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123/126

123話

 なんでわかってくれなかったんだレンタロウ!

 僕は怒りに任せて山脈を一つ消し飛ばした

「荒れてるね、エイジ」

「セイヴ様」

 やはりセイヴ様はすごい

 いるだけで僕の心が穏やかになるのを感じる

「レンタロウは戻りませんでした」

「そうか、でもそれも彼の選択だ。いずれ世界が変われば分かってくれるさ」

「はい!」

 そうだ。世界は変わる

 それでレンタロウも戻ってくるさ

「エイジ、君にはもう一度フェンリナイトに行ってもらう。そこでわざと掴まってくれないかな?」

「拝承致しました」

「あ、その前にラファルで国民になってくれないかな? 後々あの国にはやってもらうことがあるからね」

 北部は軍事国家ラファルがある

 戦闘力の高い者が様々な国から集まっており、主に魔物から人々を守る役目を担っている

 北部の魔物は強く、そんな魔物かヒト族を守っているのがラファルだ

 今回首脳たちがフェンリナイトに集まる中、ラファルの王デュヴァインは自身がまっさきに先頭に立って戦うため、魔物との戦いを理由に招集に応じなかったらしい

 世界でも屈指の強さを誇る上位中の上位の男

 それがデュヴァイン王だ

「まだ消しちゃだめだよ。彼らにはやってもらうことがあるからね」

「はい」

 そのままセイヴ様に転移してもらい、僕はラファルへとやってきた

 冬も間近なこの時期、すでにこの辺りは冷えていた

 セイヴ様の指示通りに僕は国の観察を始めた

 一目でわかるほどの実力者がそこかしこにおり、農業を営んでいる者ですらそこいらの冒険者より強いだろう

 僕の力なら余裕で滅ぼせるけど、今はその時じゃない

 僕はセイヴ様から受けた指令の通りまずラファル内部へと潜入した


「なるほど、確かに強い力を感じるが、そう簡単にこの国の住人になれるとは思わないことだ」

 まず住人になるための手続きのために腕試しをしなければならないらしい

 要は認められればいいんだから簡単だ

 僕の力を試すという男は確かにこの世界の基準で言えば強い部類だろうね

 ただ、今の僕からすれば赤子の手をひねるくらい容易い

 まったく、子供のころとは大違いだ

 あの頃は何もできず、理不尽に暴力を振るわれるだけの無力な子供だった

 両親、同級生

 それらすべてが僕の敵だった

 何度も消えたいと願って、そして僕はあの世界から消えた

 正確に言えばセイヴ様に助け出されたんだ

 そして数年後、僕は力を得た

 消えたいから消したいという願いから僕の力は全てを消す、ザ・ロストとなった

 セイヴ様は世界を救う力だと言ってくれた

 だから僕はあの方のためにこの力を使う

「さぁかかって来い」

 闘技場に案内されると、さっそく男が構える

 どうやら先に打たせてくれるらしい

 力を見誤っている

 空間を消して一瞬で移動、空間を消して拳を光速を超える速さで叩き込む

 この力を応用すればこういった使い方もできるんだ

「が、はっ」

 男は内臓を損傷したのか、血反吐を吐いて倒れた

「合格だ!」

 本当にあっさりとこの国の住人になれた

 ここからは昇り詰めてセイヴ様の指示を待つ

 この国は軍事国家だが世界の守りのかなめでもある

 来るべき時に内部からここを消し、強力な魔物たちを解き放つ

 この世界では強力な魔物は魔人へと進化することが確認されているが、ここの魔物たちは理性を捨ててただ戦闘に特化し続けた魔物たちだ

 今でもこの国だけで押しとどめているのが不思議なほどにここの魔物は強い

 ラファルという要を失うことで起こる大混乱

 それはやがて世界中へと伝染していき、恐怖と混沌が支配していくようになるだろう

 そして彼らは求めるんだ。救世主、セイヴァーを

 セイヴ様の名は、その名の通り救世

 世界を救うのが彼の使命なんだ

 だから僕はその崇高な目的のため、彼に協力する

 あの無力で情けなかった僕が・・・

 これは僕が世界を救う物語なんだ

 いずれこの世界の人々も分かるだろう。セイヴ様の思いを、目的を

 あと少し、あと少しでこの世界は救われる

 そうしたら、今度は別世界だ

 僕たちは、全ての世界の救世主になる

 いずれ来る未来に思いをはせながらこの国に溶け込んでいく僕

 ああ、なんて素晴らしいんだ。僕は今、世界の中心にいる

「さて、魔物もまた溢れてきていることだし、早速新人にも戦いに出てもらう。交代制だから次の交代が来るまでは耐えろ」

「はい」

 偉そうに。だが怪しまれないよう言うことは聞いておかなければ

 たかだか魔物を退治する程度の楽な仕事

 僕ができないわけない

 ラファルの北門

 ここの外に出れば大量の魔物がいるという

 その魔物たちは穴と呼ばれる場所から来ているらしいけど、所詮は魔物だ

 この国の住人が止められて、僕ができないなんてことはないさ

 だが今は別の仕事もある

 作戦が始まってすぐ僕はひとまずセイヴ様が言っていたフェンリナイトへと戻る

 そしてそこでわざと騒ぎを起こした

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