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38話 サークル名

閲覧ありがとうございます。

名前を考える時間は好きです。


 翌日。私たち四人は学校中を駆け回っていました。理由ですか? 簡単です。


「わたしたちのサークルに入りませんか?」

「我らは新しくサークルを作るのだが、人員があと一人足りないのだ。おぬし、どうだろうか」

「新設予定のサークルメンバーを募集しています。ご希望の方は一年二組の剣崎まで」

「すみません、部活動とかサークルってもう決めましたか? 今回、新しくサークルを作ることになったのですが……」


 などなど。残る一人のメンバーを求めて走り回ったのですが……。


「もう決めちゃった人ばかりで、全然いないよ」


 机に突っ伏す魔奇さんはため息をはきながら言いました。


「それ以外だと、部活動には所属しないという方で、すべて断られました」


 勇香ちゃんが簡潔に結果を述べます。


「幽霊部員でもいいから、名前だけ貸してくれと言ったのだが逃げられてしまったぞ」


 頬を膨らませながら言う小悪ちゃん。


「黒いフードを被り、クマのぬいぐるみを持っている人に急に言われたら驚きますよ」

「名前を貸すだけだぞ?」

「どこかの湯屋みたいに、取られちゃうと思われたのかも」

「我が魔王だからといって、そんな横暴なことはしないぞ、すぺる」


 みんなの話を聞きながら、あと一人をどのように確保するか思考を働かせます。一年二組の生徒には片っ端から訊きましたが、タイミングが合わず逃がしている人もいます。まずはその人に訊いて……。


「サークルの名前はどうするのだ?」


 チョコレートを頬張りながら小悪ちゃんが問いました。サークル……名……?


「決めること、まだあったね」


 魔奇さんは私を見て、遠慮がちに言いました。お気遣いありがとう……。


「一応、いくつか考えてきた。その中から選べばはやいだろう」

「あ、わたしも。平良さんは?」

「ごめん。すっかり忘れてて……」

「大丈夫だよ。とりあえず、わたしたちの案を見てみて」


 二人が書き出したサークル名前案は次の通り。


 ・摩訶不思議サークル

 ・いつでもこい超常現象サークル

 ・魔ジカルサークル

 ・深淵の魔王軍サークル


 などなど。


 名前を見て、勇香ちゃんが眉をひそめます。


「深淵の魔王軍って、私は勇者ですよ」

「おぬしが来る前に考えたんだから仕方なかろう」

「魔ジカルってちょっとおもしろいね。捻ってる」

「お、さすがすぺる。我のセンスに気づいたか」

「採用はしないけど」

「おいっ!」


 頬を膨らませた小悪ちゃんは反撃に出ます。


「それをいうなら、なんだこの『いつでもこい超常現象』って。我の力はれっきとした魔王のもので、超常現象ではないぞ」

「科学で証明できる?」

「できん」

「それを超常現象っていうんだよ」

「そうなのか?」


 小悪ちゃんが私を見ます。


「定義ではそうだね」

「そうなのか……」


 素直に受け入れたと思ったのも束の間、「でも、超常現象って言葉はなんか胡散臭いから嫌なのだ」と真顔で言いました。


「そうなると、一番無難な『摩訶不思議サークル』でしょうか?」


 勇香ちゃんの声に賛成する人はいません。案を出していない私がケチをつける権利はありませんが、少々無難すぎるような……。あと、せっかくなら個性を出した名前の方が覚えてもらいやすいと思うのです。


 頭を捻りながらネーミングセンスに仕事を命令する私。なにかいいものないかなぁ。


「候補から外れましたが、『マジカル』という言葉自体は私たちに適していると思いますよ」

「マジカルって魔法の……って意味だよね? それだと魔奇さんだけのような気がするけど」

「魔法以外にも意味があるのです。不思議とか、魅力的とか」

「不思議……。ぴったりだね」

「そうか?」


 小悪ちゃんがフードの下から私を上目遣いに見ます。


「だってここにいる人たちって、不思議な人の集まりみたいなものじゃない? 魔女に魔法生物、魔王に勇者。私は何の変哲もない人間だけどね」

「そうかしら」


 座布団の上でくつろいでいたシロツメちゃんが耳を揺らします。


「これだけのくせ者たちを篭絡している時点で、シホはただ者じゃないと思うけれど」

「だから、篭絡だなんてそんな――」

「誰がくせ者だ!」


 私の声をかき消すように小悪ちゃんが叫びました。


「我のどこがくせ者なのだ、シロツメ」

「すべてよ。小さな癖強魔王様」

「んなー!」

「事実なので訂正する必要はありませんね」


 勇香ちゃんがけろっと言いました。


「おぬしもその仲間だと言われているのだぞ?」

「まあ、勇者ですし」


 再びの事実に、小悪ちゃんは折れたようです。


「はあ……。配下たちと一緒にされるのは嬉しいが、変な呼び方をされるのはまじで勘弁なのだ」

「とはいえ、不思議ーズであるのは確かなんだよねぇ」


 困ったように頬を掻く魔奇さん。


「わたしなんてマジカルそのものだし。めっちゃマジカル。超マジカル」

「うっ、やめろ。ゲシュタルト崩壊しそうだ」

「マジカルマジカルマジカルマジカルマジカルマジカルサークル~~」

「うぴゃああぁぁぁぁぁやめるのだぁぁあぁぁぁ」

「あ、それいいね」

「どれがいいのだ⁉」


 小悪ちゃんに睨まれ、私は身体の前で手を振りながら答えます。


「マジカルマジカルサークルだよ。同じ単語が連続するけど、それぞれ意味が違うってことでどうかな?」

「魔法とか不思議とか魅力的とか、いろいろ含んでってこと?」

「うん。あんまり見ないサークル名だと思うし」

「でも、同じものが二回続くと目がチカチカするのだ」

「では、間にマークでも入れましょうか」


 勇香ちゃんがペンを取ります。


「すぺるさんが魔女という点を踏まえると、このマークが適しているかと」


 紙にはきれいな字でこう書かれていました。


『マジカル☆マジカルサークル』


 満足そうな勇香ちゃんは、「略してマジマジです」と付け加えました。マジですか?


 冗談かと思いましたが、当の本人は大真面目な様子。呆気に取られている魔奇さんと小悪ちゃんが「マジマジ……」と声を揃えます。


 ゆっくりと顔を見合わせ、同時に吹き出します。


「マジマジだって。おもしろいかも」

「これを勇香が言うところが最高だ!」

「私、何かおかしなことを言いましたか?」

「ううん。すてきな案をありがとう」


 つられて笑ってしまった私。笑顔の三人を見て、勇香ちゃんは最終決定に移ります。


「ではみなさん、新しいサークル名は『マジカル☆マジカル』。略称はマジマジでいかがでしょう?」


 私たちは勢いよく手を挙げ、大きな声で答えます。


「まじで賛成!」


お読みいただきありがとうございました。

冗談ではなくまじでマジマジです。

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