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JEWEL SOUL ―――世界樹の巫女―――  作者: フロストマン


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第七章 若者たちの選択 ⑨

 ハルトの向かった方角から聞こえてきた銃声に、ロバートは頃合いだと荒い息をつきながら思い始めていた。

 目の前には体中傷だらけになりながらもまだその瞳の闘志は衰えていない坊主頭の少年。思った以上に自分が楽しんでいることロバートは認めていた。

 若者の見た目や性格の通り直情的で思い切りのよい戦いぶり、眼鏡の小娘を翻弄しながら合間にその鞭でちょっかいかけてくるシャロンにも動じず、同時に娘の方を信頼しながらも常にその姿を気にかけている。


 ふうと大きく息をつくと両手のカギ爪をだらんと垂らした。

 その様子を不審に思うも少年は警戒を緩めない。シャロンも息を喘がせながらこちらを伺う。

「おい、小僧、一旦休憩だ」

「何を言っている」

「まあそう強がるなよ。だいぶ限界だろ。だから終わる前に聞かせろよ、お前の名を」

「何だと、名前だと」

「お前ら俺達の名前聞いてただろ。ハルトの奴も言ってたじゃないか、命のやり取りをしているのに一方だけ知っているのは不公平だと」


 少し間をおき、それでも不愛想に彼らはしぶしぶ答えた。

「バズ・トロット」「レオナ・ホーファー」

「よし、素直でよろしい」

 そう言うとロバートは脚の鞘から細身のナイフと取り出し相手に向ける。

 それは柄に仕掛けが施してあり、刃がバネの力で勢いよく飛び出すと、バズの太ももを突き刺した。

 バズは声を上げ、武器を取り落とすとその場に崩れ落ちた。

「バズ!」おもわずその名を呼びながらレオナはそばに駆け寄る。

「すまんな、俺達は卑怯者なんだ。お前らを簡単に殺すこともできたんだが、あまりハルトや巫女さんを刺激するのも得策じゃないと思ってな、少しばかり付き合ってやってたんだよ。」

 シャロンはつまらなそうに鞭を巻き取っている。

「ハルトが向かった巫女さんの方も、どうやら決着が着きそうなんでな、そろそろ退散することにするよ」


 バズは痛みに耐え、歯を喰い仕上がりながらこちらを睨みつける。

「そう怒るなよ、いい経験になっただろ。

 それにその痛みは俺の親切心の現れなんだぜ。そこから立ち上がり、一歩でも動くと今度は容赦なく殺すと言う警告さ」

 それでも立ち上がりかけるバズを懸命に抑えながら、今度はレオナが眼鏡越しに怒りと恐怖を滲ませながら感情を抑えて言う。

「何よ付き合うって、あんた達はただの時間稼ぎをしていただけってこと」

「まあ、そういうことだな。なんだ、がっかりさせたか」


「そう、それじゃ、わたし達と同じね」


 若者達の背後の草の茂みがざわつき、狙撃ライフルを持った痩せた老人が不意に姿を現した。

 咄嗟にロバートは隣に立っていたシャロンの腕を掴むとその老人の方へと突き飛ばすように押しやった。

 シャロンはバランスを崩し、その老人の方へと倒れ掛かりながらこちらを向くとロバートと目が合い、抗議するようにむうと頬を膨らませた。

 だから歳を考えろって。

 老人の発射した銃弾はシャロンの背中の真ん中に当たり、その瞬間シャロンの表情は完全に消え失せた。それは普段の陰気な少女の顔でも、戦いのさなかに返り血を浴びて淫靡に歪む顔でもない、ごく普通の成人女性の顔だった。


 ロバートは老人が次弾を装填する間に倒れ行くシャロンを跨ぎ越すように突進し、カギ爪を老人の首筋へと狙いを定めた。

 その時地面についた足の脛部分に衝撃を感じた。見るとレオナがバズの木刀をロバートの足元を狙って投げつけていたのだ。バランスを崩し倒れそうになる。

 なんとかもう片方の足で地面を踏ん張った時、目の前にはライフルの暗い銃口があった。

 俺の最期にしては随分とあっさりしているな。

 もう少し見苦しくなるかと思ったが。


 暗闇が全身を覆い、自分の額を打ち抜いた銃声が聞こえてきたのはその後からだった。


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