夕陽
「ほら、リリーだ」
「帰って来た」
二匹のネズミたちは窓のふちに立ち、外を眺めながら言った。
「リリーはよく働くなあ」
「うん、よく、働く」
ノボルがいなくなって、一ヶ月。雪も完全に溶けて無くなり、温かい日が多くなった。
リリーは朝寝坊を止め、毎日畑に行く。
もう、一人でいることにも慣れ、それが当たり前になった。
「あいつがいなくなって、しばらくはしょんぼりしていたけどね」
「うん。でも、もう大丈夫だ」
二匹のネズミは顔を合わせて微笑み合った。
「でも、時々、オセロ盤を見て、ため息なんかつく」
「そりゃあ、少しは寂しいだろうよ」
「でも、リリーは独りで生きる方が好きなんだ」
「うん、うん」
クフフフッ、と二匹は笑った。
「ただいま」
リリーが元気よくドアを開け、ふう~とため息をついてから、冷蔵庫を覗く。
「ああ、何にもないな」
ペットボトルの水を飲みながら言う。
明日は町へ行こう。おいしい物を沢山買おう。ミキちゃんのうどん屋で何を食べようかな。ちょっと奮発して、天ぷらうどんを食べようかな。リリーはそんなことを考えて、わくわくした。
一切れ残っていたチーズをかじる。
ノボルもチーズをよく食べたなあと思い出す。
今、ノボルが隣にいてくれたらどんなだろう。
素早い動きの優しい忍者。
プププーとリリーはこらえきれず、笑った。
ノボルが忍者の格好で、走りながら手裏剣を投げる姿を想像してしまったから。
元気で頑張っているんだろうな。
リリーは笑いながら、缶ビールのプルトップを開けた。
「ごきげんだね」
「うん、ごきげんだ」
窓枠から下に降りて、ネズミたちが言った。
「少しやせたけど、リリー綺麗になった」
「そう、リリーに言ってやれよ。喜ぶぞ」
「人間の姿じゃ、俺たちの声は聞こえないんだ」
「ああ、そうだった。だったら仕方がない」
「うん、仕方がない」
アハハハハッ、と二匹は笑いながら追いかけっこするみたいに、家の中を走りまわった。「あらあ、チュウチュウたち」
ネズミに気付いた、リリーがにこやかに言う。
「ピーナッツ、あげる」
戸棚に入っていた瓶から、ピーナッツを二つ取り出して、手の平に乗せ、差し出す。
「チュー、チュー」
ネズミたちはピーナッツをくわえると、戸棚の後ろに走り去った。
フフフフッ、とリリーは楽しそうに笑った。
夕日が温かく、リリーの家を包んでいた。
完
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