閑話 転生を叶えるもの
気がついたら俺は、白く、窓がたくさん空に浮かんでいる空間に居た。
さっきまで、高校生活初めてのホームルームに居たはずだった。せっかく美人の担任の話を聞いて、これからの生活を楽しみにしてたのに。
「なのに、何が、どうなった? 俺はいったい……?」
「ようこそじゃ。ここは転生の間じゃ」
気がつくと目の前に、灰色の幼女が立っていた。
は? 転生する? え、死んだの、俺? あ、いや確か、足元に紋様みたいなのが光って……。というか、ここはどこだ? もしかして、よくある神の間とかそういうの? つまり、この灰色幼女は神様? 転生って、生き返れるの? 剣と魔法の世界に?
混乱する頭に次々と考えがめぐる。
「うむ、死んだぞい。きれいサッパリの。死因はあれじゃ、召喚失敗というやつじゃな」
「あ、やっぱり召喚だったのか」
「うむ。お主の考えはだいたい正解じゃぞ」
深い灰色の癖っ毛を揺らして美幼女神が頷いた。正直に言おう、めっちゃ可愛い。
「ほほう。嬉しいこと言ってくれるのう。素直でけっこうじゃ」
んで、正解って言うと、ここは神の間で、俺は召喚で死んで、転生して生き返ることができると。そして、何かチートくれると?
「話しが早くて助かるのう。その通りじゃ、何でも願いを叶えてやるぞ。ただし、元の世界に戻る以外で、じゃがの」
「え、っと、元に世界に戻れないって言うのはなんで、です……?」
「敬語じゃなくて構わぬぞ。元の世界に戻れないのはな。簡単に言うと、召喚されたからじゃ。術が甘くて死んでおるが、そのまま召喚されるからの。つまり召喚先の世界に行くことだけは確定しておるのじゃ。面倒な事情があっての、それは防げないのじゃ」
「な、なるほど……」
要は、よくある神様の事情というやつ何だな? というか、さっきからこの幼女。さらりと思考を読んでいるな。さすが神様ってところか。
「まぁ、そゆうことじゃ。死んだままではかわいそうじゃからの。生き返してやろうと思ったんじゃ。感謝せえよ?」
「おぉ! ありがとう! するする、感謝する。あ、でも生き返しても問題はないのか? ほら、生き返るとか、自然の摂理に反しているとか、なんか世界的な問題ありそうだけど」
神様も事情がたくさんあるだろうしな。配慮は必要だろ。チートに響いてきそうだし。色々考えないとなぁー。
「ん? 特に問題はないぞ? 人が生き返ろうが死のうが世界にとって知ったことではないからの」
「お、おう……そうなのか」
幼女が、至極当然のように首を傾げた。
世界が人間中心に動いている訳ではないから、理解はできるけど、なんとなく悲しい。
「うむ。何も気にせず生き返ると良いぞ。まぁ、正確には転生なのじゃがな。さぁ、願いを言うのじゃ」
「わかった」
そうだなぁ、何が欲しいか。とりあえず、無限の魔力だな。それに成長チートとか?
「欲張りじゃの。まぁ、良い。欲しいなら叶えるのが儂のすることじゃ。じゃが、無限の魔力とやらは無理じゃ」
「何でだよ!」
「話は最後まで聞けぇぃ。理由は簡単じゃ。お主が今から向かう世界にはお主が想像するような魔力というものはないからじゃ」
「え? あ、は?」
なんですと? 剣と魔法の異世界じゃないの?
「魔法はあるぞ? そして、お主が想像するような世界じゃ。じゃが、その世界の魔法は魔力などというものは使わないのでな」
「じゃあ、どうやって魔法を使っているんだ?」
MP無しで魔法使い放題なのか? 最近のゲームみたいに?
「いや? 単に仕組みが違うだけじゃ。これからお主が向かう世界ではな。魔法は権利なんじゃ」
「権利……?」
「うむ。魔法を使う資格があるものが世界に起こしたい現象を伝える。そして、その権利に応じて、世界が応える。そういう感じじゃ。実際にはもっと複雑じゃがの」
「へ、へぇ~……。それで俺は魔法を使えるのか?」
複雑なことはノーセンキュー。重要なことは魔法が使えるかどうかである。使えなかったら、泣きたいぜ。
「使えぬな。権利などというものはその世界特有のものじゃ。お主が持っているはずもなかろう」
「じゃあ、その権利をくれ。魔法使いたいし」
剣と魔法の異世界で魔法が使えないなんて残念過ぎる。
「それで、良いかの? 魔法の権利は後天的に手にすることも可能じゃが」
「それを先に行ってくれ!」
危ないところだった。危うくせっかくの願いを無駄にするところだった。
首を傾げている幼女が可愛く見えなくなってきたぞ。なんだ、この腹黒幼女神。
「腹黒とは失礼じゃのう。言い忘れただけじゃろ。あんまり失礼な事を言うとるとそのまま放り出すぞ?」
「すみませんでした!」
半眼の幼女神に土下座する。素の状態で異世界に落とされたら、すぐに死ぬ自信があった。
「そんなことしなくても良いぞ。それより、お主は成長ちーと? とかいうやつでよかろう。お主がしたいことのために何をすればいいのか分かるような力を与えとくぞ? 名付けて『予定への道筋』じゃ」
「待ってくれ。え、ステータスないの?」
いや、やることが分かるのはいいけど。ちょっと、イメージしていたのと違う。
「ないぞ? 他には……む? うむ。残念じゃが時間切れのようじゃ」
「え? ちょ、ま」
「待たぬ☆ さらばじゃ」
何でだぁ~。
床に穴が空いて、神様が消える。同時に意識も薄れていった。
生樹が消えた空間で一人、少女がたくさん浮かぶ窓を見上げた。
「うっかりしとった。また、一人に一つの異能を与える実験をするんじゃった。どうも、複数の異能を与えると働きが弱くなると200体くらい前に分かっていたはずじゃったが……最近ボケが激しくて困るの……。ん? ああ、そんなことはない、うっかりじゃ。本当じゃぞ?」
たくさんの窓からは、人が見えた。誰かと話すように灰色の幼女が話しながら、人々を観察する。多種多様な人種が全て。生樹と同じような小柄な者や彫りの深い顔をしている肌の白い者、肌の黒い大柄な者それだけではなく、耳の尖った美しい者や、狼のような獣顔の者、鱗に覆われた者など様々な者たちが死ぬ瞬間が、窓から見えた。
「よいじゃろよいじゃろ。どうせ時間など、あり余っているのじゃ。む、まぁそうじゃのぅ、わかったのじゃ、ではまたの。……ふぅ、何であやつはあんなにしっかりしているんじゃ? 同じ儂じゃろうに。……まぁよい。さて、次はどやつにするかの。やはり、先ほどと同じ様な奴らから選ぶか。肌の白い奴らや黒い奴らは神、神うるさくて面倒だからのう」
ある窓の生樹と同じような服を来た少女が死ぬ寸前にその少女を引き抜く。代わりに、同じ肉体を元の場所に入れ込んだ。
入れ替えた少女の額に手を当て、記憶を読み取る。
「ふむふむ。こやつなら、この姿じゃな」
そう呟いた灰色の幼女は、スーツを来た女性に変わっていた。
そして、少女が目覚めるまで待って、話しかける。
「あ、れ……? ここは?」
「お早うございます。そして、ようこそ。ここは転生の間です。おめでとうございます、あなたは選ばれました。さぁ、なんでも好きな願いを言ってください。生き返る以外のことなら、なんでも叶えてあげますよ」
灰色の女性は願いを叶え続ける。いつの日か、彼女の願いが叶うときまで。




