巨大怪獣キンタマキ襲来
フン、聞いて驚けにゃん。我はバーチャル前川ナリ。バーチャルではないが、本名だから仕方ない。
特技はあらゆる傷を修復する自己再生能力。家電量販店にその身をやつす、しがない正社員にゃん。
地平線の彼方、コンクリートジャングルを蹂躙する巨大な影。その名は「キンタマキ」。ふざけた名前だが、その行動は笑い事ではなかったにゃん。ビルは豆腐のように砕け、人々は蟻のように逃げ惑う。まさに地獄絵図ナリ。
そして日本政府とかいうクソ無能集団が下した決断は、さらに我々の度肝を抜いた。「24時間後、関東地方全域に生物兵器『I-Zar』を散布する」。全ての生命を根絶やしにする、だと?ふざけるな、まだ我が予約したフィギュアが届いてないんだぞにゃん!
交通インフラは当然のように麻痺。誰もが逃げられるわけではなかったナリ。
運よく関東を脱出し、郊外に設置された避難施設に転がり込めた我は、リュックに詰め込んできたシンフォギアのフィギュアを愛でることで、このクソみたいな現実から逃避していたにゃん。「はぁ…やはり立花響は最高だにゃん…このフォニックゲインの高まり、たまらないナリ…」。
その時だった。避難施設に設置された大型テレビが、関東からの避難中継を映し出したのは。地獄の中を必死に親の手を握りしめる、見覚えのある少女の姿。…ああ、そうだ。この前、店でエアコンを買っていった親子連れのにゃん。我があまりにも手際よく設置を終わらせたから、その子がお礼にって飴ちゃんをくれたんだったにゃん。
その瞬間、胸がギリッと締め付けられたナリ。
「…我が行く必要はないにゃん。たかが飴一つ…義理立てする必要など…」。そうだ、国が何とかするはずだ。自衛隊とかいう税金泥棒は何をしているんだにゃん!必死に目をそらし、フィギュアに意識を戻そうとした、その時だった。
『臨時ニュースです。政府は先ほど、『I-Zar』の散布を、予定より8時間前倒しにすると発表しました』
――は?
全身の血が凍り付く。8時間?今から8時間後だと?もう誰も助からないじゃないかナリ!あの親子も!我に飴をくれたあの少女も!
脳裏に、封印していた忌まわしい記憶が蘇る。
そうだ…いるじゃないか。あの怪獣ごとき、指先一つで消し炭にできる存在が。
我が大学時代の先輩、あの憎き男…『禁断フカにゃん先輩』が!
普段は我を煽り散らし、デュエマでボコボコにし、百合アニメ好きを「なさけない」と罵倒する、殺しても殺したりない男。だが、その力だけは本物ナリ。しかし、あの男は基本動かない。ぐうたらで、自分の利益にならないことは絶対にやらないクズだからにゃん。
ヤツを動かすには、いまだ東京都江戸川区の地下深くに封印されし『フカにゃんのコア』を解放するしかない。そして、コアの封印を解く鍵は、関東に点在する7つの大手家電量販店に散らばる『伝説の白物家電』。冷蔵庫、洗濯機、エアコン…それらを集結させたとき、初めてフカにゃんはその真の力を取り戻す。
この情報は禁忌中の禁忌。もし世に知られれば、各国がフカにゃんを軍事利用しようと血眼になり、第三次世界大戦は避けられないナリ。
つまり、動けるのは…この情報を知る我、ただ一人!
「クソがぁあああああ!」
我は叫んだ。フィギュアを丁重にしまい、スマホを取り出す。履歴の一番上、唯一信頼できる人間の名前をタップする。
『もしもし、KTZW先輩かにゃん!?』
『…なんだ前川。また積立NISAを崩したのか?』
『そんなことどうでもいいナリ!世界の危機にゃん!至急、大型トラックを一台手配してほしいナリ!』
『…はぁ。また面倒なことに首を突っ込んでるな。わかった、すぐに手配しよう』
話が早くて助かるにゃん!さすがKTZW先輩!
我は避難施設の物資調達係のところへ駆け込んだ。そして、命よりも大事な、悠木碧さんのサイン入り限定版『戦姫絶唱シンフォギアG 雪音クリス バニーver.』のフィギュアをカウンターに叩きつける!
「ぐっ…!ぐぬぬぬぬ…!我が命そのものたるクリスちゃんが…!だが、これで…これで大型トラックのガソリン満タンと、レーション一週間分をよこせにゃん!」
取引は成立した。涙を呑んでクリスちゃんに別れを告げ、我は手に入れたトラックの運転席に飛び乗る。アクセルを全力で踏み込み、封鎖された関東地方へと続く死のハイウェイへと、猛然と突っ込んでいくのであった。
待ってろよクソ怪獣!そしてあの忌々しいフカにゃん!ついでにあの少女!
この我があのクソ生意気な先輩を解放して、すべてを解決してやるナリ!見てろよ!眉間を射抜く準備はできたかにゃん!




