第三章 不器用な努力
翌朝、私は瑠璃子のために特別な朝食を作ろうと厨房に向かった。ゲームの設定によると、翔太郎は実は料理上手なのだ。しかし、慣れない体で料理をするのは思った以上に困難だった。
「よし、オムライスを作ろう」
卵を割り、フライパンに油を敷く。しかし、火加減を間違えて卵が焦げてしまった。
「ちっ……」
「翔太郎さん、お手伝いしましょうか?」
振り返ると、咲良が心配そうな顔で立っていた。
「いえ、大丈夫です。これくらい……」
そう言いながら再挑戦するも、またも失敗。三回目でようやく形になったが、見た目はお世辞にも美しいとは言えなかった。
「お嬢様にお持ちします」
咲良が手を伸ばしてきたが、私は首を振った。
「いえ、これは私が……」
執事室に運んでいく途中、廊下でつまずいてオムライスを床に落としてしまった。その音を聞きつけて瑠璃子が部屋から出てきた。
「翔太郎?何かあったの?」
「い、いえ……何でもありません」
しかし、床に散らばったオムライスを見て、瑠璃子の表情が変わった。
「これ、私のために作ってくれたの?」
「べ、別にそういうわけでは……」
その時、咲良が現れて手際よく床を掃除し始めた。
「すぐに新しい朝食をご用意いたします」
「咲良、ありがとう。でも……」瑠璃子は散らばったオムライスを見つめて続けた。「翔太郎が作ってくれたものなの?」
私は答えに困った。翔太郎のキャラクターなら、きっと素っ気なく否定するだろう。でも、私の本心は……
「……はい」
小さく答えた瞬間、瑠璃子の顔が赤くなった。
「翔太郎が、私のために……」
「違います!たまたま材料が余っていただけで……」
慌てて否定したが、瑠璃子の勘違いは深まるばかりだった。