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94話

 竜となった化け物は相変わらず女王の方を見ている

「グルルルル」

 低く唸り、口からどろりとした液体を垂れ流す

 涎のように見えるが、それが垂れ落ちた瞬間地面から煙が上がった

「すごい熱・・・。気を付けて、あの体液、超高温みたい」

 マナが体液を調べて教えてくれた

「グルラアアア!!」

 竜は飛び上がると空を飛び、一気に下降して女王を抱えているマナを狙う

「この!」

 俺はすかさずとある薬品を投げた

 これは付着すると振動によって爆発を起こす

 ドーンと激しい音がし、竜は地面に激突した

「よし!」

「やるじゃねぇか!」

 そこをダンが大剣で斬りつけるが、先ほどまで通っていた彼の攻撃は弾かれてしまった

 それどころか、俺の薬品によるダメージもそこまでじゃないみたいだ

「かってぇ! こりゃ俺じゃあ斬れねぇ」

 痺れた腕を振り、起きあがってくる竜から逃げるダン

 その時

「あ、あれは!」

 女王が声を上げた

「どうしたんですか?」

「あの竜の首にあるネックレス。あれは、私が幼いころ兄にあげた・・・」

 それで分かった

 この竜が女王を狙っている理由が

 この竜は、王兄なんだ

 一体なぜこんな化け物になってしまったのかは分からないが、今は自我を完全に失い、ただ女王を殺そうと狙うだけの魔物だ

「女王様、あれを討ちます。よろしいですね」

「・・・。ええ、兄を、楽にしてあげてください」

 女王は涙を流す

 いくら命を狙われているとはいえ、もともとは仲がいい兄妹だったんだ

 思うところはあるだろう

 しかし悲しむのは後だ

 俺たちは女王を守るためにここにいるんだから

「女王様ご無事ですかな!?」

 そこ大臣が到着した

 彼の後ろには兵たち以外にも冒険者の姿もあった

「援軍ですぞ! 皆さん! 女王様をお救い下さい!」

 オオオオ!!

 彼らの士気は上々だ

 竜はそれでも目を血走らせて女王を狙って走る

「魔法部隊いけぇえ!!」

 魔法を使える者たちが一斉に雷撃の魔法を放った

 それは見事に翼を撃ち抜き、竜は飛べなくなる

「これで機動力は半減だ! 前衛! 一気に叩け!」

 ダン含め、剣や槍など近接武器を持った者が竜の腹や胸と言った急所を攻撃していく

 さすがにこの数だ。いくら固い鱗があるとはいえ、傷つき、傷が広がり、出血し始めた

 その血液はマグマのように煮立っているため、幾人かが火傷を負っていたが、そこを回復部隊らしき治癒師たちが直ぐに回復させた

「行ける、行けるぞ!」

 多くの人々による攻撃で竜は段々と動きが鈍くなり、やがて動かなくなった

戦いは終わり、女王が息絶えようとしている竜に近づく

「女王様、危険です!」

 だが女王はそんな声も聞かずに竜のそばに駆け寄ると、ゆっくりと語り掛けた

「兄様、ああ、兄様なのですね」

 すると竜がドロドロと溶け、一人の青年になった

「う、あ、ラフィ、ナ、か。声は聞こえる。だけど、何も見えないんだ。ああ、ラフィナ、もっと近くに」

「女王様! 駄目です!」

「いいえ、大丈夫です。この人は、私の兄様なのですから」

 王兄の耳元まで顔を近づける

「ラフィナ、すまない。今まで俺は・・・。ずっと叫んでいたのに、体が、言葉が、言うことを聞いてくれなかった。僕は、君を傷つけたくなかったのに、僕の中の何かが、僕を乗っ取って・・・」

「兄様、兄様、分かっています。兄様は、あの時のままなのですね」

「ラフィナ、許してくれとは言わない。君を守れなかったのは、僕の弱さが招いたことなんだから」

 次第に王兄の体がサラサラと砂になり始めた

「ああ、そんな、兄様がやっと元に戻ったって言うのに!」

「いいんだ、この国にはもう、立派な王がいるだろう? 僕は、母上や父上の元には、行けないかもしれないけど、ラフィナ、ずっと、見守ってるから、だから、泣かないでおくれ」

 王兄の体は半分以上砂になっている

「兄様、お兄ちゃん・・・。う、うう」

「ラフィナ」

 王兄は何者かに操られていたのだろうか?

 元々は家族思いの優れた王子だったと聞いているし・・・

「兄様、最後に教えてください。貴方をこんなにしたのは、誰なんですか・」

「分からない。でも、微かに覚えていることは、ある。まるで闇そのもののような不快な気配。それは僕の前に突然現れて、囁いて消えた。それだけ、なんだ。そこから僕は・・・。やつの言っていたことは、帰って来たよ。だった」

 王兄は既に頭だけになっている

「兄様、必ず敵は取ります」

「いや、君は君の人生を歩むんだ。僕のことは忘れて。この、愚兄のことは気にするな」

 王兄はゆっくりと、砂になって消えていった

「お兄ちゃん・・・。お兄ちゃん! うわあああああああああ!!」

 女王は泣き叫び、王兄の砂を手でかき集める

「大臣」

「はっ!」

 女王の意図をくみ取った大臣はすぐに部下に指示し、その砂を集めさせた


 そして後日

 王兄を操って殺害した何者かの情報を求めるという王命が国全体、果ては世界に向けて発信された

 王兄の今までの言動の不信な点から、国民もやはりか、という意見が多かったようだ

 今まで王兄の洗脳について調べられてはいたものの、その痕跡は一切なかった

 だが、それをたばかれる存在がいることが分かった今、世界中がこの事態に危機感を覚えた

 何せ話しかけられただけで操られるのだ

 しかもその洗脳を解く術は今のところない

 後味の悪い思いをしつつも、俺は帰路についた

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