悪魔の生態
アグリさんは僕には契約の悪魔としてあるため、今後の事をお話しないと行けないと言っていた。
僕はヘカテーさんによって血を与えられ、契約の悪魔という悪魔族に生まれ変わってしまった。
今後の事は重要だ、知らないとついていけない。
…それとは別でヘカテーさんがとんでもない事を言った事が気になる。
「…子を産んでもらう…?」
「あぁ。」
子を産んでもらう…まるで僕が産むかのような発言だ。
…まさか悪魔族は、人間や他の生物とは違って雄が子を産むのか…?だとしたら僕が出産する事になるのか?
「…僕が?」
「?」
首を傾げるヘカテーさん。
「ヘカテー様、その言い方ではアルシエル様に誤解を産んでしまいますよ。」
「む?」
「ヘカテー様がアルシエル様の精子を受精して、ヘカテー様が子を出産なさるのですよ。」
アグリさんが相変わらず愛しい方だ。ただ精子だとか受精だとか生々しい発言を軽々と言えるのはちょっと恐ろしい。
「そうだったな、誤解を生んですまないアルシエル。」
「いや、大丈夫ですよ。」
…ちょっと自身の身体に意識を向けてみた。
どうやら僕は悪魔族になっても、人間の男性と同じような生態を持つみたいだ。悪魔になったからと言って性別が変わったりするなんてことはないし、翼と尻尾と角…悪魔族としての魔力や血を持つ以外は人間と生態が似ている。だから当然僕が子を産むのではなく、ヘカテーさんが産む事になる。ヘカテーさんがさっきボソッと言った「悪魔族は…元は人間なのだから。」という言葉と一致しているのだ。
…ただ。
「いいんですか、僕で?」
「何がだ?」
「何がって…子どもを産むんですよ。それが僕との子でいいんですか?」
「それが私の使命だから、構わない。」
「………マジか。」
………マジか。
いや、まあ確かに嬉しい事ではあるのかもしれない。この人と子作りをする、酷く言ってしまえばヘカテーさんを犯してもいい…そういうことだ。それにヘカテーさんは色々と発育が良い。というか、余りにも良すぎる。大きな胸と太ももと、くびれもある凄いスタイルの持ち主。ヘカテーさんと交わるのは、一般的な男の理想、夢であるはずだ。
ただ…子作りするならするで少し気になることがあるが。
「子どもを産むのにあたって…費用とか色々かかるんじゃないんですか…?」
「そこは問題ない、契約の悪魔の一族が全部負担しよう。」
「…そうかい。」
…思ってた以上の答えで、少し軽く流してしまった。ただ、厳格ででも真面目そうなヘカテーさんの事だしマジで言ってそうなんだよな…。
契約の悪魔の一族が全負担…それってつまり責任を殆ど取らなくていいって事なのか?
…いや、邪な気持ちを抱くのは辞めよう。いくらそれが可能だからと言って、ダメだ。
「…いやでもやっぱり、僕は」
「アルシエル様、契約の悪魔は人間の皆さんに全力で奉仕致します。」
アグリさんが説明してくれる。
全力で奉仕致しますって言い方、なんか興奮するな…
「全力で奉仕…」
「えぇ、ですから甘えていいのですよ。アルシエル様はヘカテー様に委ねていいのですよ。」
いちいち発言にバブみを感じる…アグリさんはこんな凛々しい姿をしておいて、意外と肉食なのかもしれない。ヘカテーさんが外も中もピンク色なら、アグリさんは中が凄くピンク色だ。
「…それなら従いますけど。」
ただ、まだ決心が揺らいでいない。
僕はさっきも言ったけど女性慣れしていない。一度も恋人なんてできたことないし、性経験なんて、以ての外だ。
僕なんかが釣り合う訳が無い。
「でも僕、童貞ですよ…?」
「あらあら、未経験なのですねアルシエル様。でしたら私で練習します?」
「練習て…」
アグリさんがうふふと笑いながら僕の方へ近付く。そして、ワンピースをはだけさせて綺麗な肩を見せてくる。………彼女の頭の中のピンク色のリミッターが解除されている。
いや落ち着け、アルシエル。確かにアグリさんに初めてを頂けるのは嬉しい…けど、そもそも僕はヘカテーさんと子作りする予定だってことをヘカテーさんに告げられている。彼女に奉仕されてしまったら浮気だろう。…いや、この場合は不倫か?子作りする関係なんて、結婚しなきゃ普通しないはずだ。…となると僕は、ヘカテーさんと…結婚するのか?そうなると僕は…付き合うという過程を飛ばして結婚…そして子作り…子育て…うぅ…急に父親に………
それよりも、今はアグリさんの誘いを断らないといけない。僕はアグリさんの服を優しく戻す。
「…もっとご自身の身体を大事になさってくださいよ。」
「あら、うふふ。紳士様なのですねアルシエル様は。」
…危なかったけど…こんな綺麗な人に誘われたら断るの厳しいと思うけど…何とか耐えた。
「…それより、もう少し詳しく教えて欲しいですアグリさん。先程あなたは契約の悪魔としてあるためにも、今後の事をお話せねばなりませんねと言っていました。」
「あらあら、うふふ。」
「僕が悪魔族に生まれ変わって、ヘカテーさんと契約の悪魔の子を多く産むという使命を理解し………何してんすか。」
アグリさんが再びワンピースを脱ぎ始める。
いや、何してるのこの人?もしかして露出狂?契約の悪魔とやらは変な人しかいないの?
「今後の事を語るには、私も正装であらねばなりませんね。」
「正装。」
そう言うと、彼女の小さな…いや、意外とメリハリがある。ワンピースの中に結構な物を隠していた。着痩せという奴だ…成長している胸が…露出される。黒いビキニのような…黒いパンツのような…ヘカテーさんと並んでとんでもない服…服なのか?もう下着でしょこれ…アグリさんはとんでもない物を内だけでなく外にも潜めていたのだった。
「………」
「どうしたのですか、アルシエル様?」
「…いや、なんでもない。」
目を逸らす僕。アグリさんを直視できない。
ヘカテーさんが腕を組み、話し始める。
「まず、契約の悪魔…いや、悪魔族の使命を言いましょう。私達悪魔族は、人間との共存を目標としています。」
「…人間との共存?」
人間との共存?
「先程ヘカテー様が悪魔族は元は人間と言ったのを覚えていますね、アルシエル様。」
「…はい。」
元人間…かなり気になる情報だ。真相が気になる。
ただ、この時は真相が気になるという好奇心で動いていたが、後になってこの好奇心は、僕自身の愚かさを語るのだ。
そしてアグリさんから、衝撃的な言葉が零れる。
「私達悪魔族は、純粋な邪の心が生み出した惨劇から生まれた異質な生き物…呪いの血を持つ人間なのです。」




