日常
空は灰色に染まり、湿った空気は流れ、雨は今にも降りそうだった。
それでも、オレはいつものように本を読みながら登校していた。
オレは小学生から今に至るまで、ずっと本を読みながら登校していて、もう癖となっていた。
傍から見れば、『ガリ勉』『カッコつけ』『何、キャラ作ってのん?』『厨二病オツ』とか思われているかもしれない、いや、言われたことあるか……。
とにかく、オレは本が好きだった。だから、登校する時、オレの手には本があった。
まぁ、歩いてる時にどこを向いていたら良いのかわからないとか、寂しさを紛らわすため、とかそんなお粗末な理由もあったけど。
本が好きなのは確かである。
その証拠に、今読んでいる『人間失格』は10回以上も読んでいるのに、未だかつて飽きたという感情を抱いた事はない。毎回読むたびに、体から湧き上がる熱は、きっと本物であり感動である。
オレは本を深く味わえる人間なのである。
「あ」
不意にポツポツと雨が振りだした。
めんどくせぇー。
オレは、少し濡れた本をカバンにしまう。傘のないオレにとって、雨との相性は最悪である。早く学校に行くか。
そう思い、オレは雨から逃げるように、地面を蹴り出した。
多分、この時までが普通だった。
普通というか、日常がいつも通りに起きているだけであった。
この後からだ、この後からおかしくなったんだ。
オレも人々も世界も全部。