表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

天才少女による紙飛行機を用いた完璧な告白の方法論

 夕暮れの並木道、歩く君の(かたわ)らを、すうっと追い越していく紙飛行機。

 つかまえて拡げてみた君が、そこに綴られた言葉にハッと振り向けば、はにかみ微笑む私がいる……


 ……うん、完璧。


 ◇ ◇ ◇


 もうすぐ最後の冬休み。

 三年通してついぞ春の訪れなかった僕の高校生活も、じき終わる。そんな学校帰り、てくてく歩く夕方五時。


(いて)ッ!?」


 とつぜん後頭部に走った痛みで振り向いた。

 けど視界には人影のない並木道。

 困惑しつつ、視線を落とす。


 ──紙飛行機?


 足元に不時着した空色の機体の、羽をつまんで拾い上げてみる。鋭角に折り固められた先端(さきっぽ)はもはや紙の凶器。


「おとなしく自首すれば、許さないでもない」


 姿なき犯人に呼びかけるけど、応えるのは風に舞うイチョウの葉だけ。

 なら、凶器に犯人の痕跡がないか調べてみよう。素材をよく見ると、等間隔に細い線が走っていた。ノート……いや、便せん……?


 入り組んだ折り目を開いていくと、表れたのは綺麗な文字。この筆跡、どこかで──


「まま待って!」


 そのとき、思ったよりだいぶ離れた並木の影から、制服姿の女の子が叫んで飛び出した。


「ぶべ!?」


 そして足をもつれさせ、顔面からヘッドスライディングをキメる。そのままぴくりとも動かない。


 どこかで、心の折れる音が聞こえた気がする。


「大丈夫、佐伯(さえき)さん?」

「ゔ」


 駆け寄る僕に名を呼ばれ、彼女は小さく呻く。

 差し出した手を遠慮がちに握って立ち上がると、すぐ離してパッツン前髪を整え、服のホコリを払う。

 よかった、怪我はなさそう。


 彼女は同級生だ。常に学年トップ成績で有名大学の推薦入学も決まってる、メンサ会員の天才少女。

 そのぶんクラスには馴染めず浮いている。

 馴染めてないのは僕も同じだけど、こちらは浮いてるというより沈んでるだけ。


 ちょっぴり距離が近づいたのは去年、二人で文化祭実行委員をやらされた(・・・・・)とき。まさかのB級映画好きが発覚して話が弾んだ。


 けど、文化祭が終われば自然と元の距離感に戻っていた。


「これは」


 紙飛行機だった便せんに、綴られた一言。


『きみが好き』


「完璧な計画(プラン)だったの。気づかない距離から丁度(ちょうど)いい速さで追い越す紙飛行機の折り方も、一年がかりで完成させて」


 そんな才能の無駄づかい(・・・・・)の結晶は、力みすぎて僕の後頭部に直撃した。


「ごめん、痛かったよね」

「嬉しかった」

「え!?」

「僕も、好きだよ」


 こうして僕らは恋人同士になり、翌年の全日本紙飛行機コンテストで優勝と準優勝をかっさらった。


(よろしければ↓広告下☆の数にてご評価お願いします)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ