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第6話「誰も私を責めることはできない」(前編中)




出雲ツマ国、防州すわの山口館。

先着したエミリーは出雲王に御目見えする機会を得た。


「畿内は壊滅したと思ったんじゃが…。

 兵庫頭の働き、見事なものじゃのう。」


「殿は東から、出雲王様が西から安芸を攻めれば夷軍に致命の打撃を与えられます。

 どうか、御力をお貸しください。」


出雲王はエミリーに快い返事をします。


「むしろ、こちらが頼みたいところじゃったけえ。

 吉備国はずっと日和見を決め込んで負ったからのう。

 …まあ、分からんでもないが。」


アゴを撫でながら出雲王は意味深な表情で顔を伏せます。

エミリーも目を伏せて声を低くして言います。


「夷軍は中国大陸までの邪魔な大和軍を蹴散らして進んでいます。

 吉備国には用がない訳ですから、大和への不満も合わせて考えれば、彼らが厭戦的になるのも分からないことではありません。」


「ふん。

 じゃが、早い話が露骨過ぎたのう。」


出雲王は吐き捨てるように言いました。

また、こう続けて話します。


「下手過ぎじゃ、ド下手じゃ。

 北条や帝が優しすぎるんよ。

 非協力的な態度を理由に成敗しても構わんだろうにのう。」


「それは我が殿が…。」


「ほう。」


出雲王が少し驚いた様子でエミリーを見ます。

エミリーが答えました。


「腰抜けの裏切り者は、敵より先に殺せ。

 それが我が誇り高いヴァイキングの習い…。

 大和の武士に押し付けるのは、少々、悩みましたが。」


「うーむ…。

 手順を間違えば危ういのう。」


やおら出雲王がエミリーに、のそっと近づきます。

身体を近づけ、彼女の眼を見つめました。


「しかし兵庫頭は、美しい家来を持っとるのう。」


「ふふふ…。

 恥をかく前に止めておいた方が御身のためにござるぞ。」


そう言ってエミリーは強く出ました。

最初から冗談だったのか、怖気づいたのか出雲王は名残惜しそうに彼女から離れます。


「ふっはは、怖いのう。

 まあ、いつ兵庫頭のもとに戻っても良いが、いつまで居っても構わんけえ。

 ほうじゃの。」


エミリーは出雲王と別れると対面の間から出て、廊下から中庭に飛び降りました。

そのまま庭を歩き、別の渡り廊下に上がり、またその反対側へ。

そんな調子で山口館の中を進むと一つの屋敷に侵入します。


「ひあああっ!」

「何者でおじゃる!?」


屋敷の中には重ね衣を来た若い女たちがつまらん手遊びをしていたところのようです。

エミリーはズカズカとその中に入って行くと声を上げます。


「おっと、騒ぐなよッ。」


素早く腰のウルフバートを抜くと床に突き立てます。

女たちは青くなって縮み上がりました。


「い、命ばかりはお助けを…。」


「婆さんに用はないよ。

 おい、他の若い娘はどこにいるんだい?」


短剣を突き付けられた若い女はカチカチと歯を鳴らして何も答えません。

エミリーは訳もなく女の服をはだけると乳房を無造作に掴みます。


「あッ、あああーッ。

 肉の詰まった良い乳してやがるねえ。

 肌もスベスベで良いじゃないか。」


「あひィ。」


ここは出雲王の大奥ハーレムでしょう。

しかし、住んでいるのは側室ばかりではありません。

娘である王女たちも暮らしているはずです。


「まあ、いいか。

 ちょっと遊ばせて貰うよ?」


「お助けぇ…。」


エミリーは今度は女の衣の尻をめくり、邪魔なかさねで相手の顔を覆いました。

今の娘の姿は、まさに頭隠して尻隠さずです。


白くて形の綺麗な尻が姿を見せます。

ただ、エミリーとしては小さいのが気に入らないようです。


「はん。」


ガキっぽい尻だ。

そう鼻で笑うと手を振り上げ、パチンと女の尻をぶっ叩きます。

冗談では済まない、手加減の無い叩き方です。


「ーッ!」


衣の下で女が声を殺して泣きます。

その様子にエミリーは刺激を感じ、ますます興奮しているのか気持ちが高ぶります。

何度も尻をち、激しく痛めつけます。


今度は乳房の下に手を回し、ふるふると揺らし、乳首を口に咥えます。

だんだんと乳房が硬くなり、興奮で肌がほんのりと赤らみ、山のように尖りました。

エミリーはそれを満足げに見下ろしながら、恥ずかしそうに目を伏せる女の顔を見て微笑みます。


「良いわね?」


エミリーが強要すると女は、こくんと黙って頷きました。


そのまま出雲王の側室を何人もてあそぶと、エミリーは朝には満足して帰って行きました。

女たちは誰に何と打ち明けて良いのか分からず、この件は黙っていました。


その間、別な場所ではエミリーの部下の海兵たちが大暴れしています。

普段は背筋の凍るような恐ろしい”お頭”の言いつけで行儀良くしていますが、今は野に放たれた野獣です。


酒場や賭場に姿を見せると酒を浴び、殴り合いを始めます。

女も男も買い、夜通しで並べて犯し続けました。


「命の洗濯だぜえ。」

「ああ、海が好きー!」

「畜生、あの賭場の連中、ぶち殺してやる。」


すっかり海賊に戻った連中が潜水艦に消えて行きます。


「岡山城?」


海賊、もとい海兵の一人が女忍者、風魔の三夜みかづきから報告を受けます。


「くっくっく…。

 確かにお伝えしました。」


三夜はそれだけ伝えると影の中に溶けて消えて行きました。

海兵は、相変わらず気味の悪い女だ、と顔をしかめます。


出港した潜水艦は沖で他の潜水艦や船団と合流します。

久能には伏せていましたが、まだまだ手下と言うか、仲間がいるのです。


「血が見たいな。」


誰かがそんな剣呑なことを言います。

すると誰とは言いませんが、自然に意見が一致します。

船団は瀬戸内海の適当な島を見つけると獲物を求めて海賊たちを放ちます。


殺戮と略奪が村を襲います。

しかし、彼らもプロです。

襲っているのは、あくまで伊邪イヨ国の村か、夷軍の砦と決まっています。


さて、両属という制度があります。

戦国時代などで二つ以上の大名の勢力圏の中間に位置する村や町が、その両方に所属するという制度です。


このような地域は扱いが難しく、その村の住民は他の村との接触が禁じられました。

半分は敵という扱いですから、情報や物の流通も制限する訳です。


勿論、戦に巻き込まれることはありませんが、年貢などは両方に収めます。

ただ二つの大名家に対し、半分ずつ収めるというやり方が多かったようです。


しかし、しかし夷と伊邪国の両属なら、大和軍にとって敵です。

今回、エミリーたちが襲った島は、夷と伊邪国の両属だったのです。


「ち、夷軍が出て来やがったぜ。」

「ビビってんのか?」

「へっへ、ぶち殺せ!」


女はともかく、男まで短パンというのは、あまり嬉しくありません…。

少し話がそれましたが、ヴァイキングたちは川を遡上し、港を占領して村々を襲います。

疲れを知らない、貪欲な戦士たちは休むことなく島に広がります。


対する夷の戦士たちは見目麗しく、男も女も中性的な顔立ちで神々しい気品に満ちてさえいます。

身に着ける武具は、細かな彫り物や装飾が施され、きっと先祖から子孫に受け継がれ、戦士として出征する我が子に対する祈りが込められているのでしょう。


だから何?

エミリーたちは、それこそオークかドワーフの軍勢のように真っ黒です。

敵の顔にツバ吐き着け、気後れしたのを見計らって飛びかかります。


「夜目が効かなきゃ、お前らなんぞ案山子なんだよぉ!」


エミリーは戦士たちの先頭に立ち、誰よりも多く敵を斬ります。

北欧から北米、北米から十州島(北海道)、恐れを知らぬ死の突風。


「イヨーッ!」


矢の雨も気にせず、風はただ吹き抜けていくだけです。


『南蛮人め!』


夷軍の武将たちも歯の根が合わない、情けない声を上げます。

もっとも位の高い将が叫びます。


『臆するな、かかれー!』


死のピクニック。

海賊たちは凱歌を歌い、死んだ敵は敷物に、生きている敵は慰み者に。

遅い早いの区別だけで、明日には皆、死ぬ命です。




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