第1話 「はじまりの朝」
「魔法」が未知の力から真実の力へとなり皆がその力を使えるようになった時代。清正学園に通う立花音は幼い頃の体験から感情の一部を失っていた。それでも学園生活をおくる中で様々な人と出会いそして大切なものを見つけていく。
初連載です!
温かい目で見守って頂ければとm(_ _)m
火、水、木、電気…人間の生活を支えているこれらのものは無限ではない。当たり前の事だが使いすぎれば無くなってしまう。地球上には電気が通らず暗い中で生活している者もいれば、水が汚染され飲み水に困っている者もいる。
そんな中ある一人の男がこう言った。
「人権は平等であっても我々の生活は平等ではない。何不自由なく生活をしている者もいれば、今この時にも電気がなく、水がなく、暖をとることさえできない者もいるのだ。しかしどうだろう。もしこれらを自らの手で、欲しいと願った時に作り出すことが出来たら。それが実現されたとき、そのときこそ、我々の生活は初めて平等と言えるのではないだろうか。」
当時この考えは賛否両論をよんだ。それでもなおこの考えに賛同した学者、研究者たちによって研究が進められた。その結果、人々は自らの手でこれらを創造できるようになり、この新たなる力を「魔法」と称した。後にこの出来事は「魔法革命」と呼ばれ、当時の研究内容は一冊の書物「魔法書」に記されたのである。
そして時は現代。「魔法革命」から百年と数十年。世界は大きく変わった。魔法は水を生み、火を生み、電気を生み。人々の生活を支えている。しかし、今もなお魔法書の存在は明らかになっておらず、その詳細は謎に包まれたままだ。知られているとすればこの魔法書は「アドミニストレーター」と呼ばれる者によって厳重に管理されていると。そしてその者はあらゆるものを創造できると。だがこれはあくまで一つの噂にすぎない…。
ジリリリリ!!
AM5時30分季節は春
鳴り響く目覚ましとカーテンの隙間から漏れ出した、まだ暗さの残る不透明な光とともに、僕、立花音は目を覚ました。
それと同時にいつものようにため息が出てしまったのだ。
「はぁ…またか…」
左側には姉・静が右側には妹・心が僕の体をがっちりホールドしている。
自身を一本の木だとするならば2人のその様はまさにコアラとでも言えようか。
ではなぜ2人が僕と同じベッドで寝ているのか…
もちろん2人の部屋は別にある。しかしいつの間にかこうして部屋に忍び来ては布団に潜り込んでいるのだ。理由を聞くと「みんなで寝ると楽しい。」「こうして寝るとぐっすり眠れる。」などと、何とも理解しがたい答えが返ってきたのを覚えている。
「…しずねぇ。…こころ。」
優しくではあるが自分の体ごと2人を揺すってみる。
「う〜ん…」
2人して全く同じ反応。起きる気配がまるで無い。
いつもながらに困ってしまう。いったいどうすればいいものか。
「もう…仕方がないなぁ…」
半分諦めたような声でつぶやくと今度は大声で2人の名前を呼んだ。
「しず姉!! こころ!!」
2人はようやく目を覚ました。
「う~ん…音ちゃん~」
「うみゅう…にい〜」
「はいはい。2人ともくっつかない。 このままだと学校遅れちゃうから。 姉さんも仕事でしょ!!」
再びコアラになりかけた2人を振りほどくと僕はすぐさま1階へと向かった。 洗濯機を回し、朝食を作る。家事・洗濯は僕の仕事だ。姉さんは仕事があるため時間ギリギリまで寝ている。ほんわかしているように見えるけど我が家を支える大黒柱なのだ。妹は…まぁいうまでもないだろう。
気づけば時間は6時30分
そろそろ起きてくるはずだけど。そう思った矢先、まだ眠そうに目をこすりながら2人はリビングにやって来た。
「2人とも、おはよ。」
先程とは違い今度は優しく、温かな気持ちで声をかける。
『おはよ〜。(2人同時)』
何とも、まだ寝たりないとでも言いたそうな声。
「もう、シャキっとしなよ!!」
「だって~音ちゃんすぐベッドから出ていっちゃうんだもん。」
「にい〜 紅茶〜」
「まったく…。ちょっと待ってて」
呆れた口調で、でも優しく微笑み2人に紅茶を淹れる。 モーニングコーヒーならぬモーニングティーだ。
朝は必ずアッサムティー。 そのまま飲んでも良いしミルクティーにしても良い。非常に飲みやすいから朝にぴったりなのだ。
「はい、どうぞ!」
香りの良い、綺麗な水色の紅茶を出してあげる。
『ありがと〜』
それを受け取るやいなや、冷えた体を温めるかのように飲み始めた。
これが僕たち立花家のいつもの朝だ。時は過ぎ季節は変わり環境は変わっていくだろう。けれどこの朝だけは変わらない。
今日も。そしてこれからも。
〜次回予告〜
新学期を迎え、学校生活がスタート! 姉が… 妹が… どうする音!
次回 第2話
「入学式」
「なんで…」