第四十四話『龍の滝』
なんでだよ。良い提案だっただろうが。
「ちなみになんで嫌なの?」
「逆に初対面の人に一緒に稼ごうなんて言われて警戒しない奴なんている?そっちの方がおかしいでしょ。」
「確かに。納得したわ。すまんかった。」
俺は納得したらすぐに謝れる良い男。ただ、引き下がる訳にはいかんのだよなぁ。……何で釣るか。
「分け前7:3でどうだ?お前が7な。それに俺と一緒に行けばある程度はサポート出来る。魔物退治でも雑用でも2人でやる方が効率いいだろ?」
「うっ……良い条件だけど……っていうか、なんでそもそもボクと一緒に行きたいんだよ!他の人誘えばいいじゃん!」
「いや、お前がいい。はっきり言おう。一目惚れした。」
「ふぇっ!?///」
……やっべ、言葉のチョイスをミスった。これじゃあ俺が愛の告白してるみたいになってるじゃねぇか。
ってかこの反応……コイツ女だな。100%女だな。仮に体が男だったとしても心は女に違いない。
「……えっと……さすがに初対面だし……そんなこと言われるの初めてだし///」
照れんなよぉ。俺が言うのもなんだけど、俺モブ顔だぞ?イケメンに言われてその反応なら分かるけどさぁ。
……くぅ、反応に困るぅ。ど、どうしたらいいんだ?なんで俺がこんなに考えなくちゃいけなくなってる!?
『思いつきで発言するからそんなことになるんだよ。ばーかばーか。』
やらかしてしまった俺の事をイフが煽ってくる。
「ほんと反省してるんで、一緒に打開策考えてください。」
『訂正する必要ないんじゃない?面白いし。君があの子のことを好きってことで。』
「いや、嫌でしょ。この後の関係性に支障が出る。……まぁ、一旦このまま話進めれば言質は取れそうだから、許諾した瞬間に本当のこと言うわ。」
『クズじゃん。』
俺が悪どいのはいつもの事だろ。今更言って改善するとでも思ってんのか。
「とりあえず!俺と一緒に依頼受けてくれませんか!今ならなんとポーションやらの必需品に加え、依頼後の食事も付いてきます!いかがですか!」
「う、う〜ん……そ、それなら……受けても……いい、かな。」
はい!言質取ったァ!イェ〜イ!!!フゥゥゥ!これで何があっても怖くない。よし、勝ったな。
「よし来たァ!じゃあ、掲示板から依頼撮ってくるわ。どんなやつ受けたい?薬草採取?魔物討伐?」
「ダンジョン攻略。」
桃髪の言葉に俺は意表を突かれる。
「良いけど……なんで?」
「……別に……」
俺がそう聞くと桃髪は顔を俯かせ、ボソリと呟く。その声はどことなく震えていたように感じた。
あ〜ね、悲しい過去抱えてる系女子か。コイツが傷ついてた理由にもなんか関係してそうだな。今は大して深堀る気ないけど、仲良くなったら聞いてみるか。
……とはいえダンジョン攻略か。……まぁ、頑張ればいけるか。
「了解。ダンジョン攻略で行こう。それと……一目惚れは嘘です。」
「は?」
「なんというか、突発的に口から出ちゃったというか。何も考えてなかったというか。……うん、許しブボァッ!?」
誤解を解くために俺は勇気を出したと思う。残念ながら顔面に右ストレートを貰うという結果になってしまったが。
みんなも軽率に好きとか言っちゃダメだぞ。ちゃんと考えて発言しような。
◆◇◆◇◆◇
どうにか怒れる桃髪をなだめて今回攻略するダンジョン【龍の滝】にやってきた。物騒な名前してんな。
「ふぁほくだんひょんにふぁいろうとおもふ。」
顔が視認できなくなるほどに顔面が陥没して感じの米みたいな顔になった訳だが、この調子でダンジョン攻略できるんすかね。
「なんて言ってるか分かんないんだけど、このゴミ虫。」
「ひんらふじゃはい?」
桃髪はどうやら拗ねてるようだ。まぁ、このダンジョンを攻略する頃には機嫌も治ってるいることだろう。
「っていうかその顔戻らないの?」
と、シズクが問いかけてくる。確かにこのままだと不便だしなぁ。
「はふんうひろがはからたたふぇば……よし治った。」
「おかしくない!?」
後頭部を押すことによって顔を元に戻すと、シズクが声を荒らげる。
はて?今の行動のどこにおかしな点があったというのか。やはりスライムだから人体についてよく分かってないんだろうな。
「よぉーし、気を取り直して入るとしようか。………………う〜ん、どっから入るんだ、これ?」
ダンジョンの外観はよく想像するような、上に川があってそこから水が降り落ちてる滝で周りが湖みたいになってんだけど。パッと見、どこにあるのかがよく分からん。
「なんでアナタが把握してないの?」
桃髪から非難の声が上がる。
「なんで言われましても。そんな全てを知ってる訳では……あっ、OK。全てを理解した。」
「すっごい不安なんだけど……それで?どうするの?」
「滝に突っ込む。」
「1回教会に行って頭を治療してきた方がいいんじゃないの?」
「まぁ、待てって。とりあえず俺を一旦信用しろ。」
「信用出来ないから疑ってるんだけど。」
「じゃあ分かった。俺が先発隊として突っ込むから、問題なかったら着いてこい。」
「……絶対ないと思うけど。」
桃髪がこちらを疑いの目で見つめている。ふっ、どちらの方が優秀か。ここらで見せつけてやりますかね。
「とはいえ濡れるの嫌だな。……シズク、一瞬だけ出て水凍らせれない?」
「え〜?やりたくないんだけど。氷張るくらいスグルにも出来るでしょ。」
「俺だってやりたくないもーん。じゃあこの硬貨でコイントスをして外した方がやることにしよう。表と裏どっちにする?」
「じゃあ裏で。」
「俺は表か。……よし、行くぞ!」
俺は持っている硬貨を指で上に弾いた。そして硬貨が手の甲に乗った同時に手を覆いかぶせる。
緊張の瞬間。表か裏か。ゴクリと生唾を飲み込みながら俺はゆっくりと手をどける。
……これは……
『裏だね。シズクの勝ちー』
「わーい♪」
「運悪ぃ……マジかぁ……氷魔法【氷河大地】」
俺は負けた悔しさをさっさと忘れるために、すぐさま滝の周辺の水を凍らせ、急いで滝に向かって走る。
ちなみにこの魔法は以前ミリスと戦った時に使用したものなのだが、魔力維持のため氷の厚さが薄いのでモタモタしていると氷が割れて池ポチャすることとなる。
「急げぇ!……おっ!来た!」
滝の奥の方へと目を凝らすと、どうやら空洞があるのが確認できた。
やっぱりあったな。滝の裏の洞窟。あると思ったんだよなぁ。オープンワールドのゲームあるある。明らかに目立っている滝の裏には何かある。
「とりあえず一旦戻って桃髪に報告しに行くか。」
という訳で煽るついでに滝の裏に洞窟があったと桃髪に伝えるために一旦戻る。
「やっぱりあそこがダンジョンの入口だったわ。」
「……えぇ……なんで?」
困惑した桃髪を引き連れて俺たちは滝の裏の洞窟へと侵入する。
「中は結構広めだな。じゃあ行くぞ。ここがお前の腕の見せどころだ!」
「わ、分かった……」
3度目のダンジョン攻略。桃髪の実力やいかに。そしてここのボスとは?それらは次回に判明することでしょう。
次回へ続く




