表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

130/132

130話

 うまくいったようだ

 今この世界は改変が起き始めている

 その間人々はそれぞれの世界の中で幸せな夢を見続けている

 カズマにも効いたようで良かったよ

 その時エイジからの念話が飛んできた

「セイヴ様! ここは、こいつは一体何ですか! だ、だめだ、こいつを世界に出しちゃ」

「エイジ? 一体どうしたんだ? すぐ行く!」

 穴を探らせていたエイジに何かあったようだ

 彼を助けるために僕は穴の前へと転移して、そこに飛び込んだ

 内部空間を一気に飛び、奥へと進んだ

 そして最深部

 エイジが恐怖でうずくまっているのが見えた

「エイジ!」

「セ、セイヴ様、あれは」

 エイジが指さすモノを見る

「こ、これは・・・」

 魔物を生み出している大きな塊

 それは間違いなく僕の知っているモノだった

「これは、こいつは、神竜ティフォン!?」

 そこに横たわっていたのは、かつてこの世界の神とまで言われていた神竜、アルビオナとティアの母であるティフォンの、遺体だった

「体全体が闇で覆われている?」

 近づくと鼓動がした

 ドクン、ドクンと鼓動が痛いから聞こえてくる

「離れるんだエイジ!」

 僕はエイジの手を引いて逃げる

 ティフォンの遺体は起きあがり、こちらを見た

「ギギギ」

 まるで話すことを忘れたかのようにティフォンは口から音を発した

「僕を恨んでいるだろうね。だけど今はまだ死んでやるわけにはいかないんだ。君のおかげで、今世界は塗り替わっている最中なんだからね」

 だがティフォンは僕のことを見向きもせずに翼を広げ、光のような速さでこの場から飛び去り、外に出て行ってしまった

「まずいぞ、まだ世界に何かされるわけにはいかない」

 エイジを外に連れ出し座らせると、僕はあの竜を追った

 幸いにもすぐ近くの空でその姿を見つけた

「ティフォン、悪いけど君はもうこの舞台から降板したんだ。引っ込んでてくれ」

 力を込める

「ザ・パワー」

 力というこの力は、どんなことでも出来る

 能力、魔力、気力、仙力、様々な力がこの世界にはあるが、僕のこの力はそう言った力を思い描くだけで使うことができる

 だからこそ、何でもできるってわけだ

 その力でティフォンを包んだ

「これは償いでもある。君を殺した僕がやらなくちゃいけなかったんだ。あの時はまだ、この力はなかった。でも今なら君を」

 包まれたティフォンの姿が変わり、一人の女性の姿になって出て来た

「やあ、再誕おめでとうティフォン」

 ティフォンはこちらをにらむ

「セイヴ! あなたは!」

「怒るのもいいけど、今の君じゃあ僕に何もすることができない。分かるでしょ?」

 ティフォンはヒトになったわけじゃない。復活のために竜の力を使い果たしこの姿になっただけだ

 つまり力を取り戻せば竜に戻れるというわけだ

 これは僕にとっても好都合だった

 あの場所にまさか彼女という掘り出し物が眠っているとは思わなかったけど、彼女が、いや、神獣がこの世界には必要だからね

 この世界の礎になってもらうために

 本当ならカズマを使おうと思っていたけど、あれを礎として楔でつなぎとめるには骨が折れる

 その点彼女なら力を失っているから、容易い

「さて、僕はやることがある。君にも手伝ってもらうから、その時までこの世界の現状でも見てきたら?」

「セイヴゥウウウ!!!」

 彼女の叫びを尻目に、僕はエイジを連れて転移した


 急に目を覚ました

 わたくしは世界から消えたはずなのに

 そして目の前にいたのはにっくきあの男

 奴を殺さなくては

 でもその前に、娘たちは無事なの?

 外に出て空から様子を見る

 これは一体どうなっているの? 世界が見えない

 真っ白な空間だけが広がっていて世界を覆ってる?

 唖然としているとことにセイヴが追い付いてきた

 怒りのあまり唸り声が口から出る

 こいつだけは、娘たちを踏みにじって世界を裏切ったこいつだけは許せない

 襲いかかろうと構えた瞬間、わたくしの視界は暗闇に包まれて

 再び白い世界が戻って来たと思ったら、わたくしは強制的に人間へと変化させられていた

 確かに人間形態には幾度かなったことがあるけれど、これは力を奪っての強制変化

 セイヴ、こいつは!

 わたくしには聞き捨てならないセリフを吐き、奴は行ってしまった

 でも今自分のことに構っている暇はない

 世界の情景を見て、娘たちがどうなったのかを知らなくては

 ヒトの気配を探りながらわたくしは走り回った

 確かにヒトはこの白い世界にもいる

 けれど誰もかれもが死んでいるかのように眠り、揺り起こしても一向に起きあがる気配がない

 そしてわたくしはあの国のあった場所へとたどり着いた

 シュエリア王国

 わたくしが死んでから名前が変わっているかもしれないけれど、ここで間違いないはず

 そしてわたくしたちが住んでいた場所から少し離れたところに、娘の一人であるティアの匂いを持った男に出会った

「この男も眠っている? 起こさなければ。娘の居場所を聞き出さなければ」

 わたくしは必死で男を起こすため、あの手この手を使った

 でも、男は目を覚ましてくれることはなかった

 疲れ果て、どうしていいのか分からず涙がこみあげて来る

 愛しい世界、愛しい娘たち

 どうなってしまったの? どうなってしまうの?

 そんなわたくしの声なき声に呼応するかのように、目の前の男が光り始めた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ