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第1章 間違えたい、という声

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この世界は、正しすぎる。

恐らくそれは間違っていないのだろうし、私も困らない。


午後3時。

日差しが眩しくて視線を逸らすと、駅前の大型電子掲示板がいつも通りの情報を伝えていた。


今日も犯罪・事故件数が表示され、13日連続の"0"が映し出されている。


統計的にはそろそろ事故が起きるらしい。

過去の例から見てもそうだろうと、私には判っていた。


待ち合わせの相手を待ちながら、

私は電子掲示板が退屈しのぎに事故を欲しがっている、なんて物騒な事を考えていた。


駅前の人通りは多く、中央都市に比べれば静かな街だがここだけは少し賑やかだ。

私は賑やかさも静けさもそれぞれに良さがあるのだろうと思っているので

それなりにこの街は気に入っている。


中央都市から電車で約20分。

都市開発でできたこの街は最先端技術を取り入れているお陰で、空気や水が作り物のように綺麗。そういうところは息が詰まる。


そうこうしているうちに待ち合わせの相手が来たようだ。

的確に人混みを避けながら私に気付いて手を振…いや、サラリーマンにぶつかってるし彼女の振った手が大学生のスマホに当たってる。


16歳を迎えて高速演算がなくなった私のかわいい親友は、どうやらとってもドジだったらしい。

事故も事件も起きない世界。

正しすぎる世界。


あの子が演算しなくなった時、私は悲しむよりも安心したのかもしれない。


そして、これからも世界は選択を間違える事なく正しく在り続けるのだと思う。


そう、未来の事なんて私には判らないのだから。


駅前のデジタル時計は寸分も狂わず、意味のない午後3時5分を指していた。


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