砂利の山の上から
当方が近所の保育園に通っていた頃の話です。
保育園の近くの工事現場――――いえ、採石場だったのでしょうか、うろ覚えですが――――同じ組の友だち数人とそこで遊んでいたときのこと。
「ぼくもいーれーて」
一つ下の男の子……仮にAくんとしておきましょう。
当方たちと一緒に遊びたいと言ったのです。
当方たちはAくんと一緒に遊びました。
鬼ごっこ、かくれんぼ、一通り遊んでから、小高く積まれた砂利の山に登りました。
相当高かったような記憶があり、多少補正はかかっているかもしれませんが、それでも2メートルはあったのではないでしょうか。
「たかいねー」
「こわーい」
そうはしゃいでいた折。
「わあああああ!!」
Aくんが砂利の山の斜面を転がり落ちました。
砂利と言っても大きめの小石が混じっていたらしく、Aくんは擦り傷だらけで身体から出血していました。
当方たちは全員顔が青ざめました。
血だらけで泣いているAくん、そしてお母さんに怒られる……という、子どもながらの恐怖で足が竦みました。
「だいじょうぶ?」
「おかあさんにいわないでね?」
Aくんの身を案じながら、保身に走る当方たちの浅ましいこと。
泣きじゃくるAくんを近くの県営住宅まで送りましたが、家の前までついていくことはせず、当方たちは逃げるように家に帰りました。
当方も友だちたちも怒られたらどうしよう……とビクビクしていましたが、次の日Aくんは保育園に来ませんでした。
バレたらどうしようと怖かったので、なんでAくん今日来てないの?と先生に訊ねることもしません。
それから何日か経ち、Aくんのことがバレて怒られることがないとわかった当方たちは、ホッと胸を撫で下ろす思いでした。
が、しばらくしてからAくんが別の保育園に転園していたことを知りました。
理由は定かではありません。
あれから数十年。
今彼はどこで何をしているのでしょう。
顔もハッキリと覚えていませんが、当方の頭の深いところで、今もたまに思い出すのです。
「いやだよやめて!! こわいよ!! おさないで!! やめてよぉ!!」
嫌がるAくんを、当方たちが笑いながら砂利の山から突き落としたことを。
もちろんフィクションです。




