は一時オレの小さな人生も呑み込みそうな程の輝きを持っていた。
そしてまた、それが繋がる感覚が襲ってくる。
つい先ほどまで少し距離を置いていたから微量だったものがオレの肉体さえ調製器とし塚へと魔力を溢れさせる。
その日2人で作り出した塚から生まれ出た
巨大な全てを隔離する虹色の刃を
オレは忘れない。
それはいとも容易く宙に浮いていた巨大な艦を両断し、飲み込んだ。
*
その日召喚論理に1つの機能が追加されるとともに。
闇に潜む多くはほくそ笑み
天にあるものは黄昏た。
追放された者達の特殊部隊を中心に世界の一部が震撼する日は
もう遠くない。
明日の10時に3話目投稿です。感想やブックマーク、評価お待ちしてます