護り人
スコーピオン519号。
私の名前だ。
産まれは地球、育ちは宇宙。
今の住まいは小惑星の見た目の宇宙船が住処。
定員は350万人。
乗務員は1名。
地球がすでに死に体となっているのがわかったのは21世紀も中ごろになってからだった。
そのころには月面にも基地を設け、資源を地球へと動かしているところだった。
だが、地球はあまりにも増えすぎた人口を支えることができなくなりつつあった。
そのため、星系外に植民をするということを考えた。
船は複数造られ、目標とされたのは、それぞれの船で1つの恒星である。
その恒星ができないと判断された場合、次の恒星を、その場で選択することとなる。
私には、その全権が与えられている。
そして最大の問題は、どうやってそこまで安全かつ生命を維持したままで輸送するかという問題であった。
そこで問題となるのは、人間を生かして運ぶ方法である。
ある教授がそれについての最大の回答を与えた。
今、私が運営している船は、大きさと言えば、小惑星であるが、それでも直径2キロメートルあるかどうかといったところだ。
そこにどうやって350万人を収容しているかというと、実は精子と卵子としてである。
熱供給が不要なロボットである私だからこそ、生命維持が不要となり、発電をしつつ、スラスターや諸々のエンジンを使って冷凍装置を維持する。
今、私に与えられた役割は、350万の組み合わせを有する受精卵、そしてその揺蕩うゆりかごである小惑星、これらをさそり座の方向にある目標となる恒星へと、安全に動かすことだ。
地球を離れてすでに10万年。
どうなったかはもうわからない。
だから私は未来を見据えて今日も船を動かしていかなければならない。
引き返しても、きっと誰も覚えていないからだ。