第3章 管理されていたもの
加筆修正しました。
『世界は、とても優しいんだよね』
親友の声。
『世界に守られてるから、
みんなは笑顔でいられる』
今はもう聞くことのできない、
少し鼻にかかった高い声。
『それって、とてもいいことだよね?』
彼女は感情が顔によく出るから、
話す前から何が言いたいのか分かってしまう。
『でも』
だから、
私には彼女がこの先何を言うのかもう判っている。
『わたし、ちゃんと間違えたい』
「…。」
私は現実に帰ってきた。
呼吸するのも忘れるような感覚。
雨に打たれて酷く冷えてしまった私の親友の周りを、警察や恐らく組織の保全部隊と思われる人々が取り囲んでいる。
早く暖かい場所へ連れて行ってあげて欲しいと思うのは、自己満足だろうか。
彼女の変わり果てた姿を見た時、私の感情はあの時以来に大きく揺れた。
「第一発見者の方は…」
警察官が同期から事情を聞いている。
幸い私は後から来たので2、3の質問と身元の確認だけで済んだが同期はまだ掛かりそうだ。
恐らくこのまま警察署で聴取になるのだろう。
警察官の質問から読み解くと、
異常者による犯行とほぼ断定しているようだ。
ただ、私は腑に落ちない点が多々あった。
仮に異常者の単独犯と仮定する。
頭部を抉る理由がない。
目撃者がいない。
凶器がない。
雨に流されたとはいえ痕跡がなさすぎる。
事件としての規模があり得ない。
過去のどんな事件とも一致しない。
女性なのに衣服の乱れがない。
やめて。
親友が、どうしてこんな目に遭う必要が…
……やめよう。
一旦、この線で考えるのをやめよう。
警察官の言う通りに異常者の犯行と考えると、多分堂々巡りになる。
そもそもこれだけの殺害方法で目撃者も作らず痕跡も残さずカメラにも映っていないなんて、個人では魔法でもない限り不可能だ。
本来なら組織的な犯行か複数人の犯行を疑うべきだが、警察は最初からその可能性を排除しているように見えた。
そもそも一目撃者、ましてや故人の知り合いに犯人に繋がるような事は言わないのかもしれない。
…最初に話を聞きたい相手がいる。
この事件が起きる事を判っていたのか、判っていなかったのか。
私と親友、それに同期の3人が
2年前まで一緒の時間を過ごした場所。
あの場所へ行こう。
私は事件現場を後にして駅のホームへ向かった。
電子掲示板には事件件数"1"の数字が光っていた。




