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イノシシ!? リリーさん  作者: カワラヒワ
14/16

足跡



次の日の朝。

リリーは満ち足りた眠りから目を覚ました。

 外はすっかり明るくなっている。

 こんなに遅くまでぐっすり眠ったのは、久しぶりのような気がした。

 ここ数日は、ノボルのことが気になって、朝寝坊ができなかった。今朝は昨日みたいにノボルも起こしに来なかったし。

 けれど、まだしばらくは、ノボルもこのままの状態が続きそうだし、今朝は何も気にしないで、熟睡した。


 うう~ん、とリリーは布団の中で体を伸ばした。

 もう少し、布団の中にいたいと思ったけれど、いつまでもそうもいかないので、思い切って体を起こす。

 昨日はあれから、雪合戦しょうなんて、ノボルは言わなかったから、雪合戦をしなかった。けれど、今日、また誘ってきたらしてあげてもいいなあと考えていた。

 時計を見ると十一時半だった。

 いつものように耳をすまして、ノボルの気配をうかがう。

 何の物音もしない。

 静かに本でも読んでいるのだろうか。


 オセロをしょうとこっちから誘ってあげたら喜ぶだろうな。今日はゆっくりと相手をしてあげよう。ノボルが勝つまで付き合ってあげてもいい。リリーは思った。

 リリーは布団から出て、服を着替えた。

 リビングに行く。電気もテレビもついていない。

 ずっと、だれもいなかったように、その部屋は冷たく静まり返っていた。

 キッチンも同様に、しんとしている。

 コンロの上に鍋があったので蓋を開けてみる。ホワイトシチューの甘い香りがただよった。


 ノボルは毎朝、リリーのために温かいスープや味噌汁を作ってくれているのだ。

「おいしそう」

 リリーは一人つぶやいた。

 ノボルの部屋を覗いてみる。ここにもノボルはいない。綺麗に整頓されたベッドがぽつりとあるだけで、ノボルのカバンも見当たらない。

 トイレをノックしてみる。返事はない。

 玄関を見に行くと、ノボルの靴はなかった。

「ノボルさん」

 小さな声で言ってみる。

 ドアを開けると、真っ白な雪景色だった。


足跡が玄関からずっと先まで続いている。ノボルの足跡だ。町の方角に向いている。

(ああ、なんだ、そういうことか)

 リリーはほっとした。

(町へ買い物に行ったのね。あたしがグーグー寝ている間に、チョコとかシュークリームとか、あたしが好きな何かおいしい物を買ってきて、あたしを驚かすつもりね)

 この前にもそんなことが一度あった。リリーが眠っている間に町へ買い物に行ったことが。その日はクリスマスだった。ノボルはケーキとシャンペンを買ってきてくれたのだった。

(あたしをびっくりさせて、喜ばせるつもりね。きっとそう)

 ヒュ~と冷たい風が家の中に入ってきた。

 リリーは慌ててドアを閉める。外は寒いなとリリーは思った。


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