第六話『森の薬屋』
「━━クソッ!辺り1面美男美女だらけじゃねぇか!おばちゃんはどこにいるんだよッ!」
街を駆け抜け、おばちゃん探しに奔走するは目つきの悪いフツメンこと俺。
この世界は顔面偏差値が高く、どこもかしこも美形ばかり。見ているだけでイライラしてくる。
「ち、ちょっと待ってよ。そもそもなんでおばちゃんを探すことになったのさ!」
俺の後ろに必死になって付いてきているシズクが声を上げた。俺はヤレヤレ系の主人公のようにため息を吐きながらシズクの問いに答える。
「あのな〜、おばちゃんってのはだいたい独自のネットワークを構築してて、良い情報を持ってるもんなんだぞ」
「いや、おばちゃんに何を求めてるの!?」
「おばちゃん舐めんなよ!噂好きが多いんだから話を聞けばこの街のことだいたい分かんだろうが!」
まったく、この程度の事も把握してないとは。スライムの面汚しめ!
『……よくわかんないけど情報収集する分にはいいんじゃない?』
あっ、いま呆れたな?匙を投げられるとそれはそれで悲しかったりするんだが。
そんなこんなで街を様子を観察しつつ、散策を続けていると1軒の店に目が惹かれた。
「おっ、これは━━【森の薬屋】?……なんか廃墟みてぇな外観だな」
森の薬屋と店に貼り付けられた看板に書き出されたその店は壁にツタに壁を侵食されている廃墟みたいな店だった。
日本にいた頃なら近づくことすら躊躇う建物だが、異世界で冴え渡っている俺の直感はここに入れと囁いている。
「よし、ここに決めた!」
「……もしかしてだけど入ろうとしてる?」
「なんだシズク嫌なのか?まぁ、お前が嫌でも俺は行くがな!」
1度興味を持ったら後に後にと引き伸ばさずに即行動すべし!これが俺のモットーだ!
「おばちゃんを探すのはどうなったの!?」
「ワンチャンこの店の中いるかもだろ?まぁ、中にいるのはグレードアップしておばあちゃんになる可能性もあるけど」
予定とは異なるが、おばあちゃんなら昔からこの街にいる可能性が高いから色んな情報を持ってるかもしれない。つまりどちらにせよ俺の目的は果たされる。
「そもそも薬屋って名前からして、この店には優しいおばあちゃんがいると見たね!」
きっとそうに違いない!
そう確信した俺は勢いよく店の扉を開けた。
「お邪魔しまーす!!」
人っ子一人居ない閑散な空間に俺の声が響き渡る。元気よく挨拶すれば店主か従業員が返事を返してくれると思ったのだが、何事も俺の予想通りにはいかないものだ。
『う〜ん。留守かな?』
「えぇ〜、タイミング悪ぅ」
『まぁそんなに落ち込まずに、せっかくなら商品見ていったら?時間はあるし』
俺はイフの言葉に従い、店の棚に置かれている商品を眺めていった。謎の青い液体が封入されている瓶やら包帯などの物品が目に止まった。
「ほむほむ。なるほどこの液体は俗に言う【ポーション】ってやつかね」
棚に並べられたポーションと思われる瓶を手に取り、じっくりと観察する。
すっげぇ綺麗な色してんな。不純物が何も無いような透き通った青色。俺の好きな色だ。
『そうだね。多分そこら辺にある魔力が込められた薬草をすり潰して抽出したやつかな。ここでイフ先生がポーションの効果について説明してあげよう』
【ポーションの解説】
・アイテム名:ポーション
・色にによって効能が変化する。
『青』は魔力を回復。
『赤』は怪我を回復。
『緑』は状態異常を回復。
・基本的には飲むのが正しいが、自分の体にかけることによっても効果がある。
・魔力がこもっている薬草をすり潰したり、凝縮し、抽出することによって完成する。
『だいたい分かったかな?』
「分かりやすい説明サンキュ〜。俺が買うなら青かな。今金ねぇけど」
手に取った青いポーションを元の場所に戻し、再度店の中を物色している時だった。
「━━あれ?ここになんか転がってない?でかい布みたいなの」
「布?」
シズクのいる場所に視線をやると、パッと見は暗い茶色の床……しかし少しだけ盛り上がっており、近づいて見ると、それは床と同じ色の布……もとい茶色のローブを羽織った人が倒れている様だった。
「うわぁぁァァッッ!!?……えっ?人?倒れてる……えっ」
『まさか死体を見てしまうとはね。黙祷』
いやいや、まだ生死確認してねぇだろ。とりあえず……どうすりゃいいんだ?クソッ、俺じゃ分からん!人呼んでくるしかねぇ!
俺一人じゃどうしようもないと判断し、店の外に出て助けを呼ぼうとしたその時、
「う〜ん……誰……じゃ?」
「ほあっ!?」
ローブの下から声がする。声の主は頭にかかっているフードを取ると華奢な体をむくりと起き上がらせ、細めた眼でこちらを見つめてくる。
「ふあぁぁ……眠い……」
「あ、あの〜、大丈夫ですか?」
「……大丈夫……眠すぎて気絶してただけだから、気にせんでいい」
何だこの子?恐らく声から察して大きさと声から察して小学生くらいの女の子だと思ったが、妙に喋り方がジジイっぽい。そんなことを思っているとその少女は店のカウンターの内側に立った。
「いらっしゃい!ここはこの街一番のポーションが売ってる【森の薬屋】じゃ。財布の口を緩めてこの店に持ちうる全てを落として行くがよい」
「……なんかめっちゃ違和感ある喋り方だね」
『確かにね。妙に年寄りっぽい』
イフとシズクが感じているように、少女の口ぶりからはどことなく違和感を覚える。
だが、現代日本の二次元作品に触れまくった俺にしては少女の口調が古びたものでも、さほど違和感は感じない。
「すいません。商品を買う予定はなくてですね」
「なんじゃと?冷やかしか。……なら帰った帰った。こっちはこれから忙しいんだ」
少女は俺たちが客ではないことを認識すると、追い払うようにシッシッと手を振る。
「その割には人がいないような」
俺は店を見渡したが俺たち以外に人はいない様子だった。どう見ても忙しそうには見えない。
「そりゃまだ冒険者どもが仕事する時間でもないからの。昼くらいからぎょうさん来るわい」
「なるほど。でもまだ昼まで時間ありますし、良かったら俺とお話しませんか?」
俺のその言葉に少女は心底面倒くさそうな顔を浮かべる。
だが、話は聞いてくれるようで、少女はカウンター前にある椅子を差し、座るように促した。俺は親切に甘えて椅子に座り、少女と目を合わせる。
「はぁ……まぁ、儂も暇じゃったしいいじゃろう。まずはお前さんから自己紹介せんかい」
「あざっす!じゃあいきます!━━俺の名前は如月傑。役職はテイマーで、そしてコイツはシズクって名前のスライムです」
「ふむ……キサラギ・スグル。変わった名前じゃの。しかもテイマーとは珍しい」
少女の紅く輝く瞳は俺とシズクを交互に映し出す。
ジロジロ見られるのはあまり好きじゃないのだが、
「じゃあ次は儂の番じゃな。名乗られたなら名乗り返すのが筋というしの。━━儂の名前は【ルピス・ヴィラル】。気軽にルピスとでも呼ぶがいい。あとこの見た目だからって女の子扱いするでないぞ。よく勘違いされるが儂は男じゃからの。今年で500歳以上のな」
「……あ??」
ルピスと名乗った少女?の発言に俺の頭は疑問符で埋め尽くされた。
なんとなく肉体年齢より実年齢は高いんだろうと予測はしていたが、年齢よりも衝撃なワードが飛び出て頭が上手く回らない。
そしてそんな俺を見て楽しげに笑う。
「ふふっ、この見た目じゃから女と間違うのも無理ないじゃろう。どうじゃ?儂の美貌に見とれたか?」
ローブをとったルピスの容姿は幼いピチピチの白い肌に身長は小学生くらいの小柄体系。
腰まで届く金髪のロングヘアーに宝石のような紅色の瞳を宿した少女。服装は多少男物っぽいが、それ以外は少女としか捉えられない。それが俺の評価だった。
「いや、女の子にしか見えんのだが?」
「詳しく説明するのはめんどくさいのでな。簡単に説明すると、儂は昔は結構すごい魔術師での。周りからチヤホヤされてたんじゃが、ちょっと前に大事件を起こしてしまい、国から追われる羽目に、……逃亡するために性別やら色々自分の身体を変えてこうなったってわけじゃ」
「ほへぇ〜、魔法ってそんなことも出来んだね。可能性を感じちゃうな」
つまりルピスはTSロリジジイってこと?属性盛りすぎよ。
「ってかそれ俺に話してよかったの?俺がその国から追っ手とか考えなかったの?」
「お前さんのような雑魚を儂の所に送ってくるほどあの国も馬鹿じゃないじゃろ!そもそもお前さんからは悪意的なものは感じなかったからの。もしお前さんが追っ手だったとしてもまた逃げればいいだけじゃしの」
なんやかんやで信用はされて貰えたっぽい。でも雑魚だからって信用のされ方は傷つくんだけどな。
「まぁ、だいたい理解した。」
「頼み?なんじゃ?面倒くさいのは嫌じゃぞ」
「面倒臭いけど、まだマシな方だから聞いてよ。俺は最近この街に来た新参でさ。情報が欲しいわけよ。色々この街のこと教えてちょ」
「……うーむ、いいじゃろう。だが、タダではやらん。金が集まり次第この店の物を買いに来ること。それが条件じゃ」
「金の亡者がよぉ……まぁ、それくらいなら良いか。じゃあ早速色々教えて貰うぜ」
◆◇◆◇◆◇
「……って感じじゃ。だいたい分かったかの?」
「だいたい理解したぜ!ありがとうな!」
小一時間ほどルピスから様々な知識を教えてもらい、ある程度この世界のことを把握できた。
やっぱり年寄りは情報色々持ってるもんだな!ここに来て良かったぜ!
「……でも、さすがに1時間は長すぎだよ」
しかしシズクはあまりも暇だったからか、ぐでーんと体が溶けていた。だとしても1時間程度でへばるとか現代日本じゃ呆れられるぞ!
『学校とかだともっと長いから私たちは耐性あるけどスライムはそういうの無さそうだもんね』
「もうどうでもいいから早く別の場所行こ!」
シズクが俺の腕で暴れて急かしてくるので早いとこ店から出ることにした。
「もう行くのか?」
「あぁ。だいたい欲しい情報は貰えたしな。金たまったらまた来るからよろしく!」
「ふふっ、またのご来店待っとるぞ」
俺はルピスに挨拶してから店のドアに手をかけ、外に飛び出した。う〜ん、やっぱり外の空気はうめぇな。
「よーし。退店!」
『で、次はどこ行くの?』
「腹減ってるし、飯食いにギルド行くぞ!」
傑達は空腹を感じながらこの街で最も目立っているデカイ建物【ギルド】を目指して歩き出すのであった。果たしてギルドで傑はどんな経験をするのだろうか、そして傑は【冒険者】になれるだろうか!
次回へ続く




