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~プロローグ~ 悪魔化

 




 ………意識がはっきりしない。

 なんか、ずっとお腹が痛い。でも尿意や便意がある訳では無い。風邪かな…?

 そういえば、右腕もずっと違和感がある。腕の中から違和感を感じる。中で血管が暴れでもしたのかな。


 悪魔?悪魔なのか?

 契約の悪魔だとか、なんだとか言っていたような………

 なんか…頭もボーっとする。


 …そうだ、弟は何処だ?

 僕と一緒にいた弟は何処だ?

 僕と一緒に強くなるって意気込んでいた弟は…何処に行ったんだ?


 ダメだ、何も思い出せない。

 もしかしたら記憶が無くなっているのかもしれない。

 所謂記憶喪失って奴かもしれない、それに巻き込まれた可能性がある。


 自分の名前は…言える。僕はアルシエルっていう名前がある。

 太陽神の族っていう一族に生まれた人間。太陽を模した魔力が使える。左手を中心に魔力が行き渡っている…うん、これも大丈夫だ。

 左腕が魔力の影響か輝いていないのが気になるが、まあいいだろう。

 後は…強いて言うなら20歳って事か。うん、これもちゃんとしている。記憶喪失という訳では無いみたいだ。

 推測になるが、数時間若しくは数日以内で僕が記憶が飛ぶほどの何か衝撃を受けた。それが右腕とお腹に来ている、そういう事だろうと一旦予想する。

 …まあ数日以内ならば、後で思い出せればいいか。


 …しかしここは何処だろう。何処か、建物の中みたいだけど。

 黒い床。鉄に似ているが、鉄とは似ても似つかない。この素材はなんだろう…?

 周りは黒い壁で、同じ素材。

 天井は普通の建物よりちょっと高い。そしてこの中を灯すのは電気…シャンデリア?

 まあ素材が違うし、何処か宮殿みたいなところなのだろう。

 宮殿だとしたら…僕は何をしでかしたんだろう。


 そういえばさっきから話し声のようなのがうっすら聞こえる。

 目の前に立っている背の高い女の人が話していた。こっちに背を向けて、話している様子が窺えた。

 下から黒いハイヒール、肌色の生足に太もも、半分お尻の出た黒いパンツ、肌色の腰、コウモリのような黒い翼、黒い胸当の後ろ、長くて紫色の髪、後ろ姿からもちょっと見える前に生えた鬼みたいな赤い角。

 …翼?

 人間に翼は生えない。コウモリのコスプレでもしてるんだろうか。

 …角?

 人間に鬼のような角は生えない。鬼とコウモリの複合のコスプレだろうか。


 いやそれよりも………


 黒いパンツ…お尻が半分出てる………なんか…エッチだな………ていうか、お尻でか………

 そして後ろ姿だから一瞬気付かなかったけど、これ絶対おっぱいでかい。横乳が見える、めっちゃでかい。じっと見てちゃいそう。ちょっとこっち向いてくれないかな。

 …じゃなくて、こんな妖艶な、痴女みたいな、淫魔みたいな女性が僕の前に立っているんだ…?

 何やら目の前にいる黒い翼と角が生えた女性と話しているが…

 あの人は、流石に痴女みたいな装備ではなかった。ワンピースを着ていた。けど、アレはアレでいい………。清楚系な女の子だ。翼と角があるし恐らく彼女も同じコスプレだろう、流石に肌はワンピースで足元と腕以外全然晒していなかったが。


 ………ていうか妖艶な方の女性、背高いな。ハイヒール履いてるからってのもあるだろうけど、ハイヒール抜きでも僕より身長が高い、そんな気がする。僕も男性の平均的な身長以上はあると思っていたんだけど、世の中って広いなあ。

 …兎に角、目のやり場に困る女の人だ。男の本能というか、この後ろ姿を見ればまずお尻に目が行くだろう…紳士としては目線をズラしてコスプレの翼を見る…いや、長い髪を見るべきか…?

 うーん………

 彼女のお尻を見る。…半分出てる。…コスプレにしては、過激過ぎないか………?


「アルシエル。」


 腰を見る、…大きいお尻と胸だが、細い腰。この女性…くびれがある…!なんて理想的な身体をしてるんだ、この人は………!心の中で感動している僕がいる。

 翼を見る。コスプレにしてはできのいい翼だ。触ってみたい、どういう感じなんだろう?どういう素材でできているんだろう、気になる。


「アルシエル。」


 髪を見…あ、横顔。こっちを見ている左目。


「さっきから、何処を見ているんだ貴様?」

「え?」


 あ………気付かれた。

 彼女の身体を下から順に見ていた事、バレてしまった。


「あ…いや………その………」


 童貞臭さを漂わせる僕の反応。残念ながら僕は女性慣れをしていない。ましてやこんな綺麗で…妖艶な人を見て堂々とできる訳が無い。

 言い訳を考えよう、えっと………


「………あなたを見ていました。」


 紳士っぽい台詞だ。我ながら決まったと思った。


「そうか、人間に委ねるための身体だからな、貴様が私を見るのは当然だ。」


 言葉を返してくれた。…が、なんか意外な反応でビックリ。大抵の女性は堕ちるか、或いは「え…気持ち悪い…」ってなるはずだ。そのどっちでもないって事は、相当慣れているんだろうか…やっぱそういう身体してるから…そうよなぁという予想。

 …しかし、人間に委ねるための身体ってどういうことだろう?本当に痴女なのかな?


「貴様には私も期待しているからな。」

「…貴様。」


 …貴様。…貴様かぁ〜〜〜…貴様…ねぇ………女の人でも貴様って言葉使うんだ…

 というか僕ってもしかして…貴様って言われるほど彼女にとっては小物なのかな…


「どうしたアルシエル?」

「…いや、なんでもないです。」

「ふむ。早速だが、貴様に話がある。」


 貴様に話がある…間違いなくその言葉は女の人じゃなくて男の偉い人が使う言葉なんだよなぁ…厳格な女性だ…。

 …しかしまた疑問だ。何故彼女は僕の名前を知っているんだろう。

 そもそもここは何処なんだ…?


「僕に話…ですか?」

「あぁ。」


 そして彼女は、僕の方を向く。


「うおっ………」


 後ろ姿が妖艶な女性は、正面も妖艶だった。それもかなり………

 下から黒いハイヒール、生脚に太もも、黒いパンツ、腰…と、正面から堪能出来るおへそ、そして大きな胸と大事な部分を隠す黒い胸当、綺麗な鎖骨、そして何より…顔がいい、美人だ。鬼のような角も、正面からはちゃんと見える。

 凄いコスプレだと、思った。何気に黒い手袋も…良い。


「どうしたアルシエル?」

「………んと、あの…うーん。」


 だけど、目のやり場に死ぬほど困る………下半身から上半身まで肌の露出が凄い…何処を見ても…僕をザワつかせる。

 顔を見るしかない…けど、男としての本能は何度も目を逸らしてしまう。ここは少し、言葉で誤魔化そう。


「………綺麗ですね。」


 紳士っぽい台詞、決まった。


「当たり前だ、人間に委ねるための身体だからな。」


 またそれだ…さっきから言っている人間に委ねるための身体ってなんだ…?


「…素朴な疑問なんだけど、聞いてもいいですか?」

「なんだ?言ってみろ。」

「…あなたの名前は?」

「なんだ?もう忘れたのか?」

「…生憎、物覚えが悪くて。」


 そもそも、聞いてないからな…


「私は契約の悪魔ヘカテーだ。」

「ヘカテーさん。で、そちらのワンピースの方は?」

「私は契約の悪魔アグリと申します。」

「アグリさん、どうか宜しくお願いしますね。」

「えぇ、まぁ。ヘカテー様と良い夜を。」


 微笑むアグリさん。正統派な清楚系って感じの女性で、可愛らしい。

 …しかし、少し疑問があった。


「…契約の悪魔?」


 二人共名乗っていた肩書みたいなもの。コスプレの事だろうか。


「あ、もしかしてコスプレの?」

「こすぷれ?とはなんだ?」

「…はえ?」


 ヘカテーさんの返答に、情けない声を出す僕。

 どういう事だ…?コスプレじゃないのか…?天然…なのか…?


「どういう…?」

「ヘカテー様、もしかしたらアルシエル様は復活の余韻で記憶が飛んでいる可能性が………」

「ふむ、そういう事か。」

「………えっと。」


 記憶が飛んでいるのは確かにそうなんだけど…復活の余韻とは一体…?


「アルシエル、左手首を出せ。」

「左手首…?」


 ヘカテーさんの言う通り、左手首を上向きに出す。


「違う、下だ。」

「下?下って…」


 手首の下…血管の部分に裏返した。

 …そして、そこに謎の黒い指輪の紋様が浮かんでいた。


「………え?」

「そしてこれが私にも刻まれている。」


 ヘカテーさんはそう言うと、手袋を外して僕に向けて左手首を見せる。

 そしてそこにも、同じ謎の黒い指輪の紋様が浮かんでいた。


「貴様と契約を交わした証拠だ。貴様の中に、私の血が流れている。」

「っ………」


 ヘカテーさんの血が僕の中に流れている…?これは、夢なのか………?


「貴様は悪魔に堕天したのだよ、契約の悪魔アルシエル。」

「あ………悪…魔………?」


 僕が悪魔に堕天したと聞いてピンと来る程の意識が、今の僕にはない。

 頭がボーっとしている状態で新事実を伝えられても、ピンと来ない。


「あ…えっと…どういう事だ…?」

「アルシエル様、自身の額と背中に触れてみてください。」

「額…背中…?」


 アグリさんの言う通り、僕は額に手を触れる。


「………!」


 額の上に、何かある気配がある。

 触れてみる。

 これは………ちょっと硬い…角…?


「角が…ある………?」

「えぇ、そして背中も確認して頂ければと。」

「背中………」


 背中に手を持っていくのは大変だ。自分の背中をかくのには、道具がないと結構厳しい。

 背中を触ろうとして、自分のお尻に触れてしまった。

 そして、そこにも違和感を感じた。


「っ………?」

「あら…翼に触れようとしたら尻尾に触れてしまいましたか。うふふ、可愛らしいですね。」


 アグリさんが僕の動きを見て微笑む。

 …だが、微笑んでいる場合じゃない。

 僕のお尻に………尻尾がある。

 触れてみる。…なんか、ザラザラとした感触。そして、触ると同時に肌がピリ付く感じがする。


「アルシエル様、尻尾の先端は猛毒ですからお気を付けて。」

「っ………」


 肌がピリ付く感じ…そうか、尻尾の先の猛毒か。


 …そうかどころじゃない。


 僕の身体に、異変が起きている。

 アグリさんの言う通り、額と背中に触れた。

 額には角があって、背中…というか間違えてお尻に触れたが、尻尾がある。

 そしてアグリさんの言う通りだと…僕の背中には翼がある。


 …目が覚めた。

 意識がちゃんとしてきた。

 そして、僕は気付いた。



「僕…人間から悪魔になっている………?」


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この作品の本編である
白と悪魔と
も連載中!
女主人公のホワイトが、母親を殺したジハの計画を止めるために戦う作品です!
毎週水曜日と土曜日更新中!
是非こちらも御覧ください!
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