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51話 おばけグッズ

閲覧ありがとうございます。

お次は黒主さん。


 小道具班は買ってきた材料や家から持って来た物を使っておばけっぽい道具を制作しているようでした。小柄な小悪ちゃんはどこだろうと思ったのもつかのま、すぐに見つかりました。


「ココア~、ちょっとこれ持ってみて」

「黒主さん、これっておばけ感あるかな。……あ、うん。あるね」

「小悪ちゃん、片っ端から小道具持って歩いてみてくれる? いやぁ、似合うね」


 小道具班の中心に彼女はいました。あれやこれやと作った道具を持たされ、ポーズを指定されています。クラスメイトたちの視線を浴び、大変そうですが……。


「ふはははは、我の力が必要か!」

「うん、助かるよ」

「存分に頼るがいい。次はどれだ?」


 とても楽しそうです。安心しました。


「じゃあ、少し休憩にしようか」


 誰かの声を合図に、小道具班の塊は解散していきます。胸を張って立っていた小悪ちゃんは、私に気がついて近寄ってきました。


「おお、志普か。我の波動に当てられてしまったか?」

「うん。楽しそうだなって見てたよ。小道具はどんな感じ?」

「衣装班と協力しつつ、おばけっぽいものをたくさん作っているところだ。あと、喫茶店に来た客に渡すグッズの制作だな」

「おばけグッズ?」

「うむ。ステッカーとコースターを準備しているぞ」

「すごい。コラボカフェみたいだね」


 すると、小悪ちゃんは顎に手を当てて小首を傾げます。私、なにか変なこと言ったかな?


「それ、さっきすぺるも言っていたな」

「小悪ちゃんが転校してくる前に、魔奇さんと一緒にコラボカフェに行ったんだよ。たぶん、その時を思い出したんだと思う」

「おお、そうか。仲良しだな、おぬしら」


 何気ない一言でしたが、妙に嬉しくて気温が上がった気がしました。意味もなく手で顔を仰ぐと、話題を変えようと彼女を見ます。


「その鎌も作ったの?」


 小柄な彼女の背丈ほどある真っ黒な鎌。片手にクマのぬいぐるみ、片手に鎌の姿は異様ではありますが、やけに似合っているとも思いました。


「うむ、みんなで協力してな。段ボールでできているのだぞ」


 誇らしげに掲げるそれは、よく見ると断面が見知った茶色をしていました。黒色は厚紙を切って貼り、装飾部分は折り紙で作られているようです。


「よくできているね」

「だろう。配下を楽しませるのも魔王の務めだからな」

「優しい魔王さんだね」

「恐怖で結ばれる絆など、我は欲しておらんからな。……ときに志普、おぬしはどう思う?」


 ふいに、彼女は声を潜めて問いかけます。


「どうって?」

「我は恐怖とは別のものでおぬしたちと繋がれているだろうか。小道具班の者たちとも、ちゃんと……」


 思いがけない相談に、私は先ほどの光景を脳裏に浮かべます。主観での答えになりますが、きっと誰もが同じことを言うでしょう。


「ばっちりだったよ」


 指で丸を作りました。小悪ちゃんの顔に衝撃が走ります。


「ばっちり恐怖だったってことか⁉」

「違うって」


 なんでそうなる。


「だって、志普がまるって言うから」

「ばっちり仲良しだったってこと。小悪ちゃんのことを怖がっている人なんて、一年二組にはいないよ」


 安心させようと思って言ったのですが、彼女はどこか浮かない顔です。


「魔王としては、怖がられないのもちょっと困るのだが」


 そんなこと言われても……。


「威厳というものがないとな」

「威厳か……」


 私は目の前の彼女を観察します。黒いフードをかぶり、つぎはぎのぬいぐるみを持ち、自分よりも大きな黒い鎌を持つ小悪ちゃん。


 なるほど、威厳ですか。そうか、うん。威厳ね……。


「だいぶ難しいね」

「どうすればいいと思う?」

「そうだなぁ……。本物の鎌を持ってみるとか?」


 現実的な提案ではありませんが、魔王っぽいと思いました。しかし、小悪ちゃんは訝しげに目を細めて首を傾げます。


「こんなものを持っていたら捕まるぞ?」

「そうだよね……」


 正論言われちゃった。


「ちゃんと刃を隠さないと銃刀法違反だし」

「うん……」

「本物は重くて我には持てん」

「だよね……」

「やはり、魔界から応援を呼ぶしかないか」

「応援?」


 しかも、魔界からと言いました。一体どんな応援が……。


「志普、おぬしはチアガールはミニスカート派か? それともミニズボン派か?」

「なんて?」


 まじでなんて言いました?


「チアガールだ。知っているだろう。甲子園とかで元気に応援している軍団だ」

「テレビで観たことあるけど、チアガールと魔王に何の関連が?」

「大総統になったら職員の制服を全部ミニスカにすると宣言した大佐がいると聞いてな。つまり、チアガールを動員する権力があれば『魔王様万歳!』と言ってもらえるということだ」

「前半の話、どこで聞いたの?」


 頭の隅にチラつく白い人。


「大佐の話か? すぺるだぞ。アニメで観たらしい」

「魔奇さんのアニメ知識はあんまり信用しちゃだめだよ。ほとんどフィクションだから」

「そうなのか? でも、マンガでも読んだと言っていたぞ」


 私はゆっくりと考え、口を開きます。


「そのマンガとさっきのアニメって関係してる?」

「うむ。アニメの原作マンガだと言っていた」

「同じ話してるじゃん、魔奇さん」

「ま、待て。原作とアニメは多少違うところもあるらしい」

「どこが違うの?」


 小悪ちゃんは彼女から聞いた話を自信満々に伝える為、黒い鎌を天高く掲げました。


「アニメより原作の方が、スカートが短い!」

「小悪ちゃん、あとでちょっとお話しようか」


 魔奇さんも一緒にね。


お読みいただきありがとうございました。

魔奇さんが言ったのは、雨の日は無能な例の大佐です。

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