邸の足跡
お目汚しです。それでも良いという心の広い方は、どうぞ。
足跡は、そこかしこを彷徨い、皆同じ所に消えていく。
無数にあるそれは、変わらぬ大きさで、靴底の文様は風化しているため、判別が付きにくい。
しかし、癖のある歩き方で、どこもほぼ均等に力がかかったような、そんな足跡だ。
一体どんな歩き方したら付くんだろう。
単独、複数ならほぼ同じ体格の人物像が予想される。
別にこの程度なら何も興味は起こらなかったろう。
ただ、これが全て天井に残された足跡だった。
そして、その消えた先にある部屋に問題がある。
そこは、トイレだ。
年期の入った扉に 『便所』 と書いてある。
思わず息をのむ。
扉を開けるため腕を挙げるよう、脳が命令するが、己の極小チキンな♥が
『開けんじゃねぇ』と早鐘を鳴らす。
目が泳ぐ。世界水泳の選手並みの速さで。
そして、ある一点でその動きが止まる。
ドアノブに付いている鍵だ。
赤マーク。使用中。
私は延ばすか迷っていた手を、迷わず下ろした。
はっきり言って、この人物がなぜわざわざ天井を歩いて行ったか不明だ。
しかし、言い訳させてもらうと、謎は謎の侭の方が、ずっと不思議でロマンがある。
そんな気がする。
しかし、勇猛果敢な『勇者』が居たなら、是非その部屋が『トイレ』なのか、
ここの掲示板で真相を知らせてほしい。
駄文失礼しました。